225.サカナのシャケ
ランタンダンジョン、地下一階。
レアモンスター・足軽大将からドロップしたペンダントをつけて、歩き回っていた。
レアモンスタードロップのアイテムだ、能力チェックはしっかりしないとな。
例えそれが周りから
「そんなのとっとと捨てな」
って笑われる様なものであっても。
炎の足軽と出会った、突いてきた槍をかわして、ゼロ距離からの成長弾でヘッドショット――。
「うおっ!」
びっくりして声がでた。
威力が上がった成長弾、ゼロ距離からのヘッドショットだと頭を丸ごと吹っ飛ばした。
ちょっとびっくりした。
足軽じゃなくて、シクロに戻ったらゾンビにもやってみよう。
頭を失って倒れた炎の足軽、直後にポン、と枝豆をドロップした。
すぐに次の炎の足軽とエンカウントした、今度はペンダントを外して成長弾で同じように撃ち抜く。
すると、パシャン、って水音がして、ビールがダンジョン内にぶちまけられた。
何回か交互で入れ替えつつ確認する。
ペンダントをつけていると例外なく、酒のドロップなのがその酒に合うつまみのドロップになった。
地面におちてる枝豆を眺める、周りを見る。
例外なく全員が炎の足軽を倒してビールを生産している、誰も枝豆なんかドロップさせてない。
これもまったく売れない訳ではないだろうが、多分ものすごく安いだろうな。
何かに特化した街での例外、しかも数は極小。
二束三文で買いたたかれてもおかしくない。
足軽大将のドロップ、魚のペンダントがはずれ扱いされる理由がいやって程分かった。
だれも拾わないもんだから、枝豆がモンスターに孵った。
枝豆からも炎の足軽がでた。
その炎の足軽をペンダントなしで撃ち抜く。
すると、今度はビールがぶちまけられた。
どうやらビールと枝豆の根っこは同じみたいだな。
どっちからも炎の足軽になるし、どっちになるのかはペンダントのありなしで決まる。
「こんなところだな」
一通りの検証がすんで、特筆すべき点がない事で、ペンダントをしまおうとした。
視線の先、離れたところでまた枝豆が炎の足軽に孵った。
ペンダントをしまう動きが止まった。
ふと思い出す、まだ完全に確認が終わってないことに。
☆
ダンジョンをでて、フィリンの街からも出て、人気の無い野外に来た。
魚のペンダントを地面に置いて、距離を取った。
レイアがいなくてリヴァイヴが使えないから、昔と同じように待った。
しばらくして、ハグレモノ・足軽大将が孵った。
銃をかまえて近づいていくと、足軽大将は周りをキョロキョロした後、なんと身を翻して逃げ出したのだ。
「もしかして……足軽をパワーアップさせるしか能がないのかこいつ」
そう思ってしばらく追いかけるが、足軽大将は逃げるだけで一向に攻撃してこない。
どうやら本当に指揮だけだ、と確認したところで足軽大将を倒した。
ペンダントがドロップされた、形が少し変わった。
「これは……シャケか?」
魚は魚だが、俺がよく知ってる魚の形になった。
シャケのペンダントを持って、再び、フィリンに戻って、ランタンダンジョンに戻ってきた。
地下一階、足軽がひしめく忍者屋敷。
「あっ、リョータさん。さがしたッス」
中に入ると、テールが俺を見つけて駆け寄ってきた。
「どうした」
「フィリンのダンジョン協会長がご挨拶したいって言ってるッス。それで探してたッス」
「ああ、なるほど」
ダンジョンマスターを使ってダンジョンの生態を変える――品種改良。
エリックが話をつけているだろうが、ダンジョン協会長の立場からすれば実行部隊がどんな人間なのか一度あってみたいんだろう。
「分かった……その前に最後のチェックだ」
「時間掛かるっすか?」
「いや、足軽を一体か二体倒すだけだ」
「分かったッス、待ってるッス」
テールを待たせて、俺は出来たてほやほやのシャケのペンダントをつけて、一番近くにいた炎の足軽を撃ち抜く。
すると、同時にでた。
ビールと枝豆が同時にドロップした。
まるで何かのセットだ。
「なるほど、両方がでるようになるんだな」
「えええええ!? な、何がどうなってるッスか?」
驚くテール、俺は彼を引き連れて地下二階に降りて、氷の足軽を倒した。
今度はワインとチーズ、またまたセットでドロップした。
「すごいッス! 両方いっぺんにドロップするなんてはじめて見るッス。何をやったんすか?」
「企業秘密だ」
「はえぇ……」
テールは感嘆の顔で俺を見た。
シャケのペンダント、こっちならまだ、使い道があるみたいだ。




