354.ルール解明
セレストが無力化したミノタウロスを、イヴがとどめをさした。
ミノタウロスが消え、ダンジョンの空気が元に戻った。
次々と出てきたのは、布地の多い服を着た天使だった。
イヴが速攻で向かっていって、その内の一体を倒す。
天使はガードの上から無惨にも頭をかち割られて、果物みたいなのをドロップした。
イヴはそれを拾って。
「失敗」
「だから成功」
逆にチョップをして、果物を取り上げる。
イヴは唇を尖らせて、不満そうな顔をした。
「ザクロか」
「ちゃんと植物だったわね」
「ああ」
セレストに頷く。
「もう一度やってみる?」
「そうだな。動植物以外のも試したい」
「うさぎに任せる」
イヴは早速動き出した。
指輪をつけたまま、更に別の指輪をつけて、ポーションを飲んで、ナウボードで能力を確認。
―――2/2―――
植物 D
動物 B(-1)
鉱物 A(+4)
魔法 C
特質 C
―――――――――
傾向ががらりと変わる。
まるで別人のような能力になった。
その間、セレストも動いていた。
俺から牛の模型を受け取って、離れたところに置く。
途中で何体かの天使が寄ってきたが、糸で操作したバイコーンホーンのオールレンジ攻撃だけで難なく倒した。
セレストはやっぱり強くなった。
雑魚モンスター程度なら苦もせずに倒せる様になってて、見てて安心して任せられる。
しばらくして、ミノタウロスがまた孵った。
さっきとまったく同じ感じで、糸操作バイコーンホーンで動きを止めて、無力化する。
「すごいなセレスト」
「何が?」
「やってることはさっきと一緒だけど、動きは違う。即興の動きなのか」
他の冒険者がやってる周回のためのパターン化と似てるようで、本質は違っていた。
「なに言ってるの」
セレストは何故か呆れたように眼を細めた。
「こんなのリョータさんが教えてくれた事じゃない」
「俺が?」
「あなたがいつもしてる事よ」
「……なるほど」
確かに俺がやってることと似てると言えなくもない。
大まかな方向性を決めて、土台とか基礎とかしっかりしてる状態で、後はある程度の即興。
うん、言われてみれば一緒だ。
「私をあまりほめると自画自賛になってしまうわよ」
「それは恥ずかしい」
「しなくても私がほめるけどね」
「逃げ場がなかったか」
よく知らない相手に言われたら本気で恥ずかしい所だが、そこは気心が知れた仲間どうし。
セレストと他愛もない雑談をした。
すると、空気がまたまた変わった。
それを察したイヴ、誰に言われるともなく飛びかかって、一撃でミノタウロスを葬る。
イヴも大分なれてきたみたいだ。
空気が戻って、元のカルシウム。
現われだしたのは――。
「あら、鎧ガッチリしてるわね」
「ザ・戦乙女って感じだな」
「弱点どこかしらね」
「……お尻、かな」
「はい?」
「いやこっちの話」
ゴホン、とわざとらしく咳払いでごまかした。
改めてモンスターを見る。
天使は天使だが、今度は金属的な鎧で完全武装した天使だった。
戦乙女って感想が瞬時に出るくらい、そんな感じがする相手だ。
見た目だけで言えば今までの天使の中で一番強い――のだが。
「うさぎは誰にも止められない」
完全やる気のイヴにはかなわなかった。
イヴは真っ直ぐ飛び込んで、剣のガードごと鎧を――どころか本体まで手刀で粉砕して、一撃で倒した。
そして、ドロップしたのは。
「石……くっつく」
「磁石かそれ」
戸惑うイヴの代わりにドロップした物を拾い上げた。
直径1センチに長さ10センチの金属の棒、それが3本。
三本はそれぞれくっついてて、引き離してもまたくっつく。
思った通り磁石だった。
そしてそれは、鉱物Aの結果だった。
おおよその事がわかったから、更に検証していった。
品種改良の時、ミノタウロスを倒した者の一番高いドロップに種類が変わる。
俺とセレスト、オールSとオールFは種類が変わらず現状維持だ。
そして一番高いのが複数ある時は。
「成功――やっぱり失敗」
ニンジンをかじって嫌そうな顔をするイヴ。
―――2/2―――
植物 A(+3)
動物 A
鉱物 E
魔法 C
特質 C
―――――――――
二つ同じ高いのがある場合、ランダムでどっちかになるみたいだ。
仲間二人の協力で、ルールがほとんど解明出来た。