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「リョータさん!」


 屋敷自室、次の仕事にでかけるための準備をしてると、セレストが慌てて駆け込んできた。


「どうしたんだ?」

「プルンブムにダンジョンマスターが出ました。倒してもらえるかしら」

「分かった――うん?」


 承諾して、部屋をでて転送部屋に向かおうとした俺だが、ふとある事を思い出す。


「どうしたんですか?」

「プルンブムのダンジョンマスターって……前にみんながさくっと倒さなかったっけ」

「ええ、ブロマイドをみんなで一枚ずつ使って倒しました。でも最近ブロマイドの使い道がどんどん研究されてて、それで高くなって……」

「だれも気軽には使わなくなったのか」

「……」


 セレストは小さく頷いた。

 まあ分かる。俺も元の世界でゲームをやってた頃は、エリ○サー使えない症候群だったからな。


 高価なアイテムを惜しむ気持ちはわかる。


「わかった、そういうことなら俺が一番適任だろう」


 俺は早足で歩き出して、転送部屋に向かった。


「階層は?」

「私が戻ってきた時点では三階にいたわ」

「よし」


 プルンブムの全階層を踏破したので何処へでも転送可能だ。

 転送部屋で行き先をプルンブム三階に指定して、ゲートを開いて即飛び込んだ。


 一瞬で空気が変わった、ダンジョンマスターがいる空気。

 周りをぐるっと見回すと――いた。


 他のモンスターがいなく、冒険者達も退避した後のダンジョンの中に、ダンジョンマスター・リョー様がいた。


「………………」


 気のせいだろうか、リョー様の頭身が上がっている。

 ざっくり九頭身、もうどこから見ても完璧な少女マンガ主人公だ。


「…………かっこよさも上がってるのがすごい複雑なんだが」


 少女マンガチックでありつつ、男の俺の目から見ても普通に格好いい主人公だ。

 リョー様の見た目はプルンブムが書いてる絵そっくり――つまりプルンブムの画力がまた上がったって事になる。


「おっといかん」


 リョー様が俺に気づいて、銃を構えてきた。

 ちなみに水平に構えた横打ち、これまた様になって格好いい。


「リペティション」


 格好良くなったリョー様がどういう動きをするのかが気になったが、ダンジョンマスターはほっとくとその時間分全冒険者が損をするから、さくっとリペティションで倒した。

 体が脱力する。

 リペティションは敵の強さに応じて消費MPが変動する、ダンジョンマスター級はMPがSSでも一発で空になってしまう。


 無限回復弾を注射のように自分に撃ち込んで、MPを回復する。


「おっ、鍵だ」


 消えたリョー様は錆びた鍵をドロップしていた。


 鍵を拾って、ゲートを使って屋敷に戻った。

 転送部屋で待っていたセレストが俺を出迎える。


「お帰りなさい」

「ただいま、倒してきた」

「ありがとう、やっぱりリョータさんだけが頼りだわ」

「セレストはこれからどうするんだ? 戻るのか?」

「ええ」

「そうか。いらん気遣いだとは思うが気をつけろよ」


 リョー様がそうだからというのもあるが、プルンブムは他のダンジョンと違って、モンスターが成長――いや進化しているように感じる。

 それに、ダンジョンマスターの出現頻度も高い気がする。


 多分それらは全てプルンブムの気分次第。

 そのうち通常モンスターが魚から進化して、ダンジョン内が俺の見た目をしたモンスターに埋め尽くされる日がくる可能性もある。


 ……考えすぎだな、うん。


 まあそんな訳だから、モンスターが強くなるかも知れないと思って、一応セレストにそんなことを言ってみた。


「ありがとう、気をつけるわ」


 セレストは頬を桜色にしながら、大人っぽく微笑みながら転送部屋のゲートを使ってプルンブムに戻った。


 さて、俺は地下室に行くか。

 予定を変更して、テスト(、、、)がしたくなった。

 それには、まずはこの錆びた鍵を金の鍵にしなきゃだ。


 廊下を歩いて、地下室に向かう。

 セレストの部屋の前を通ると、ドアが半開きなのに気づいた。


「不用心だな……」


 そうつぶやいて、ドアノブに手をかけて、ドアを閉めようとした。


 ふと、スキマから部屋の中が見えた。

 セレストが越してきた時から変わらない、意外と女の子趣味な部屋。

 相変わらずぬいぐるみが色々飾られている――だけではなかった。


 並べられたぬいぐるみたち、そこに、ドアのスキマからちらっと見えた場所に、リョー様が二体立っていた。


 棒立ちのリョー様、ブロマイド召喚で敵がいないからマネキンのように動かないリョー様。

 なぜ、リョー様が――


「……見なかったことにしよう」


 いろんな想像が頭の中を駆け巡っていった瞬間、俺はそうする事にした。

 セレストがなんのためにそうしているのかはわからない、が。


「だから最近プルンブムに通ってるし、ダンジョンマスターの事を知らせてきたのかあ。うん、わかったぞ」


 ちょっぴりだけ白々しく棒読みに成りながら、俺はドアをしっかり閉めて、地下室にやって来た。


 錆びた鍵を地下室の奥において、距離を取る。

 そしてダンジョンマスター・リョー様に孵った瞬間、何もさせずに即リペティションで倒す。


 錆びた鍵が、黄金の鍵になった。


 これで二本目。

 前に取った、最初の一本を取り出して、二本持った状態で黄金の鍵をひねる。


 するとドアが出た、例の部屋に繋がるドアが現われた。

 ドアの上に「02」という文字が出た。


 やっぱり、鍵一本につき数字が1増える仕組みか。

 あとはこの数字の意味だな。


 俺はいったん地下室を出て、屋敷の中で声を上げた。


「だれかー、誰かいないか」

「はいですー」


 すると、サロンからエミリーがひょこっと顔を出してきた。


「エミリーいたのか」

「はいです、今日はおうちの掃除なのです」

「そうか。悪いけどテストに付き合ってもらえないか」

「もちろんオーケーなのです。何をすればいいです?」

「これを」


 そう言って、鍵をひねる。

 エミリーとの間に例のドアが現われた。


「わ、びっくりしたです」

「この中に入ってくれないか」

「わかったです」


 エミリーはなんら躊躇することなく、ドアを開けて中に入った。

 あまりにもあっさり過ぎて、色々言っておきたいのが間に合わなかった。

 まあいい、それよりも数字だ。


 ドアの上の数字は、エミリーが入ったことで「02」から「01」になった。


「リョータさん、呼びましたか?」


 今度はエルザ、仕事柄常にこの屋敷にいるエルザが現われた。


「エルザ、悪いけどテストに付き合ってくれないか」

「はい。そのドアで何かすればいいんですか?」

「話が早くて助かる、中に入ってくれればいい。既にアリスが安全だと確認してる」

「分かりました」

「中にエミリーがいるかどうかを確認してくれ」

「はい」


 あっさり引き受けてくれたが、エミリーほど即で飛び込みはしなかったので、一応注意事項をいっておいた。


 エミリーと同じように、ドアを開けて中に入る。

 すると、数字が「01」から「00」になった。


 どうやら、数字=鍵の数は同時使用人数みたいだった。

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