271.いつも予想以上
ある日、プルンブムの所にいった帰りに、テトラミンの街に出た。
プルンブム武器が出来てからはいろんな商人がテトラミンになだれ込んできて増改築をすすめる様になったが、それとは違って、冒険者の数が増えたきがした。
どういう事なんだろう、と、活気に満ちたテトラミンの街中で小首を傾げていた。
「リョータ様」
「デールか……なんか忙しそう?」
話しかけてきたデールは汗だくだった。
わずかにほつれた髪がおでこにべったり張り付いている、いかにも仕事で忙しそうな感じだ。
「はい! おかげさまでテトラミンに転居してくる冒険者が増えました。今日もこれから街の住宅区画の拡張についての打ち合わせです」
「へえ、希望者が増えたのか」
「それもこれもリョータ様のおかげです」
「プルンブム武器のおかげか」
「いえいえ、それだけではありません」
「うん?」
どういう事だ? と首をかしげる。
デールはまるでアイドルの出待ちをするファンの様な尊敬しかない目で俺を見ていた。
「リョータの威光ですよ。あれを使ってモンスターを倒したら、100%ドロップすることが分かったんですよ」
「そうだったのか」
なるほど、プルンブムには俺はそう見えるのか。
「大体30体モンスターを倒したら一回確定ドロップがついてくる。そのおかげでプルンブムダンジョンの効率が全ダンジョンの中でも上位になったんですよ。それで転入希望者が」
「なるほど、それはお得感がつよいな」
感覚を想像してみた。
平均30回ごとに一回当るとなれば、効率が上がるのもそうだけどテンションも上がる。
「俺なら溜めて溜めて、何十枚か溜めて一気に使うな」
「そういう冒険者もいるようですよ」
「だよな」
そっちの感覚はもっと分かる。
なるほど、人気が出るわけだ。
「なので、本当にリョータ様のおかげです。本当にありがとうございます!」
デールは腰を九十度におって、深々と頭を下げた。
「た、大変だ!」
ふと、遠くから一人の男が走ってきた。
男はデールの姿を見つけると、一目散に走ってきた。
「どうしたピエール」
「だ、ダンジョンマスターです、ダンジョンマスターが出ました!」
「なに!?」
「いってくる」
俺はそう言って、今し方出てきたプルンブムダンジョンに向かって駆け出した。
ダンジョンマスターは倒すのが早ければ早いほうがいい。
既に倒した事があるし俺が行けばリペティション一発だから、やってしまおうかと思った。
プルンブムダンジョンに入る、モンスターのいないダンジョンを下へ下へ進む。
すると、とんでもない光景を見た。
ダンジョンマスター・リョー様がちょうどやられる光景だ。
やったのは冒険者達――もとい、冒険者達が使った「リョータの威光」。
ブロマイド召喚の「リョー様」が十数体、そいつらがダンジョンマスター・リョー様をたこ殴りにしている、とても不思議な光景。
ダンジョンマスター版リョー様の方が多少強いが、多勢に無勢。
そいつは実にあっけなく、大量のブロマイド版リョー様にやられてしまったのだった。
☆
「聞いたよ、先行試作型対量産型軍団の対決だったみたいじゃないか」
夜、屋敷のサロン。
訪ねて来たネプチューンは楽しげに言った。
なんだそのロボットアニメ的な表現。
「ダンジョンマスターも君、それを倒したのも君。しかし本当の君はそこにはいない。不思議だろ?」
「そういえばそうかもしれない」
「僕からもお礼を言わせてもらうよ。あの一件で更にプルンブムの評価が上がったんだからね」
「なるほど、お前はテトラミンに投資してたな。でもなんで上がったんだ?」
「ダンジョンの中でも珍しい、ダンジョンマスターが脅威にならないダンジョンだからだよ。ダンジョンマスターが出ても、慌てて討伐する人間を送らなくても、現地の人間で対策できるシステムができあがってるからね。安全安定で周回できるダンジョン」
「……そりゃ人気も上がるな」
「しかし、君ってすごいね」
「うん?」
「毎回毎回、求められる以上の事をやってしまうんだからね」
ネプチューンは更に、楽しそうにわらったのだった。