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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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181.賠償金

 クロムダンジョンの入り口。
 それまで道を完全に塞いでた鉄の延べ棒を消滅弾で消し飛ばして、道を作って外に出た。
 そこに案の定(、、、)たくさんの冒険者が集まっていた。

 俺がこうして道を塞いでる間にダンジョンに入れなかった人たちだ。
 彼らの表情もこれまた予想通り、怒りと不快さがほとんどだ。

 さて、ここは――。

「おう、出てきたか。まってたぜえ」

 横からニコラスが肩を組んできた。
 ほとんど飛びつきながらの肩組みで、まるで長年の友人のような振る舞いだ。
 そう来ると予想してなくて油断してた俺は軽くよろけた。

「ニコラス」
「中にいて暇だったか? 暇だったよなあ。今から俺とやり合おうぜ」
「いや別にひまとかは――」
「そんなつれねえ事言うなよ、丸一日中にいて暇じゃなかったなんてわけねえだろ? なっ、ちょっとだけ、ちょみっとだけでいいから」

 肩を組みながら、片手で拝むポーズをしてきた。
 そんなにやりたいのかよ、と思っていたところに、今度はセルが目の前にやってきた。

「その手を離せ、サトウ様に失礼であろう」
「ああん? なんだてめえは?」
「その人はシクロの――」
「サトウ様の第一信者である。名はセル・ステムだ」
「えええええ!? 信者? 信者なんで?」

 びっくりするあまり変な声が出た。
 もっと別の紹介があるだろうが。
 俺が言おうとしたシクロダンジョン協会長とか、そもそも自分の出自とか。
 そんなのを全部すっ飛ばして、セルは一番あれな名乗りをした。

「信者だぁ?」
「その通り、これをみろ」

 セルは懐からフィギュアを取り出した。
 俺が戦闘してる格好のフィギュアだ。

「なるほど、信者ってのはまんざら嘘でもねえようだな。って事はおめえ、俺とこいつの喧嘩を邪魔する気か」
「無論だ。サトウ様に無用な戦いをさせられない。それを強いるものが誰であろうと排除する」
「上等だ。まずはおめえから――」
「待った待った、こんなところで始めるとかなし」

 一触即発のニコラスとセルの間に割り込んだ。
 これからやる事もあるのに、ここで始められたら困る。
 せめて他のところでやってくれと間に割って入ったのだが。

「あっ」

 勢い余ってセルにぶつかった。。
 その勢いで、彼の懐から別のフィギュアが落ちた。

 またまた俺だ、しかしそれは何かをポケットにいれようとして、ポケットが一杯になって溢れている俺の姿だ。

「なんでそれ(、、)が出来てるんだよ!」

 セルは慌ててそのフィギュアをひったくって懐にしまい直した。
 本当、何なんだこの人は。

「なんだ、いまのがどうしたってんだ」

 一方のニコラスはよく分かってないって顔をする。
 もちろんだ、あのフィギュアの意味を分かられても困る。
 そんなストーカー、セル一人で十分だ。

 とりあえず諍いはおさまったようだ、俺は気を取り直して、二人のそばを離れて、冒険者達の元に向かった。
 俺が一階を占拠して、ダンジョンに入れなくした冒険者達。
 迷惑をかけた冒険者達。

 彼らの前に立って、俺は、ポケットの中に手を入れた。
 何人かビクッとした反射的に身構えたが、俺は構わずポケットの中からものを取りだして、そこに並べた。
 延べ棒である、ただし鉄ではない。

 銅やアルミといった、価値のある延べ棒だ。
 それを次々にポケットから取り出して並べる、積み上げる。

 最初は警戒していた冒険者達だったが、次第にその警戒を解いて、俺の行動を見守った。

 俺は全部取り出した。
 フィギュアが捕らえた一瞬――ポケットいっぱいになったドロップ品を全部取り出した。

 一階が完全に塞がった後、下の階に降りて狩ってきたものだった。
 これまで積み上げてきた戦闘技術と二丁拳銃、そして究極周回魔法リペティションで狩ってきたドロップ品。

 文字通り、山積みの金属が洞窟の前に現われた。

 それを見て訝しむ冒険者達に……頭を下げた。

「申し訳なかった!」
「サトウ様!?」

 後ろでセルが悲鳴に似たような声を上げたが、それは無視した。

「俺のわがままでダンジョンを占拠して、迷惑をかけてしまって申し訳なかった! お詫びにもならないと思うけど、これを受け取って欲しい」
「サトウ様! サトウ様がそんなことをする必要はない。悪いのはあの男だ」
「それでも俺が迷惑をかけたという事実は変わらない」

 頭を下げたまま横目でセルに言うと、セルはうっとなってわずかにのけぞった。
 俺は改めて冒険者達に向かって。

「これを迷惑料として受け取って欲しい」

 と、いった。

「「「……」」」

 沈黙が降りる、息が詰まる時間が流れる。
 これで許してもらえるとは思ってないが、それでも物理的な賠償だけでも。

 そう思って、ドロップ品をここに並べた。

 すると。

「おーいカトル、お前から持ってけ」
「え?」

 顔を上げる、ベテラン冒険者らしき男がなにやらしきりだした。

「お前自転車操業でやってるだろ。早く必要な分をもってけ」
「あ、ああ。助かる」

 線の細い、気弱そうな男は自分の魔法カートに銅の延べ棒を積み込んだ。

「オリファーとサイもだ。かみさんとおっかさんが病気なんだろ。早く換金して薬買ってこい」
「わかった」
「恩に着る」

 その冒険者の仕切りで、ドロップ品の山が仕分けられていく。
 ちょっとホッとした。

 そして分配のスキマを見て、男に話しかけた。

「ありがとう」
「気にするな。お前さんがこんなことをする必要はなかったんだ」
「いやしかし――」
「といっても気が収まらないんだろ。だったら受け取ってやる。これでチャラだ」
「……ありがとう」
「で、だ」

 男はこっちを向いた。
 体ごと振り向いて、正面からまっすぐ俺を見た。

「ありがとう」
「えっ?」

 男は軽く会釈するレベルで頭を下げた。
 それを見た他の冒険者達も手を止めて、同じような表情で俺を見た。

「アレを引きずり下ろしてくれて助かった。アイツのせいでいろんなヤツが泣かされてる。だれもどうにかしなきゃって思ってたんだが、なかなか機会が無くてな」
「密告者は多かった。むしろ選別に困ったくらいだ」

 セルは背後から補足するようにいった。

「きっかけを作ってくれてありがとう」
「「「ありがとう」」」

 揃った冒険者の声、お礼のことば。
 それはちょっとした迫力で、思わず戸惑ってしまった。

 何か返事をしなきゃ、と思っていると。

「よーし終わったな? 終わったよな。って事で今から喧嘩だ」

 ニコラスは後ろから肩を組んできた、また喧嘩といってきた。

「ちょっとまって今それどころじゃない」
「一日中中にいて暇だったろ? 退屈だったろ? だったら喧嘩してスカッとしようぜえ」
「話聞いてた!? 俺は休んでたんじゃなくて途中から全階層で狩りを――」
「喧嘩しようぜええ」

 肩を組んだまま、俺を引きずっていこうとするニコラス。
 空気を読まない男に、俺はずるずると引きずられていったのだった。

 ちなみにニコラスは人気の無いところでぼっこぼこにしてやった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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