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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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159.ジョーカーにお願い

 テルルのダンジョン、地下4階。
 バッドスライムからドロップしたタケノコを魔法カートにいれて、屋敷に転送する。
 これで今日の稼ぎが100万ピロを越えた。

 最近は特に何かないかぎり、稼ぎを100万で切り上げるようにしている。
 本気を出せばもっと稼げるけど、100万ピロというのがきりが良いからそこで切り上げるようにしてる。

「うーん、ちょっと足りないか?」

 暗算での計算だからちょっとあやふやだ、きりが良いところで切り上げるやり方でもし99万ピロとかだったらちょっとせつなくなってしまう。

 念の為にもうちょっと稼いどこう、そう思って銃に弾を込めて、次のモンスターを探す事にした。

 ふと、視線の先にもめてる一団を見かけた。
 いやはっきりともめてる訳じゃない、ただ一人が何かをいってるのに対し、他の数人が不満そうな顔をしているのだ。

「残りは10万円分、急がなくてもいいぞ、明日の朝までにドロップさせればいいから」
「「「……」」」
「それじゃ俺は先に上がるから」

 リーダーらしき男がそう言って手をシュタとあげて、にこやかな顔で立ち去ろうとした。

 ……。
 そんなの、残業しろってことじゃないか。
 急がなくてもいい、でも明日の朝までにほしい。
 残業しろ、仕事を持ち帰って家でやれ。

 むかしさんざんやられた手口だ。

 いやな記憶を触発されて、ちょっと協力しようか――と思って近づいていくと。

「げっ! リョータ・サトウ」

 立ち去ろうとした男が俺の顔を見てぎょっとした。
 俺のことを知ってるのか、ならちょうどいい。
 一言いってやろう、そう思って口を開きかけると。

「み、みんな! 大変だけど一緒にがんばろう」

 振り向き、そそくさと仲間達にいった。
 今更何を言い出すんだ? って感じの仲間達だが、男は無理矢理にでも盛り上げるようなテンションでそばに生まれたバッドスライムを倒した。

「さあ、一緒に頑張ろう」

 と更に盛り上げようとした。
 かえろうとした男が率先したやり出したから、他の仲間達も渋々と後に続いた。

 口を挟むタイミングを逃した俺はしばらくそれを見てから家に帰った。

     ☆

 翌日、シクロダンジョン協会。
 協会長――セルに呼び出された俺は会長室にいた。

「……俺の記憶が正しければ」

 向かい合ってすわっているセルじゃなく、会長室の中を見回した。

「ここは昨日まで普通のオフィスみたいな内装だったはずだ」

 今はどこぞの王宮のようなきらびやかな内装に変わっている。

「余が命じて改装させた。色々と必要なのでな」
「一晩でここまでやったのか」

 軽くリフォームの域を超えてる。気のせいか部屋の広さも倍近くなっているし……。

「色々と必要なのでな」
「そうなのか」

 金の力でなんとかしたのか? それともモンスタードロップか?
 詳細は分からないけどすごいなと思った。

「でも意外だ」
「何がだ?」
「てっきり俺のフィギュアを飾ってるものだと思ってたけど、そうでもないんだな」
「……」

 セルは黙って目をそらした。
 っておい、なんでそこで目をそらす。

「そ、それよりもよく来てくれたサトウ様。折り入ってサトウ様に頼みたいことがあるのだ」

 思いっきり話をそらされた。
 飾ってるのか……いやまあいいけど。

「頼みってなんだ?」
「うむ、二つあるのだが」

 セルの顔が変わった。
 真面目でキリッとしている顔に。

「暇な時でよいのだが、サトウ様にはシクロにある全階層に顔をだしてもらいたい。顔を出すだけでよいのだ」
「顔をだすだけ? なんで?」

 セルの要請の意味が分からなかった。
 顔を出すだけって、ダンジョンに顔を出すだけってなんか意味があるのか?

「近頃冒険者の間では――特にリーダー級の間ではこうささやかれている。『リョータ・サトウに関わらせるな』と」
「俺に関わらせるな? なんかまずいことをしたか?」

 セルは笑った。
 とんでもないとばかりの顔で笑った。

「いわれ出したのはクリフォードの一件の時からだ」
「クリフォード? 麦か」

 セルは頷いた。

「あの一件で、クリフォードの収入ははっきりと下がった。あげようとして事をおこしたが、サトウ様の介入を招いて逆に収入が下がった」
「ああ」
「そのほかにも、サトウ様が手助けしたせいで部下が離反を起こしたという事例もいくつか」
「あれは――」
「分かっている。サトウ様の事は全て分かっている」

 反論しようとしたが、セルは真顔でそう言った。
 ストーカーの目じゃない、理解者のそれに近い目だ。

「あの者達は全員自業自得だ、そして今サトウ様に関わらせるなといってる連中も、また自業自得になるような連中ばかりだ」

 ブラック企業もどきなのがそんなにいるのか。

「昨晩の事、サトウ様が通りかかっただけで状況が変わった」
「……ストーカーだな」

 ストーカーだけど、真面目な話だった。

「あのように、サトウ様が顔を出すだけで理不尽がかなり解消される、困っている人間がとりあえず困らなくなる」
「なるほど」

 なんで昨日あんな事になったのかって不思議だったけど、そういうことだったのか。

「だから様々な階層に顔を出してほしい、それだけで救われる人間がいる」

 セルはそう言って、まっすぐ俺を見つめた。

「サトウ様にしかできないことだ」
「わかった。適当に顔を出すことにする」

 要請を受けることにした。
 新しい階層に行くのに慎重で、少しずつ行動範囲を広げようとしてたんだけど、そういうことなら顔を出すだけでもだそう。

「礼を申す。さすがはサトウ様だ」
「それより二つあるっていってたけど、もう一つは?」
「うむ、アウルムの事だ」
「アウルムがどうしたんだ?」
「冒険者狩りが近頃増えたという」
「冒険者狩り?」

 それは、初めて聞く単語。
 だけどわかりやすく、どうにかしないといけないって分かる単語だ。

「アウルムの様なドロップ品の体積に比して高価になるダンジョンにおきやすいのだ。モンスターを倒してドロップさせるのではなく、ドロップを集めた冒険者を狙い、そのドロップ品をまとめてかっさらう」
「強盗だな」
「うむ。そして強盗以上にゆゆしき問題がある。冒険者狩りでたまに死者がでる」
「そりゃ……出るだろうな。なんかの弾みで」

 無理矢理奪うわけだから。

「そして冒険者は武装している、ダンジョンでの安定を図るためにレアアイテムで固めるものが大半だ、つまり――」
「……冒険者の死体からレアモンスターのハグレモノが発生する」

 いうと、セルは頷いた。
 重々しく頷いた。

「それを止めてほしい。これもサトウ様にしか頼めない事なのだ」
「俺にしか?」
「通常の冒険者は安定周回をする、それはつまり自身が得意とする階層に特化するということだ。対人が苦手な冒険者が9割9分をしめる」
「ああ……」

 MMOで対モンスターと対人がまったくの別物みたいな話か。

「能力が高く、あらゆる状況に対処出来るように日夜努力を怠らないサトウ様にしか頼めぬのだ」
「だからストーカーはやめてくれ」

 また苦笑いする。なんでダンジョンでやってるそんな事まで分かるんだよ。
 苦笑いはしたが、言われた事自体放っておけないことだった。

「分かった、なんとかしてくる」

 セルに宣言すると、彼は嬉しそうな、ほっとした様な顔をした。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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