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184.改めて誓う忠誠

 俺は彼女をつれて、コバルトダンジョン地下一階にやってきた。


「さてと、えっと……そういえば名前聞いてなかったな」

「ナヤミレイア」

「悩むレイヤー?」


 聞き慣れない言葉に思わず空耳した。


「古い言葉で『ゼロ』って言う意味」

「……名前を変えよう。レイアでどうだ?」

「マスターがそういうなら」


 無感動に頷く彼女。

 レイアというのも飛んでるドラゴンを何となく連想してしまうが、まあアレも雌だし、「ゼロ」なんて意味合いの名前よりかはマシだろ。


 気を取り直して、本題に入る。


「それで、どうやってフォローをするんだ?」


 レイアに聞く。

 冒険者のサポートとして、ドロップを増やすために作り出した人工生命体だ、ならば戦闘に参加するだけの能力がある。

 それをマスターとして、今までの弾丸や魔法と同じように能力を把握しようと決めた。


「装着、と、命じてください」

「うん? とりあえず……装着」


 様子をうかがうようなおっかなびっくりな言い方になってしまった。

 直後、レイアの体はドロドロに溶けた。

 まるで映画に出てくる液体金属ロボットのように溶けて、俺を乗っ取るように絡みついてきた。


 一瞬だけ驚いたが、そのままにした。

 害意はないってはっきり分かったからだ。


 レイアは俺の体に絡みついたあと、プロテクターや手甲といった、俺が普段しているものになった。

 まったく別ものだったのが変形して防具になった。色合いがちょっと違うが。

 昔マンガで見たような感じのヤツだ。


「なるほど、こうなるのか」

「基本防御力があがります」


 腕をぐるぐるして、足首もぐるぐるした。

 元のプロテクターと同じものだから、ほとんど違和感はない。


 目の前にゾンビデーモンが生まれた。

 俺は拳を握り締めて、レイアの手甲をつけた右腕で殴った。

 一撃でゾンビデーモンを吹っ飛ばし、瞬殺した。


 ドロップはなかった。

 横から別のゾンビデーモンが来たから、今度は通常弾を頭に連射して撃ち倒した。こっちは普通に鉄塊をドロップした。


「なるほどなあ、これで殴ったらドロップはお前のもの扱いか」

「はい。成功したら誰でもドロップAになる、という計画です」


 計画の意味は分かった、本当に成功したらかなりすごい事になる。

 最終的に行き着くところも予想できる。

 こんな風に人工生命体で、変形するとかじゃなくて純粋に。


「ドロップAの武器」


 を、作れるはずだ。

 もちろん成功すればだが。


 俺はその事を考えた。

 研究する事は悪いことじゃない、行き着くさきは生産の最大効率化があるから、むしろ産業革命くらいの変革が起きる。


 それはいい、いいけど。

 こうして生命体を作り出して、失敗したからってこんな処分のしかたは納得出来ない。

 なんとか(、、、、)するべきか。


 そんな事を考えているとまたゾンビデーモンが来た。

 リロードして倒そう……ってなった時にそれ(、、)に気づいた。


 リロードしている。連射で打ち切った通常弾がフルに装てんされていた。


「いつのまに」

「私がやりました」

「レイアが?」

「マスターが考え事をしている間に。いけませんでしたか」

「いけなくない。むしろたすか……る?」

「どうしましたかマスター」


 俺の頭の中にあることがひらめいた。

 それはリボルバー――ライフリング銃よりもはるか前の時代のやり方。

 だが、つかえそうなやり方だった。


     ☆


 ダンジョンを出て、サメチレンの野外に戻ってきた。

 人気が無いことを確認して、離れたところに市場で調達したマグロをおく。


 本当ならもう一頭欲しかったけど、丸ごと一頭はなかったから、もう一つは今度調達する事にした。


 少し待って、マグロがゴリラに孵った瞬間、リペティションで倒した。

 ゴリラは銃をドロップした。


 そのまま回復弾を自分に撃ち込んだ。

 リペティションと、レイアのマスターになった事で大分MPが消費されてたからだ。


「ドロップ……? マスターこれは?」

「他人には黙っとけよ。俺のドロップはSなんだ。Sだから何でもドロップする、それがハグレモノであっても」

「分かりました。誰にも言いません」


 レイアはそうこたえたが、本当に理解したのか怪しい。

 理解よりも、「マスターの命令」に反応したように聞こえるからだ。


 まあ、それはそれでいい。問題はない。


 リペティションでドロップさせた三丁めの拳銃を拾って。


「これを持ってろ」

「わかりました」


 応じるレイア。

 プロテクターの一部が変形してアームになって、拳銃をもった。

