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251.百万人

 朝ご飯の後、屋敷のサロン。


 珍客が訪ねて来たので、仕事に出かけるのを少し遅くした。

 そうして向き合うのはネプチューン一家。


 ネプチューンと、いつも一緒にいるランとリルの三人組だ。

 ネプチューンがソファーのまん中に座り、ランとリルがそれぞれ両横にいてぴったりくっついている。


「いつ見ても両手に花だなあんた」

「キミの方がよっぽどだと思うけどね。今何人いるのかな、この屋敷だけでも」

「隅々まで把握してるぞって言い方だな」

「それはもちろん。キミほどの重要人物、その動向を把握しておくのは大事な事だからね」

「はあ……」

「とは言えフィリンの協会長はまだ幼すぎるから花にするのは――」

「それ以上いうと名誉毀損で訴えて勝つぞ!」


 被せ気味で突っ込んだが、ネプチューンは悪いとは思っていない、いつもの顔でフレンドリーに笑った。


「こわいこわい。キミを怒らすと大変だからこの辺にしておくよ」

「いや別にそんな事じゃ怒らないけど」

「知ってる」

「むぅ」


 ネプチューンはニコニコ顔のまま、しかし真剣な目つきで俺を見つめた。


「そういうキミが好きなのさ」

「そっち方向に話を持ってくと本気で怒るぞ」

「大丈夫大丈夫、そっちじゃないから。むしろ盃どう? って感じの好きだから」

「それもわりと勘弁してくれ」


 リョータ・ファミリーと言われるのは慣れてきたが、盃とかの話になるといよいよヤクザとかマフィアそのものになるからちょっと抵抗感がある。

 ネプチューンが何処まで本気なのか分からないが、とりあえず話をそらすことにした。


「で、何しに来たんだ」

「うーん、本当はキミじゃなくてほかのみんなに挨拶だけど……まあキミでもいいかな」

「ほかのみんな?」

「えっと……なんだっけ」


 ネプチューンは両手の花――くっついてる二人の女の子に水を向けた。


 元気印でご近所幼なじみって感じのラン、年上のお姉さんで妖艶な空気を出しているリル。

 二人のうち、リルが呆れた表情をしつつ、質問に答えた。


「エミリー、アリス、レイア、ミーケ。この四人よ」

「そうそう、その四人」

「……精霊か?」


 今までネプチューンと絡みのなかった四人の名前。

 そもそもレイアとミーケは最近仲間になったばかりで、ネプチューンと会った事さえあるかどうかだ。


 ネプチューンと絡みはないが、四人の共通点ははっきりしてる。

 精霊の名前を名乗る事を許された、精霊付きだ。


「そういうこと。ファミリーに複数の精霊付きを持つ者同士、顔合わせとか色々やっておこうって思ってさ」

「そっちも精霊付きが複数いるのか」


 初耳だが、驚きはしなかった。

 この世界に転移してきた直後に色々話を聞いてきたネプチューンファミリー。

 そのネプチューンとも手合わせをした事がある。


 文句なしの実力者、業績も申し分ない。

 精霊付きがいる、しかも複数いる。


 そう言われても驚きはしなかった。


「どうも、ネプチューン・オキシジンです」

「オキシジンか」

「ラン・ハイドロジェンだよ」

「リル・ハイドロジェン。ちゃんと敬いなさい」

「ほ?」


 ネプチューンのは驚かなかったが、直後に名乗った二人のはびっくりした。


 ハイドロジェンは知ってる、この世界のダンジョンの名前からしていつかは耳にすると思っていた名前だ。

 驚いたのは、二人が同じそれを名乗っていること。


「びっくりだよね。でも二人じゃないと認めないって精霊が言うもんだからさ」

「なるほど」

「しかし……オキシジンにハイドロジェンか」

「どうかした?」


 ネプチューンは小首を傾げる。

 そんなネプチューン、そして両横にいるランとリル。

 三人を見て、俺はぼそっと。


「……H2O」


 とつぶやいた。


「はい?」

「いやなんでもない」

「そう? まいっか。そんな訳だから顔合わせにきたんだけど、キミを見たらどうでもいいかなって思ってね」

「なんでだ?」

「精霊付きは場合によっては大勢の人間の生活に大きく影響する存在なんだ。わかるだろ」

「……そうだな」


 実際、レベッカがそうだ。

 俺も近いことをしている。


 レベッカ・ネオンはネオンダンジョンを完全にひとりじめしてる。

 アウルム本人のためだが、俺もアウルムダンジョンの夜間をゼロドロップにした。


 そういうことが出来るのが精霊付き、ネプチューンの言うとおり、一人で大勢の人間の生活を左右できる存在だ。


「正式な役職とかはないけど、ダンジョン協会の協会長よりも遥かに立場が上だね」

「そうなるな」

「その精霊付きが四人もいる所はどうなのかなって思ったけど、よく考えたらキミだよね、ここのリーダーは。それならまあ大丈夫かなって」

「買いかぶるな」

「こう見えてキミの事が大好き――いひゃいいひゃい」


 ネプチューンがランとリル、両方からほっぺをつねられた。

 急にヤキモチはいったな。


 二人につねられたネプチューンは頬をさすりながら、何事もなかったかのように続けた。


「でも、本当にキミはすごいね」

「うん?」

「最初にあったときはそこそこの冒険者だったのに、今や四人の精霊付きを従えてる。そうだね……」


 ネプチューンは真顔になった。

 今日、見た顔の中で一番真剣な表情で。


「……百万人に影響を与える程の大きな存在になったんだからね」

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