表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/611

246.亮太にしかできない

 数十回チャレンジしたけど、結局精霊・フォスフォラスに繋がる階段は最後まででなかった。


 夕方、上がりの時間になった。

 仕方ないから最後にドロップした二千万の札束を持って、転送ゲートから屋敷に戻った。


「お帰り!」

「うお!」


 夕焼けにそまる屋敷の転送部屋で、アウルムが俺を出迎えた。

 腕の中には人形のように、抱っこされてるミニ賢者のミーケがいる。


「お帰りなさい」

「ただいま。どうしたんだ二人とも」

「リョータにただいまって言いたかったの!」


 アウルムはものすごくテンションが高かった。


「俺にただいま?」

「人間って、ただいまとかお帰りとか言うんでしょ? いままでリョータに連れ出してもらってたばかりだから、全然いえなくてさ」

「なるほど」


 同棲カップルがあえて外で待ち合わせデートするようなものか。


「うふふー、リョータのおかげでまた一つ経験しちゃった」

「よかったですねアウルム様」

「あなたのおかげでもあるわね。これプレゼント!」


 アウルムはそう言って手をかざす、手のひらがパア、と光った後、ミーケの体に黄金のアクセサリーがついた。


 また、増えた。

 ユニークモンスターとして、自分と自分が触っているモンスターのダンジョンと階層の移動が自由になったミーケは、外に出たいアウルムのパートナーになっていた。

 そのアウルムからことあるごとにミーケに感謝してお礼をしてたら、今やミーケは全身黄金のアクセサリーまみれになったわけだ。


 十本の指全部に指輪、もしくは二次元アイドルの追っかけの様なフル装備な感じだ。


 そんなミーケとアウルム、仲が良いのは間違いない。


「ただいまって言ってもらえるのは嬉しいな、ありがとう」

「それはあたしの台詞。リョータがいなかったらあたしはずっとあそこにいたまんま。だからありがとう」

「そうか」


 頷き、微笑みあう俺とアウルム。


 帰宅してまずは一息つこうと、俺はサロンに向かって歩き出した。

 アウルムはミーケを抱きかかえて、俺の横についてくる。


「うーん」

「なんだ?」

「リョータ、なんか元気ない?」

「ああ、ちょっとダンジョン攻略が上手く行かなくてな」


 俺はフォスフォラスの事を簡単に説明した。


「そっかあ……」

「どうにかなるって思ったけど、増長してたのかもな」

「そんな事ない」

「え?」


 アウルムが足を止めた。

 俺も立ち止まって彼女に振り向いた。


 立ち止まってまっすぐ俺を見つめてくるアウルム。

 口調は静かそれ程強くないが、はっきりとした意思を感じる。


「リョータだったら出来る」

「そうか?」

「うん、というかリョータじゃないとだめ。あたしが保証する」


 にこり、とアウルムは微笑み。


「このあたしがね」


 世界にある118のダンジョン、その一つを統べるアウルム。

 ものが全てダンジョンからドロップするこの世界で、アウルムの様な精霊は神にも等しい――いや神そのものと言っていい存在。


 そのアウルムが俺を認めてるといった。


「そうか、ありがとう」

「それはあたしの台詞だってば」


 アウルムは笑って、再び歩き出して、俺の横に並んできた。


「あっ、ヨーダさんがいたです」

「どうしたエミリー」


 廊下の向こうから、エミリーがパタパタと走ってきた。


「お客さんなのです」

「客?」

「レベッカさんが来てるのです」

「何でまた……」


 レベッカ・ネオン。別名「ザ・パーフェクト」。


 あらゆる能力がすべてAで、その上ダンジョン産まれということもあり、118の一つのネオンダンジョンを完全攻略し、精霊から「ネオン」を名乗る許可をもらった精霊付きの一人だ。


