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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第一章

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17.亮太ブランド

 ニホニウムダンジョン。
 テルルの地下四階、初攻略する階層のために、冷凍弾を取るためにやってきた。
 何があるかわからないから、準備しておくに越したことはない。

「あれ?」

 思わず声がでた。
 ドロップしないことが広く知れ渡って、毎日閑古鳥のニホニウムだったが今日は人がいた。

 やたらと騒がしくて、地下一階に足を踏み入れるとすぐ騒がしい原因の集団と出くわした

 不思議な一団だ。
 男が五人に、女が一人。

 男は色々指示を出してる中年の現場監督っぽいのが一人と、他の四人は下っ端の使いっ走りっぽい。
 一方の女は若く――というかちょっと幼い。
 ふわふわした感じのお姫様で、それが真っ白な鎧で身を包んでいる。

 腰に獲物のロングソードがあるけど、それをまともに振れるのかも怪しいくらいの細腕だ。

「うん? なんだあんたは」

 現場監督っぽい男がおれを見つけて、聞いてきた。

「はあ、おれはまあ毎日ここで狩りをしてる者なんだけど」
「ここで狩り? 物好きだな」
「そっちこそこんなところで何を? 物好きって言うからには、ここが何もドロップしないことが分かってるんだろ?」
「だからきたんだ」

 男はニヤリと口の端を持ち上げた。
 だから来た? どういう事なんだろう。

 不思議に思ったが、すぐに分かった。

 スケルトンが現われた。
 まずは使いっ走りの四人がスケルトンに襲いかかった。
 四人も必要な強さなのか? って思っていたら、四人はあきらかに倒すんじゃなくて、念入りに手加減して、スケルトンを弱らせている。

 やがてスケルトンがぼろぼろになって、ほとんど動けなくなって。
 少女がようやく動き出した。
 のそのそと、見た目通りの非力さでロングソードを振るって、スケルトンに一撃を与えた。
 スケルトンは倒れて、動けなくなった。

 なるほど男達が弱らせて最後のトドメを少女にやらせる。
 ゲームとかでたまに見る光景。強い人間がモンスターを弱らせて、トドメを弱い人間にやらせて経験値をあたえる。
 ある意味おれがエミリーにしたのと同じ事か。

 と思ってたらそうじゃなかったみたいだ。

 スケルトンが倒れたあと、男達は慌てて動き出した。
 そのスケルトンを箱に詰めた。
 やたらと作りがしっかりしてる、何かを密封保存するような箱。
 そこにスケルトンを入れて、しっかり封をする。

 そして、ポン、という音が聞こえた。
 モンスターが消えてドロップする時の音――ニホニウムだと何もドロップしないけど、同じ音はする。

 箱の中で、スケルトンが消えた。

「よし、いっちょ上がりだ」
「あの、今のは?」
「空気箱だ」
「空気箱?」
「ここのモンスターは空気しかドロップしないのは知ってるな?」
「え? ああそういうことになるのか」

 おれの感覚だと何もドロップしないだったが、そういえばこの世界のモンスターは何もドロップしないときは水と空気をドロップするってエミリーが言ってた。
 ちょっとした認識の違いだ。

「このニホニウムってところは水さえも出ない、空気しかドロップしないんだ」
「なるほど」
「で、これがマーガレット姫謹製の空気箱ってことさ。姫が討伐したモンスターの空気。これがうちの主力商品さ」
「空気!? そんなの売れるのか!?」

「売れるさあ、姫が作った空気。それだけで売れるものなのだよ」
「……」

 おれは唖然とした。
 なんというか、ディープ過ぎる世界だった。

     ☆

 ニホニウム地下一階で冷凍弾を一発仕入れてから、テルルの地下四階に来た。
 三階のコクロスライムの巣窟を通るから、エミリーはおいてきて、自分一人でやってきた。

 さて、バッドスライムというのはなんだろうか。
 すぐにわかった。

 パタパタと羽根の音をさせてやってきたのは、紺色のボディにコウモリの様な羽根、ちょっと悪そうな顔に鋭い八重歯。
 バッドスライムの名前通りに、コウモリ要素のはいったスライムだ。

 そいつが飛んでおそってきて、体当たりかと思いきや、口を大きくあけて鋭い歯を剥き出しにしてる。
 噛むのか、吸血するのか。
 どっちなのか分からないけど、やられたら気持ち悪そうなので避けた。

