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333.俺だけのニホニウム

「ど、どうしたですか?」


 途中からだから話を飲み込めずに慌てるエミリー。

 一方で、サクヤは額を地面にこすりつける程の土下座を続けていた。


「とりあえず起きて」

「どうか!」

「分かったから起きて」

「いいえ、聞き届けてくれるまでは起きません!」

「気持ちはわかる、分かるけど起きてくれないと――」


 仲間にはいろんな人がいる、仲間じゃない中にもいろんな人がいる。


「うーわー、そういう男だったんだ」

「ふふふ、ある意味見直したよ。女の子を土下座させて悦に入るとはさすがだね」

「アウルム! ネプチューン!」


 騒ぎを聞きつけて誰かが更にやってくると思った。

 しかしよりにもよって、一番話が明後日の方向にこじれるこの二人がやってくるとは。


「見直すの?」

「ちょっと変態で突き抜けてる人の方が見てて楽しいからね。普通だと面白くないじゃないか」

「たしかに! あたしもいろんな人見てきたけど普通とは違うのを見たい!」

「でしょ。ちなみに君は知らないだろうけど、こういう場合後ろ頭を踏んづけたり、足を舐めろっていうのがオーソドックスだよ」

「そうなんだ!?」


「そこ! アウルムに変なのを吹き込まない!」


「お望みなら足の指がふやけるまで舐めしゃぶります!」


 サクヤは顔を上げて、決死の目で言い放った。


「舐めなくていい舐めなくていい」


 本気すぎる目だった、足を舐める所かそれよりもやばいことでも断らずやりそうな勢いだ。


「エミリー、その二人を頼む」

「はいです。さあネプチューンさんアウルムさん、こっちにもやしステーキを用意してあるです」

「本当!?」

「なんと! あの精霊アルセニックをアヘアヘにしたという噂のもやしステーキかい? これは食べ逃したら一生悔いるパターン!」

「ふふん、あたしは何回も食べてるもんね」


 エミリーの一言で、アウルムとネプチューンが連れられていった。

 が、一難去ってまた一難。


「リョータさんの足……」

「私にできるのかしら。いいえ、それが出来ればこのレースで大きなリードを得る事になるわ……」


 廊下の向こうで、赤い顔でのぞき見してるセレストとエルザがぶつぶつなんか言っていた。


 二人はどうしようか――と思ったら救いの神が降臨した。


「ひゃん! い、イーナ! ちょっと変な所触らないで、というか揉まないで!」


 エルザの後ろからイーナが現われた。

 彼女は後ろからエルザに抱きついて、肩にあごをのせて耳元でささやいた。


「そこにいっちゃったらおしまいだよエルザ」

「で、でも……」

「考えてみなさい、それを望む彼と望まない今までの彼、どっちがいい男だと思う?」

「あっ……」


 エルザはハッとして、俺をちらちらと見た。

 やがて納得した様子で。


「そうだよね、それはあんまり良くないよね」

「うんうん、どうせならちゃんとした彼に……ね」

「うん、わかった」


 イーナに説得されたエルザ、納得した顔で去っていった。


 そして気づけばセレストもいなかった。彼女もイーナの説得を聞いていなくなったんだろうか。


「サトウ様、余にいい案が――」

「あんたはフィギュア作っててくれ頼むから!」


 またまた現われたのはセル、絶対に「いい案」じゃない彼を部屋から押し出して、ドアをパタンと閉めた。


「ふう……」


 ドアに鍵をかけて、背中をもたせかけて息を吐き出す。


「あ、あの……」

「ごめん、ドタバタしてて」


 完全に置いてけぼりで、ポカーンとなったサクヤの前に戻ってきた。


「さっきの話だけど、レベルダウン」

「はい! アレは何処でドロップしますか」

「まだ攻略が全部終わってないから発表してないけど、ニホニウムだ」

「ニホニウム!」


 サクヤは盛大に驚いた。

 そりゃそうだろうな、今までダメダンジョンの烙印を押されてきたニホニウムだ。

 それだと言われたら驚きもする。


「で、でも……」

「うん?」


 サクヤは俺の顔色をうかがうような、言いにくそうな顔をした。


「本当にそうなんですか……?」

「ああ」

「本当に! 本当の事を教えてください! どうか!」


 またガバッ! と土下座するサクヤ。


「いやいや起きて起きて。なんでそこまで疑うの?」

「ニホニウムじゃないって皆言ってるからです」

「え?」

「リョータさんがいきなり見つけてきた正体不明のアイテム。何処なのかを皆推理してました」

「皆?」

「ほとんどの冒険者が」

「そうなのか!? ……ああ、金になるしな」


 というかそうならない方がおかしいな。

 レベルダウンの種、魔法消去の種。

 どちらもものすごい高価になる事がほぼ決まっている物だ。


 出所を皆知りたがるのは当然だ。

 そして、


「俺がニホニウムにずっと籠もってたのも知ってるしな」

「はい」

「で、いってみた訳か」

「はい、でも何も変わってませんでした」

「そうか……ん?」

「ど、どうしたんですか?」

「何も変わってなかった?」

「はい。私も行きましたから」

「……モンスターも?」

「はい、前のままでした」

「……ちょっとついてきて」


 俺はそう言って、部屋から出た。

 サクヤは慌ててついてきた。


 彼女を連れて行く、しかしその前に――。


「それなら大丈夫だよ」


 途中でネプチューンと出会った。

 彼は壁に背中をもたせかけて、もやし料理が載った皿を持っている。


「大丈夫?」

「アウルムが『任せて』って伝えてだって」

「なるほど」


 既に夜、アウルムもニホニウムも帰宅してきてる。

 試すためにニホニウムに頼んでダンジョンに戻ってもらわなきゃと探そうとしたんだが、アウルムが先回りしてくれたらしい。


「愛されてるね」

「いい仲間を持った」


 ネプチューンの茶化しに本気の台詞を返して、きょとんとしているサクヤを連れて、今度こそ転送部屋にやってきた。


 不思議がる彼女と一緒にゲートでニホニウムに飛んだ。


 裏・ニホニウム一階。


「こ、ここは……ニホニウムですか」

「ああ。おっ、さっそく来たな」


 俺たちの前にスケルトンが現われた。

 前のと違う、俊敏なスケルトン。


 それが襲いかかってきたのをスルッと躱すと。


「こ、ここは何処ですか!?」


 と、サクヤが目を剥いて驚いた。

 やっぱりそうかと、俺は理解した。


「ここは俺しか入れない……のか?」

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