230.リセマラ
融合無炎弾がダンジョンマスター・大名を焼き続けて、周りのモンスターが変化する。
「リペティション!」
安全に、かつ確実にリペティションで大名を倒した。
ダンジョンマスター相手に膨大なMPを持ってかれてくらっときたが、だいぶ慣れてきたから、ほぼ無意識で無限回復弾を自分に撃った。
周りを見る、金ピカな外見の足軽がうようよした。
こっちは生態系が変わった後にはじめて見るモンスター、リペティションが効かないから成長弾で撃ち倒した。
ドロップした酒を瓶に取り込んで、エリックとマオに差し出す。
「いやはや、鮮やかですな」
「ダンジョンマスターを完全に手玉に取ってるの」
「手玉というより、もはや流れ作業ですな」
二人はそういって、新しい酒の鑑定に取りかかった。
「これは……清酒ですな」
「くんくん……56点なの」
「56点……あまりよくないな」
「そうですな。雑味があって、見た目もあまりよろしいとは言えません」
「わかった」
頷く俺。もう一回、品種改良の手順をふんだ。
大名のドロップを遠くにおいて、距離を取った後、その上に融合の無炎弾を撃つ。
その状態で、周りの雑魚モンスターを掃討しながら待つ。
しばらくするとまた空気がかわって、ダンジョンマスター・大名が孵った。
大名は無炎弾に焼かれて体の半分を持ってかれて、再生のために足がとまった。
その状態で更に待つ、無限回復弾を自分に撃ち続けて、MPをSSの満タンまで回復させる。
周りのモンスターが変わったのを確認して、更にリペティション。
新しい酒を二人に渡す。
「ビールですな、コーヒーの風味がします」
「93点なの」
「悪くありませんが……」
エリックはちらっと俺をみる。
「言いたいことは分かる。せっかくだから極めてみよう」
俺は笑顔で言った。
ゲームで言うとリセマラだ。
一定の手順を踏んでランダムででる結果だが、やり直す事で新しい結果にする事ができる。
それをくり返し出来るのなら、いい結果が出るまで粘った方がいい。
「本当にいいの?」
「乗りかかった船だ。それにたいした負担でもない」
「はわ……」
「さすがでございますな」
感心した二人はひとまず置いて、大名酒のリセマラをもう一巡する。
ドロップを置いて、無炎弾を撃って、孵った後生態が変わるまで待って、リペティションで倒す。
一回ごとに大体15分はかかるリセマラだ。
「42点なの」
「ダメですな」
「88点」
「悪くありませんが93点を一回だしてますからな」
「1点」
「論外」
二人と一緒に酒の改良を続けた。
マオは匂いを嗅いでるだけで大丈夫だが、毎回一口飲んでいるエリックの顔は徐々に赤くなっていった。
リセマラはなかなか上手く行かなかった。
マオ曰くAのマックス――実際Sのマックスである俺のステータスはあまり役に立たなかった。
試しに一回、二体倒して同じものを二つ出したが。
「どっちも70点なの」
「このモンスターの中で一番高いランクを出せるが、ダンジョンマスターからの変化はコントロール出来ないって事か」
「生態系の変化はサトウ様が手をつけず、見守っているだけですからな」
「そりゃそうだ」
結局リセマラを続ける、数を撃つしかないって結論になった。
「93点……さっきと同じなの」
「これは……難しい判断ですな」
20回くらいやった後にでた93点、今までの最高点数だが、俺は何も考えずに次のリセマラの手順に入った。
外れじゃない、だけど一回は出た結果。
粘りに入った以上、少なくともそれ以上の結果は出さないと割りに合わない。
そんな考えのもとでリセマラを続ける。
だいぶ疲れてきた、マオもエリックも口数が少なくなった。
「52」
「ビール」
と、最小限の言葉だけを口にするようになった。
それでも続ける、ここまで来たら後には引けない。
そうして、何回目なのかさえも分からなくなったその時。
「うっ!」
「どうしたマオ」
「美味いの!」
「お?」
「これは……文字通りの甘露ですな」
「そうなの! ものすごいお酒なの」
疲れ切った二人が一気に元気を取り戻すほどの品質。
「どれくらいなんだ」
「120点なの!」
「前代未聞の美味ですな」
二人の評価は、予想をだいぶ上回っていた。