 よけて、バッドスライムの勢いが止まったところに銃を撃った。

 ヘッドショットなのかボディショットなのか分からないが、とにかく中心に命中した。
 スライムは地面に落ちて、ポン、と消えた。
 出てきたのはタケノコ、ずしりとした重量感のある、瑞々しいタケノコだった。
 エリックに依頼されたこの地下四階のドロップ品。

 それを拾って、さらにダンジョンを回って。
 ある程度まとまった数を狩ってからダンジョンを出た。

     ☆

「ふうむ、これがあなたのタケノコ」

 昨日の酒場にやってきた。
 まだ昼間だから、客はいなくて、店の人がメニューの札を変える開店前の準備をしていた。
 日替わりのビールが十種類中二種類変わってるのがちょっと気になって、今夜も通おうかな、なんて密かにおもった。

 そんな中、エリックはおれが持ってきたタケノコを見つめた。
 見つめたり、匂いを嗅いだりした。

「こ、これは……」
「どうしたんですか?」
「失礼」

 そう断ってから、エリックは懐からナイフを取り出した。
 小ぶりだが手入れが行き届いてる、鋭そうないいナイフだ。
 いいのはナイフだけじなかった、エリックの腕もすごくよかった。

 かれはナイフを使って器用にタケノコの皮を剥き、身をスライスする。
 まるで超一流の料理人の様な、ほれぼれする腕前だ。
 恰幅のいい紳士で、グルメといっても料理は人任せだろうなというイメージだったから、ちょっと意外だった。

 なんと、彼はスライスしたタケノコをそのまま食べた。
 生のまま食べたのだ!

 びっくりしていたら、エリックはうっとりし出した。

「おお……このみずみずしさ、そして甘さ。生であるのにもかかわらずえぐみが一切ない。これほどのタケノコを食べたのははじめてだ」

 今度はグルメと名乗ったイメージそのままに、やたらと大げさな表現でタケノコの美味さをほめだした。
 どうやら、気に入ってもらえたようだ。

     ☆

 開店した直後の酒場・ビラディエーチ。
 エミリーと合流して、二日連続の仕事後の一杯を楽しんだ。

「それじゃ満足してもらえたですね」
「ああ。報酬が20000ピロで、ちょっと肩すかしだったけど」
「タケノコいくつだったですか?」
「十個だ。それで20000だから、まあ結構した方だけど」

 タケノコ一個で2000ピロ。高級デパートの食材っぽい金額にはなったけど、正直エリックの身なりとかからして、もうちょっと期待したんだけどな。
 まあ、損をしたって訳でもなし、いっか。

「そういえば、今日空気箱っていうのをみたんだ」
「空気箱ってなんですか?」
「空気の箱、いやブランド品なのかなあれって」

 おれはエミリーにニホニウムでみた出来事を話しながら、一緒にビールを楽しんだ。
 今日の日替わりビールはこの店が契約してる中で一番遠くにあるベリリウムというダンジョンの地下30階でドロップするもので、ビターなチョコの風味がする地ビールのようなものだ。

 それが結構美味しくて、おかわりしようと手をあげて店員を呼ぼうとしたら、入り口からエルザが入って来るのがみえた。
 彼女はきょろきょろと、何かを探すかのように店の中を見回している。

「あっ、リョータさん!」

 探し人はおれのようだった。
 彼女は小走りで一直線におれたちのテーブルにやってきた。

「どうしたんだ」
「話は聞きました。是非うちと契約して下さい!」
「待て待て、いきなりどうしたんだ、契約ってなに?」
「ですからリョータタケノコを是非うちで!」
「リョータタケノコ?」

 何のこっちゃ。
 タケノコっていえばエリックがらみだが……。

「エリック・メイシーさんが認めたタケノコだって今シクロ中で噂になってます」
「噂になるの!?」
「是非リョータさんのタケノコをうちに。そしてリョータさんの名前を使ってもいいっていう契約を。もちろん条件面で損はさせません、お願いします」

 あまりにも一生懸命なエルザに気圧されて、おれはよく分からないまま頷き、話を受け入れた。

 こうして、エリックのお墨付きをえて。
 リョータ・タケノコっていうブランドのタケノコができて、おれは更に安定した高収入を得ることになったのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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