 なるほどそれでリロードしたのか。


「やるぞ。やり方はさっき教えた通りだ」

「はい」


 俺は銃を構えて――通常弾を連射した。

 誰もいないところに向かってとにかく討つ。

 装てんした弾を一瞬で打ち切ると、銃を手放して近くに着けていた次の銃を取った。


 新しい銃に通常弾が込められていた。それを連射して打ち切ると銃を手放して次の銃――最初の銃を受け取る。

 リロードされていた、また連射。


 俺が連射してる間にレイアが装てんをする、打ち切ったら装てんした銃を使ってすぐに次の連射。


 装てんにかかった時間をさっ引いて、純粋に速射力が倍近くになった!


 信長の三段撃ちってのがある。最近は撃つ人は交代してなくて、装てんした火縄銃を撃つのがうまい人に渡して連射させるという説が出ている。

 それと同じ事だ。


 一通り打ち終わって、銃を下ろす。


「いいぞレイア」

「え?」

「すごい役に立つ。これからもその調子でフォローしてくれ」

「分かりました。……ありがとうございます、マスター」


 装てんだけじゃない、もっと他に色々出来るはずだ。

 純粋に手が増えた様なものだ、なら出来る事は他にもっともっとある。


 何ができる、何をやれる?

 それを考えた。レイアをもっと活かせる方法をかんがえた。


 新しい力を手に入れた瞬間の、これを考えるのが一番楽しい。


「おっと、考え込んでしまった。とりあえずレイア、元に戻れ」

「はい」


 レイアは命令通り、元の人の姿に戻った。

 しかし初めてで慣れていないからか、戻る過程で服とかに引っかかって、銃弾とかアイテムとかをばらまいてしまった。


「すみませんマスター」

「気にするな」


 人型に戻ったレイアと一緒に拾う。

 通常弾に火炎弾といった弾丸。

 これも実はドロップアイテムである紙幣や硬貨。

 そしてスライムの涙を始めとするアイテムの数々。


「あれ?」


 ふと、アイテムの中にあるものを見つけた。

 サタナキアのイヤリング。


 今日手に入れた、ダンジョンマスターのアイテムだ。

 能力は……女の能力を無効化すること。


「……」

「マスター?」

「……レイア、これをつけてみろ」

「私は人工生命体、おしゃれは必要ありません」

「そうじゃない。いやそんな事もなくて多分似合うけど。今はそうじゃない。とにかくつけてみろ」

「分かりました。マスターの命令なら」


 レイアは言われた通り、サタナキアのイヤリングをつけた。


 イヤリングをつけた途端。


「やっぱり」

「どうしましたかマスター」

「MP消費が消えてる」

「……え?」


 レイアが驚く、珍しく表情が大きく変化した。

 予想通りだった。

 サタナキアのイヤリングは女の能力を抑制する、それはいい能力も、悪い能力も関係なく抑制するものだった。

 マスターのMPを徐々に減らすという能力――能力とは呼べないようなものも抑制した。

 さっきまですこしずつ、砂時計の砂が落ちるような感じで減っていくMPが、今はまったく減っていなかった。


「他の能力はどうだろ、変身しろレイア」

「……はい」


 命令された通り、彼女はまたプロテクターに変身した。

 硬貨からハグレモノを孵して、手甲で殴った。

 するとドロップアップのポーションが現われた。


 手甲はレイアのドロップFじゃなくて、俺のドロップSが適用された。

 イヤリングが効果を発揮した。


「装てんは出来るか?」

「はい、できます」

「だろうな。こっちは能力じゃなくて『動き』だからな。それが出来ないんじゃイヤリングをつけた瞬間動く事すら出来なくなる」


 レイアのデメリット、失敗作と呼ばれた原因は全てサタナキアのイヤリングに消された。

 今のレイアは俺に取って、デメリットなしで腕が増えた。そんな存在だ。


「問題は全部解決したな。これから宜しくなレイア」

「……はい。マスターに一生ついていきます」


 彼女はほんの少しだけ高いテンションで言った。


 この「一生ついていく」という言葉の意味を俺はすぐに理解できず。

 よくある「マスターに絶対服従」もイヤリングに無効化されていて、その上で自分の意思で一生ついていく。


 ……という意味を、俺は、後になってから指摘されてようやく気づいたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 消費MPはエネルギーだろ。それを取れなくしたら餓死するぞ・・・
[気になる点] >直後、レイアの体はドロドロに溶けた。 >まるで映画に出てくる液体金属ロボットのように溶けて、俺を乗っ取るように絡みついてきた。 グロい。
[一言] なんて名前だよw
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