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314.パーティードロップ

「そのような事をしておったのかえ」


 プルンブムダンジョン、プルンブムの部屋。


 テネシンの一件に関わってる間も、俺は約束を守り続けて、毎朝彼女の所を訪ねていた。


 テネシンとは違って、こっちは俺が来たら素直に喜び、歓待してくれる。

 まわりくどい言い回しもないから、雑談がはかどる。


 今日の話題は、最近かかりっきりのテネシンになった。

 テネシンの件で一段落が見えてきた所で、気軽にプルンブムに話した。


「いろんな人に、いや精霊もだな。みんなに助けられた」

「そなたの人徳じゃ。そなたでなければそこまで人は動かぬであろう。わ、わらわも頼られればここから出ても……」


 もじもじしながらのプルンブム。

 まるで乙女みたいだ。


「ありがとう。今度また何かあったら協力を頼むかも知れないけどーー」

「任せるのじゃ! そなたの頼みはよい頼みに決まっておる」


 パアァ、と顔をほころばせるプルンブム。

 その信頼が嬉しかった。


「にしても、ニホニウムかえ」

「後半の建設では、彼女の力が大きかった。そういえば、ダンジョンマスターを自在にコントロール出来るんだな、あんた達は」

「その通りじゃ。普通のモンスターは操れる範囲が少ないが、ダンジョンマスターともなれば、のう」

「そういうものなのか?」

「シンプル故の弊害、とでも言うべきかのう」

「ああ、なるほど」


 通常のモンスターもレアモンスターもダンジョンマスターも、きっと精霊は全員を完璧に操れる。

 しかし簡単な構造であるが故に、通常のモンスターは操ってもやれる事が少ないんだ。


「それを操るのに何か特別な事、特別に力を消耗するのか?」

「そのようなものはない。手足の様なものじゃ。それに『(ことわり)』の中であればいかようにも」

「理?」

「うむ。例えば今すぐにでも、同じドロップの人間二人以上でなければドロップせぬ――という風にする事も出来るぞよ」

「……うーん。AならA同士、BならB同士のパーティーのみドロップ、って事か」

「うむ。そうなればそなたは何があってもドロップしないからやらぬが」

「へえ」


 ……。

 …………。

 ………………。


 なんか、ひらめいた気がする。

 頭の中に一瞬だけ浮かび上がってきた何か。

 それをたぐり寄せようとする。


 思いついた時の行動をすると、その紐付けですんなり思い出せることがある。

 俺は話を聞いた瞬間の行動を――プルンブムをまっすぐに、じっと見つめた。


「……ぽっ」


 プルンブムが頬を染めて、恥ずかしげに目を伏せた瞬間、それを思い出した。


 これは……我ながら名案だ!


「ありがとう!」


 その嬉しさに、思わずプルンブムの肩をつかんで、更に近距離から彼女を見つめた。


「あぁ……」


 プルンブムは、感極まったように、目がトロンとなった。


     ☆


「レイドボス?」


 テネシンの部屋。

 やってきた俺は興奮をそのままにぶつけてしまった。


「ああ悪い、こっちの用語そのままだと分からない事もあるか。えっとな……」


 レイドボス。

 その意味をかみ砕いて、途中の説明とか例えも省いて。


 核心となる部分を、テネシンに説明してやった。


「モンスターを倒すとき、攻撃をした人間が多ければ多いほどドロップが多くなるって事にする事は出来るか?」

「多ければ多いほど?」

「そうだ」

「なに言ってんだてめえ、そんなことしたらダンジョンに来る奴らが増えるじゃねえ…………か」


 途中で目をかっびらいて、驚くテネシン。


 俺が思いついたのはそれだ。

 学生の頃にやったMMOでこういうシステムがあった。


 ソロで倒した時に比べて、4人パーティーを組んでモンスターを倒した時のドロップが約5倍になるってシステムだ。


 4倍までなら人数で割っても一人当たりの取り分が一緒だからメリットはないが、5倍以上になれば話が変わる。


 その経験が、このアドバイスに繋がった。


 テネシンの驚きが、提案自体可能な事と、彼がそれを良く思っている事の証だ。


「ふ、ふん! そんな事をしたら人間どもが増えてウザくなるだけだ!」


 この反応もまた、いつものテネシンだ。


「そんな事なんかしねえ。てめえに失望した、とっとと帰れ!」


 テネシンに追い出された俺は、彼がその通りにすると、するために追いだしたのだと確信した。



 この日の夜。

 建設が終わった後のテネシンでテストした俺は、早速人数比例でドロップが増える事を確認できたのだった。

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