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284.最後の関門

 朝、目覚めて自分の部屋を出ると、イーナとばったり出くわした。

 俺とばったり出くわした彼女は、ちょっと気まずそうに顔を赤らめた。


「お、おはよう」

「おはよう。泊まっていったのか」

「うん、最初は通いのつもりだったんだけどねー」


 イーナはそう言い、廊下を、いや屋敷の中をぐるっと見回した。


「ここ明るいし、暖かいし。居心地良くてついつい。なんていうの、いったん入ってしまうと出られない魔力があるっていうか」

「だろ!」

「わっ」


 イーナは俺が食いついたことに驚いた。


「これ全部エミリーのおかげなんだ。一度住んだらやみつきになる快適さと心地よさは全部エミリーのおかげなんだぞ」

「そっかー」


 イーナと話ながら、廊下を歩き出す。


「そういえばあの噂本当なのかな」

「噂?」

「テルルのダンジョンをすっごい綺麗に掃除して、スライムと一緒に昼寝したって言う」

「本当だぞ、現場を見たから間違いない」


 だいぶ前にダンジョンにエミリーを迎えに行ったときその現場に出くわした事がある。

 ダンジョンの中をこの屋敷と同じく、明るく暖かかく、まるで神殿のごとき清らかな波動を発する空間に掃除したあと。

 それで疲れて居眠りを始めたエミリーの周りにスライムが集まってきて、一緒に眠りだした現場を俺は目撃している。


 別の意味でのダンジョンマスター、ダンジョンを従えてるなあ、とあの時は思った。


「はあ……すごいねえ」

「すごいぞ。なんか世間じゃ俺がすごいすごいっていってるみたいだけど、このファミリーで一番すごいのエミリーだから」

「何となく分かる。リョータさんのすっごいパフォーマンスも帰ってきたこの家があってこそだろうね」

「ほんとそう!」


 俺はテンションが上がった。

 イーナは「そうだ」といって、立ち止まって、俺の方に体ごと向いてきた。


「というわけでここにすむ事になりました、これからよろしくお願いします」


 改まってそういい、頭を下げるイーナ。

 こうして、彼女は屋敷に住むようになった。


     ☆


 ニホニウムダンジョン、地下九階。


 あの手この手で戦って、ドラゴンゾンビの周回、その最適化を探している。


「なかなか上手く行かないな……」


 二手までなら確定で倒せるんだ。かなり初期に見つけた、蒼炎弾の融合弾、無炎弾で倒すことができる。


 ちなみにその無炎弾。

 融合させた後にその場にとどまり、持続してダメージ源になるものなんだが、ドラゴンゾンビをそいつに誘導するだけでもカウントが2減ってしまう。


 攻撃をした、という動きじゃなくて。

 攻撃そのものにかかるカウントを感知している様に見える。


 だから、カウント1のドラゴンゾンビに無炎弾はどのみち使えない。


 なかなか難しいな、と思っていたその時。


「99だと?」


 目の前に現われた新たなドラゴンゾンビ、その頭の上の数字ははじめて見る99だった。


 これまで全部が1から5だった。

 数日回って、数百体倒してきて、その中ではじめて出会うカウント99。


 出現率1%以下なのは明らか、それはつまり――。


「レアだな」


 自分でも、目がキラッと光っただろうというのがわかった。

 銃を構えて、通常弾をいくつか撃って牽制。


 カウントはしっかりと、攻撃した分減った。


 ドラゴンゾンビの攻撃を誘った。

 かみつきからの尻尾振り、前足の爪でのひっかき、瘴気を吐いてこっちを戦いにくくさせる。

 全部が知っている攻撃、今までのドラゴンゾンビとまったく変わらないスタイルだ。


「ドラゴンゾンビとしては同じなのか? ――リペティション」


 それを確かめるためにリペティションを使うと、ドラゴンゾンビは倒れた。

 リペティションで倒せるということはやっぱり普通のドラゴンゾンビだ。


 カウントこそ99だが、それ以外は通常のドラゴンゾンビと変わらない――。


 なんて、事はなかった。


 階段が現われた。

 ドラゴンゾンビが消えた後、器用の種がドロップする代わりに、下へ続く階段が現われた。


「いよいよか」


 もう少し先になると思っていたのが、意外とその時は早くやってきた。


 俺は深呼吸をして、階段を降りた。

 白い空間、いつもの様に、精霊の部屋へつづく、その一つ前の部屋。

 そこに巨大なブロックがあった。


 ブロックと言うよりは、一つの建物と言った方がいいのかもしれない。

 5メートル四方の、巨大なサイコロの様なものだ。

 その素材がやや気持ち悪かった。


 脈動する肉塊。

 ゲームとかでたまにある、生物の内部をモチーフにした、内臓のダンジョンって感じのブロック。

 ただし、腐っていた。

 ゾンビのようなくさった肉、って感じのものだ。


 今までのニホニウムっぽいそれを倒せ、破壊しろ。ってメッセージをはっきりと感じた。


 先制攻撃、火炎弾と冷凍弾を撃って、融合弾の消滅弾にした。

 消滅弾がヒット――が、何も起こらなかった。


 5メートル四方の肉塊は傷一つつかなかった。

 あらゆる弾丸を撃ってみた、接近して全力で殴ったり蹴ったり、押したりもしてみた。


 が、何一つ効かない。

 何をやっても、壊せる気がしない。

 肉塊は全くの無傷で、不規則に脈動し続けるだけ。


 何となく違う気がする。


 今までのどのモンスターとも違う。

 正攻法じゃ何をやっても意味がない、俺は直感的にそう思った。


 ならばとぐるっと肉塊を半周すると、裏側にナウボートみたいなのがあった。


「……」


 警戒しつつ、近づいて慣れた手順で操作。すると。


―――1/2―――

レベル:1/1

HP SS

MP SS

力  SS

体力 SS

知性 SS

精神 SS

速さ SS

器用 E

運  SS

―――――――――


 いつもの様にステータスが出た。

 現時点の俺のステータス


 直後、ナウボードが光った。


HP SS


 一番上の数値がまず光った。

 それに呼応したかのように、肉塊がビキッ、と割れた。


MP SS


 二番目の数値が光った、肉塊が更に一段階光った。

 ステータスが一つずつ光って、それとともに肉塊が崩壊していく。


 しかし。


器用 E


 器用の所で、見るからに「つっかえた」。

 光が今までので一番小さくて、肉塊も壊れなかった。

 それ所か、肉塊がナウボードごと消えてしまった。


 何もない、ただの白い空間になる。


「なるほど」


 転移後いろんなダンジョンでいろんなトリックがあったが、これはその中でも簡単な部類に入る。


 鏡、勾玉、剣。


 その三つが解禁するSSのステータス。

 そしてSSになってないステータスで、明らかな失敗。


 器用もSSに上げればいい、はっきりとそれが分かった。


「あげよう」


 俺はきびすを返して、階段を登って九階に戻っていった。

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