228.永久機関
蒼炎弾、そして新しい火炎の融合弾をもう少し試していった。
色々撃って、あれこれ燃やしてみた。
火炎弾と蒼炎弾の威力が1だとすると、融合弾の威力は10近くある感じだ。
融合した後は見えないからわかりにくいが、威力はそれくらいある。
「あっちぃ!」
アブソリュートロックの石で無敵モードにして手を突っ込ませると、ものすごい熱湯風呂に入ったときの様な突き刺さる痛みが襲ってきた。
ちなみに普通の火炎弾で大炎上したロケーションを作って中に入っても熱いともなんとも思わなかった。
「むしろ炎の中から蘇るフェニックスで格好いいな」
無敵モードのまま炎の中に佇んで、そうつぶやく。
実戦で使ってみたいな。
火力が高いのは分かった。
もう一つの特性、「見えない」という事が実戦でどう発揮されるのかが気になる。
もう夜遅いけど、ダンジョンにいって試そう。
明日にやろうとしても、こういう時わくわく感が強くてどうせまともに寝れないだろうからな。
炎の中から出て、無敵モードを解除して、ダンジョンに向かおうとしたその時。
「あれ?」
もう一つの炎、融合弾の炎が消えてない事に気づいた。
見えない炎だからわかりにくいが、陽炎がまだ揺らめいている。
試しに後で処分しようとした酒の樽を投げ込むと跡形もなく燃え尽きた。
こんなに長かったっけ? これ。
見えない炎は放置すると危険だから、消えるのを見届けてから立ち去ろうとした。
その間、周りを見回す。
融合弾は何十発も撃ったから、他に消えてないのがないかと探す。
他にはなかった、これ一つだけだった。
安心してそれが消えるのを待った……が。
いつまで経ってもそれは消えなかった。
もうタルもないから、今度は通常弾を撃ってみた。
弾丸が見えない炎に飲まれて、蒸発してしまった。
まだ炎が残ってる。
なんでこれだけこんなに長いんだ?
気になって、それの真横にもう一回火炎弾と蒼炎弾を撃った。
融合して見えない炎になった瞬間。
前の――消えないと思っていた見えない炎が消えた。
「もしや?」
つぶやき、更に横に融合弾を撃つ。
新しい見えない炎がでて、一つ前のが消えた。
少し待った、見えない炎は消えなかった。
もう一度撃った、前のが消えて新しいのが産まれた。
なるほど、一度に一個しか存在出来ないタイプの攻撃か。
しかも――今度は辛抱強く待った。
その場に座り込んだ、五分ごとに通常弾を撃ち込んだ。
一時間経っても、見えない炎は消えなかった。
辛抱強くまちつづけた、今度は弾を撃ち込むのをやめた。
更に一時間待った、炎は消えなかった。
新しい融合弾を撃つとあっさり消えた。
一度に一個しか存在出来ない、かつ、自然では消えないタイプか。
「……」
ちょっと思うところがあって、試しに別の融合弾を撃った。
火炎弾と冷凍弾での消滅弾だ。
空間を呑み込むように消えた消滅弾、それを見た後、見えない炎を見る。
消えていた。
見えない炎が何事もなく消えてなくなっていた。
なるほどな。
つまりまとめると、通常の火炎弾の十倍程度の威力、いったん打ち出すとそこに存在し続けて、種類問わず新しい融合弾がでるまで消えない、って事か。
「……これは、便利かも知れない」
☆
いったん街に戻って、夜中誰もいないフィリンから新しい酒樽を担いで、テストのため人気のない野外に戻ってきた。
樽を置いて、ハグレモノが孵る距離まで離れる。
そして樽の上に火炎弾と蒼炎弾の融合弾を撃つ。
空間が揺らぐ、見えない炎が出現する。
俺は地べたに座って、待った。
しばらくすると氷の足軽が孵って、樽から這い出た――瞬間。
直上に出来た見えない炎に触れ、一瞬で蒸発した。
そして新しい蒼炎弾はポーチに入った。
何もしないで待ち続けた。
ハグレモノが孵る度に勝手に見えない炎に突っ込んでいって、ドロップがポーチに吸い込まれてくる。
やがてワインが全部足軽になって、蒼炎弾になって、残った樽=ゴミもフランケンシュタインになって、追尾弾になって。
設置から数十分、全自動で弾が生産された。
新しい融合弾、永久機関作りに使えそうだ。