「……ああ、そうか」


 俺は思いだして、アウルムとミーケを見た。


「どゆこと?」

「前に来た時の会話を思い出した。彼女は俺に『アウルムの人?』って聞いた。で、今のアウルムはミーケだろ?」

「はい、私です」

「新しい精霊付きに会いにきたのかもな」

「はいです。それとヨーダさんにも言いたいことがあるって言ってたです」

「文句かな。この手の人は『私に許可無く変わるってどういう事?』って言ってきそうだ」

「会わない方がいいかな」


 アウルムが少し首をかしげて、聞いてきた。


「そうだな……どうするか……」

「あたし代わりに会っとく?」

「うお! 帰ってたのかアリス」


 背後から声を掛けてきたアリスに苦笑いしながら聞いた。


「うん、今帰った。レベッカ・ネオンでしょ。あたしちょっと興味あるんだ」

「興味?」

「同じダンジョン産まれだから」

「ああ、なるほ……ど?」


 同じダンジョン産まれ?


「あれ? どうしたのリョータ」

「固まってしまったです」

「……アリス!」

「はひっ!」


 俺はアリスの肩をつかんで、至近距離から彼女の目を見つめた。


「ど、どうしたのリョータ」

「アリスって、100%ドロップだよな」

「そうだけど……」

「でもモンスター達のドロップはC相当だったな?」

「うん、あたしがタイミングを――ひゃん!」

「来てくれ!」


 俺はアリスの手を掴んで、来た道を引き返した。


「ヨーダさん?」

「どこ行くのリョータ」

「悪い、ちょっと試したいことがある。レベッカは任せる」


 そう言って、アリスを引っ張ってズンズンと廊下を進む。


「どうしたのあれ」

「分からないです……でも、生き生きしてたです」

「――だね」


     ☆


 フォスフォラス、最下層地下二十階。

 金庫のドアがぶち破るのに時間掛かるということもあって、ここはほかの階層に比べて人が少ない。


 俺はアリスを連れて、開いてるドアの前に立った。


「どうだ?」

「タイミングって事?」

「ああ、すごくレアなタイミングを感じるか?」

「あるね」

「早! そんなに早くわかるもんなのか?」

「あたしもいろんなダンジョン行ってるからね」


 アリスはにやり、とイタズラっぽい笑みを浮かべる。


「いろんなパターンを知ってるのさ。ここは……面倒臭いやつだね」

「というと?」

「タイミングが常にあるけど、超短いんだよね。一秒を――うーん、一万分の一くらいのタイミング?」

「そりゃでないわけだ」


 常に一万分の一くらいの確率じゃな。


「それにそのタイミングじゃ――おしえて俺が倒す訳にもいかないな」

「んー、大丈夫だと思うよ?」

「え?」

「見てて」


 アリスがそう言うと、一歩前に出て、金庫のドアに向き合った。


 何をするのか分からないが、任せてみよう。


「りょーちん!」


 アリスは切り札の召喚魔法を使った。

 りょーちん、デフォルメされた俺だ。


 能力は全部俺と同じ、ただし一日に一回、そして30秒間しか呼べないという、正真正銘の切り札。


「いくよりょーちん」


 りょーちんが頷き、銃を抜いて扉を攻撃しはじめた。


 俺がやったのと同じように、二丁拳銃での貫通弾連射だ。


 それを無造作にやっている。

 なるほどまずは削って、トドメのタイミングを計るのか――。


「でた」

「うぇ!?」


 思わず変な声が出た。

 扉が普通に貫通され、普通になくなって――普通に下に続く階段がでた。


「え? こんなにあっさり?」

「りょーちんとあたしはつながってるからね、タイミングを普通にあわせたらこうなるのさ」

「すごいな……」

「なにいってんの?」


 アリスが呆れた様に言う。


「すごいのはリョータ。あたし、ほかの子ださなかったじゃん?」

「ああ、そういえば」

「リョータだけでやらないと無理だったんだよこれ。みんな出すよりリョータ――りょーちんだけでヤッた方が成功率たかかったんだから」


 そういうものなのか。


「さて、これが階段だね」


 アリスは改めて、という感じで階段に向き直る。

 俺も階段を向く、それを見る。


 フォスフォラスの部屋に続く階段、ようやくでてきてくれたぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 設定コロコロん 1話で設定変わる作者だから仕方無い 召喚時間も半分になっちゃったなw
[気になる点] 階段って倒した人しか見えないのでは? 毎回思うが設定がコロコロ変え過ぎでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