205.斬撃弾
ニホニウム、地下七階。
実質クリアしたここに、レイアを連れてやってきた。
「じゃあ、打ち合わせ通り頼む」
『はい、マスター』
レイアは返事をして、アームを二本だした。
一本は銃を持って俺に向ける、もう一本はレイアのレーダー能力で、モンスターの居場所を常に探知させて、一番近いモンスターに向けるコンパス代わりだ。
俺はアームがさししめす方角に向かって歩く。
すぐにモンスターと遭遇した。
包帯まみれの男、体中帯電しているマミー。
「リペティション!」
手をつきだし、魔法を使って瞬殺する。
マミーがドロップした種は腰元のポーチに吸い込まれる。
更にアームの案内でモンスターを探す、見つけ次第リペティションで瞬殺して種を確保。
いつ何があってもいい様に、レイアのもう一本のアームで、マミー五体ごとに一回俺に回復弾を撃って、MPを回復させるようにした。
万が一ダンジョンマスターが出た時の対処だ。
実はニホニウムだけ、ダンジョンマスター予測はない。
天気予報と同じように、ドロップに影響するから、ほとんどのダンジョンではダンジョンマスターがいつ現われるのかの予報があって、それが公表されている。
唯一例外なのがこのニホニウムだ。
俺以外誰もドロップさせられない、商業的に価値のないダンジョンだから、予報はまったくされない。
今すぐ現われるかもしれない、向こうしばらく現われないかもしれない。
その用心のタメに、MPを常にMAX近くに維持させている。
そうして万全の体制で、一番楽で効率的な方法で種を集めていき。
一時間もしないうちに、種は100集まった。
☆
転送部屋を使って屋敷に戻って、地下室に来た。
腰のポーチから種を出して、床にばらまく。
「これからどうするんですか、マスター」
「これをハグレモノにして、ドロップさせる。ニホニウムのハグレモノは特殊弾をドロップするんだ」
「わかりました。リヴァイヴをすればいいのですね」
「そうだ」
レイアは静かにうなずいた。
省エネチックで反応薄いけど、やる気は出ているように見える。
「じゃあ、行くぞ」
「はい――リヴァイヴ」
「リペティション」
「リヴァイヴ」
「リペティション」
屋敷の地下室で、今までで一番楽で――作業的に特殊弾の変換をしていた。
今までは時間をかけて距離を取って、ハグレモノにしてから倒さなきゃいけないのに、レイアのリヴァイヴで待ち時間が無くなった。
もはや工場のコンベア同様、完全にこれ以上ない作業で種を銃弾に変換していく。
ちなみに完全作業にしたのは、この後銃弾の検証が残ってるから、体力とか頭とかを温存しているためだ。
しばらくして、100の種が100発の特殊弾に変わった。
「じゃあ次行こうか、あそこにもやしを用意した」
「リヴァイヴですね」
「それと拘束だ。リヴァイヴで戻した後一秒か二秒間捕まえててくれ、スライムなら出来るだろ」
「……空中に軽く放り上げたほうがいいでしょうか」
「トスバッティングみたいにか」
俺は少し考えた。
「うん、地味だけどその方がいい。完全に動かない的を狙うよりかは」
「はい」
「いいぞレイア、これからも思った事をどんどん提案してくれ」
「……はい」
レイアは嬉しそうに、微かにうつむいた。
俺は意識してレイアをほめる様にしている。
彼女が作られる過程で魂を抜かれているという過去から、なるべくほめたりして感情の揺らぎを与えようとしてる。
ちなみに怒らせたり悲しませたりなのもいいけど、やってない。
そういうのは趣味じゃない。
レイアはあらかじめ用意したもやしに近づいていき、それを手にとった。
距離を取って、アイコンタクトを交わしたあと、レイアは「リヴァイヴ」と唱えて、戻したスライムを軽くトスした。
俺はマミーから変換した新しい特殊弾を装てんして、山なりの軌道を描くスライムを撃つ。
まずは軌道……普通だった。
どうやら追尾弾のようなタイプじゃない。
弾速……も普通だった。
地下六階のクズ弾は特殊な用途で役に立ったが、最初見た時はずっこけな感じだった。
普通の軌道、普通の弾速。
飛んでいった特殊弾がスライムに着弾した。
ズパッ!
そんな音が聞こえてくるくらい、スライムは鮮やかに一刀両断されて、通常弾をドロップした。
「斬撃?」
「斬撃のようです」
「もう一回やってみる、レイア」
「はい、リヴァイヴ」
次のスライム、同じようにニュー特殊弾を撃つ。
今度は目を凝らす、着弾の瞬間をじっと見つめる。
インパクトした瞬間、着弾点を中心に、左右に裂け目が走った。
着弾点から斬撃がうまれる特殊弾。
斬撃弾、って所だ。
ちなみに今まで斬撃を使った記憶はほとんどない。
この世界にやってきてからしばらくは竹の槍だったり、その後すぐ力が高くなって、この銃を手に入れた。
打撃も射撃も、特殊弾による魔法攻撃もいろいろやったが、斬撃ってのはほとんど未体験だ。
レイアにまた数回スライムを投げてもらって、斬撃弾を撃ち込む。
産まれた斬撃は真横だったり斜めだったり縦に一直線だったりと色々あるが、共通しているのは「斬撃が一回」という事だ。
一発につき斬撃が一回。なるほど。
「マスター、融合弾をためしてみますか」
「そうだな、融合弾はどうなるか分からないから、念の為にすこし遠くに放ってくれ」
消滅弾みたいだと近すぎると危険だからな。
「はい――リヴァイヴ」
新しいスライムは俺の言いつけ通り、今までの倍は遠い距離に放り投げられた。
まずは冷凍弾。冷凍弾と斬撃弾を撃って、途中で当たるように融合させる。
一つに融合した弾丸は空中のスライムを捉えて斬撃をうんだ。
スライムは倒れ、消滅したが、直前に見えた切口は凍っていた。
「氷の刃ってところか? もう一回だ」
「はい」
今度は火炎弾で融合弾を作ってみた。
ある意味冷凍弾と一緒、切り傷は炎にとけていた。
炎の刃で焼かれたようになった。
いろいろタメしてみた、回復弾と拘束弾以外とは全部融合できた。
雷弾は雷の刃、追尾弾は追尾する斬撃、クズ弾はメチャクチャ遅いだけの斬撃弾になった。
地味にだが汎用性が高い、結構使い様がありそうな特殊弾だった。
「次行きます、リヴァイヴ」
そして、斬撃弾と斬撃弾。
両方を撃って融合させて、スライムに着弾。
するとスライムはばらばらになった。
みじん切りだ、バスケットボール大のスライムは一瞬のうちに数百個にばらばらにされる。
「……レイア、もやしをいれていた皿をなげてくれ」
「はい」
言われた通り皿を放るレイア、俺は斬撃弾を二発撃って融合させる。
予想通りだ。
ゼリー状スライム相手よりも、硬い皿の方がはっきりと粉々になった。
文字通り粉々に、滞空している一瞬で粉砕された。
「すごい効果です」
「俺もそう思う……さしずめ粉砕弾ってところか」
新しい弾丸、結構な効果を持つ優れものだった。