279.ニホニウム、地下九階
ニホニウム、地下七階。
電気を纏ったマミーがうようようごめく階。
火炎弾が特効だった階層だが、今は上位互換の攻撃がある。
蒼炎弾の融合弾、無炎弾。
打ち出した後は見えなくなる、超高温の炎を作り出す弾丸。
それを撃ち出して、電気マミーを誘導して、省力モードで次々と倒していき、精神の種をドロップさせる。
倒してドロップ、精神のステを1あげる。
倒してドロップ、精神のステを1あげる。
それを繰り返して、体感で「そろそろ上がったな」になった当たりで、ポータブルナウボードで能力をチェック。
―――1/2―――
レベル:1/1
HP SS
MP SS
力 SS
体力 SS
知性 SS
精神 SS
速さ SS
器用 F
運 S
―――――――――
Sでカンストしていた精神がSSまで上がった。
今までと同じだ。
鏡を手に入れた時、HPと力と速さの上限がSからSSになった。
勾玉を手に入れた時は、体力とMPと知性がSSになった。
そして二重加速で手に入れた剣。
それで精神をまず解禁した。
次は運だ。
ニホニウム、地下八階。
三つ首の犬ゾンビがうようよいる階に降りた。
三択から二択にするために、まずは追尾弾を撃つ。
それと同時に犬ゾンビに迫って、追尾弾が狙う首じゃない方の二つ、その片方に成長弾を撃ち込む。
首が吹っ飛び、犬ゾンビが消えて運の種がドロップした。
それを取って、運を1あげる。
更に次の犬ゾンビに追尾弾を撃つ、同じように肉薄して、残りの二つの首を片方吹っ飛ばす。
今度は効果が無くて、犬ゾンビはピンピンしていた。
三択の首、正解の首を当てないと倒れない特性。
追尾弾で一番ヤバイ首をのぞいた二択にして、二分の一の確率を当てる周回。
俺は二分の一を当て続けた。
リペティションならこれをする必要はない。使えば犬ゾンビは倒れる。
それでも俺は正攻法で倒していく。
目標を前にして焦るが、こういう時こそ初心でいるべき。
気が逸ってごり押しをすると、いろいろが雑になって思わず失敗をしてしまう。
この世界はゲームに似ている、そして俺は元の世界のゲームでそういう失敗を何回もした。
こういう時こそ慎重に、初心に返って。
正攻法二分の一を当て続けて、体感で「よし」と思った。
ポータブルナウボードを使って、ステータスを確認。
―――1/2―――
レベル:1/1
HP SS
MP SS
力 SS
体力 SS
知性 SS
精神 SS
速さ SS
器用 F
運 SS
―――――――――
運も、SからSSになっていた。
これで9個中8個までSSになった。
残りは一つ、器用。
さあ、いよいよだ。
俺は地下九階に降りた。
ダンジョンスノーが降る中、巨大なモンスターが見えた。
ドラゴン。
四本足で、二階建の一軒家くらいはある巨体。
その肉体がところどころ腐り落ちてて、瘴気の様なものを放ってる。
アンデッド系のモンスターばかりのニホニウムダンジョン、その地下九階。
モンスターは、ドラゴンゾンビだった。
一目で分かる位強そうなモンスター、しかしそれだけではない。
「3……どういう意味だ?」
ドラゴンゾンビの頭の上に「3」って数字が出ていた。
「とりあえず……小手調べ!」
銃を構え、すっかり主力まで成長した成長弾を撃ち込む。
何かある――という予想を裏切って、弾はドラゴンゾンビの体の一部を吹っ飛ばした。
特に何もないのか……って思っていたら。
数字が、「3」から「2」になった。
少し考えた。
上の階で集中力を高めてて、それを切らさずに来たから、すぐにピンと来た。
数字は、攻撃可能回数。
問題は攻撃が終わった後どうなるのか。
攻撃が出来なくなるのか?
ドラゴンゾンビが消えて、ドロップ無しで無駄骨になるのか?
俺がダンジョンの外に飛ばされるのか?
経験と知識から、いろんな可能性を想像した。
「それを一手で確かめられて……かつその後の展開に対応できる攻撃」
張り詰めたままの集中力が答えを出してくれた。
二丁拳銃を抜く、左右に同じ弾丸を装填。
トリガーを引いて、融合弾を打ち出す。
蒼炎弾二発――撃った直後にドラゴンゾンビの数字が「2」から「0」になった。
やっぱり攻撃回数だった。
そしてその後弾丸を込めているのに、トリガーを引いても弾はでなかった。
「ウィンドウカッター!」
魔法も使ってみた、発動しなかった。
拳を振ってみた、攻撃力を感じさせないへなちょこパンチになった。
数字は攻撃可能回数、それで間違いないみたいだ。
その可能性に対処するための無炎弾、大当たりだった。
攻撃は出来ないが、回避は出来る。
俺は回避しつつ、ドラゴンゾンビを無炎弾に誘導して、少しずつダメージを与えて、焼き殺した。
ドラゴンゾンビが倒れ、種がドロップ。
逸る気持ちを抑えて、慎重に種を手にとる。
――器用が1あがりました。
「――よしッ!」
抑えても出てしまう、喜びがガッツポーズになって出た。
オールSSへの道が見えてきた。