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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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157.ストーカー貴族

「いやはや、何から説明したらいいのやら」

 呼び出したクリントは眉間にしわを寄せて、思いっきり苦笑いをしていた。
 その横でセルが平然として、エミリーの事をほめている。

「失礼、これは何処の茶葉をつかっているのだ? 余の生涯でトップ3に入る美味だが」
「街のお茶屋さんでかったお茶です。普通のお茶なのです」
「なんと! それでこの味……むむむ、さすがサトウ様のお仲間と言ったところか」

 エミリーがいれたお茶に大満足して、そのエミリーを恐縮させているセル。
 それをひとまず置いといて、俺はクリントと向き直った。

「ステム様の事はご存じですか?」
「いや」
「これの事は?」

 クリントは懐から一枚の紙幣を取り出した。
 この世界の通貨、ピロ。その一番額面の大きい一万ピロ紙幣だ。

「お金だろそれ、特殊なお金とかか?」
「いいえ、普通の一万ピロです。ステム様のご実家はこれを生産していらっしゃるのです」
「……へ?」

 一瞬何を言ってるのかわからなくて間抜けな声をだした。
 この世界の全てはダンジョンのモンスターがドロップしている。前にお金さえもダンジョンドロップって聞いた時はびっくり半分納得半分だったって記憶がある。

 今回のはそれ以上の驚きだった。
 ……驚いたのは、どこかでクリントのいってる事をもう理解しているからだ、とも言える。

「それを生産……金をって事か?」
「その通りでございます。紙幣をドロップするダンジョンはステム家に管理されているのでございます」
「大久保長安かよ……」

 オイルマネーどころの騒ぎじゃなかった、いわばマネーマネー(、、、、、、)だ。
 その話が本当なら、目の前の男の実家は実質この世界を掌握してるとんでもないところだ。

「その通りです」

 考えてる事が顔に出たのか、クリントは微苦笑しつつ更に言った。

「そういう方に協会長の席を譲れって言われれば断れません」
「そりゃそうだよなあ……」

 こっちが真面目な話をしている横で、セルとエミリーが違う話で盛り上がっていた。
 セルは懐から次々と人形を取り出した。

 手乗りサイズの人形だ。
 それをテーブルの上に置いて、エミリーに見せている。

「これが徒手戦闘のサトウ様、こっちが遠距離狙撃のサトウ様、そしてこれがダンジョンマスター級に本気の本気をだすサトウ様」
「すごいです、そっくりなのです!」
「なんでそんなもの作ってるんだよ!」

 盛大に突っ込んだ。
 手乗りサイズの人形は全部おれだった。
 ぱっと見アキハバラの店にあるような人形――つまりフィギュアだが、クオリティがびっくりする高くて、俺が魔法で小さくなったといっても通るくらいのハイクオリティだ。

「それはもちろんサトウ様を尊敬しているからだ。これがセレンの時のサトウ様、これがアウルムの時のサトウ様。これがマーガレット嬢に力を貸したときのサトウ様――」
「ストーカーだー!」

 ぞわわわわ、と背筋を一気に何かが駆け上っていった。
 近接戦だの狙撃仕様だのはまだいいが、特定のシチュエーションのまで作ってるのは一線を音速で飛び越えてる。

「待たれよ、余はストーカーなどではない。純粋にサトウ様の行為に感銘をうけただけだ」
「……」

 俺はジト目でセルを見た。ストーカーはみんなそういう。

「本当だ。……これらは全て、サトウ様が困っている人を助けた時の光景だ」
「むぅ」

 真顔で語るセル、ふと、彼の「困る者がいて助ける力をもっている者がいた」という台詞を思い出した。

「余もそうあらねばと、その時のサトウ様の姿をこうして形にしているだけだ」
「……そっか」

 そうかもしれないな。
 若干行きすぎてるけど、そうかもしれないな。

「ヨーダさんが人助けってことは、ケルベロスちゃんのもあるです?」
「無論だ、たしかこれが――あっ」

 新しいフィギュアを取りだそうとするセルの手から豆状の何かが地面におちた。
 フィギュアじゃない、宝石の様なものだ。

「スライムの涙なのです」

 一目でわかったエミリー、俺も分かった。
 前の収穫祭で俺たちが依頼に応えて出したのもあって、それで覚えているのだ。

「こ、これはちがうのだ」

 セルは慌ててそれをひったくって懐にしまい込んだ。
 ……。
 …………。

「まさかそれ――」
「違うのだ断じて収穫祭でサトウ様がだしたのをすり替えたわけではない」
「ストーカーだー!!」

 もう間違いない、こいつはストーカーだ。
 100%疑う余地のないストーカーだ。

 セルのストーカーが露見して、サロンはしばしの間、微妙な空気に包まれた。

 しばらくして、セルがゴホン、と咳払いをして、何事もなかったかのように切り出す。

「これからしばらくこの街でやっかいになる。協会長としてサトウ様にご助力を請うこともあるがよろしく頼む」
「あ、ああ」
「お礼と言ってはなんだがこの屋敷、そしてサトウ様が契約している物件が三つあったな。それらを全て買い取って差し上げ――」
「やめてくれ」

 セルの言葉を途中で止めた。

「むぅ? やめてくれ、とは?」
「あんたにそれをもらう理由はない」
「いや、これは」
「俺は困ってない」

 シンプルに、短く、セルの目を見つめて言いはなつ。
 何かをやって報酬でもらうならともかく、何かに困っていて助けてもらうならともなく。

 そのどっちでもないんなら、もらう理由はない。

 セルの言葉を借りて言い返すと、彼は苦い顔で引き下がった。

「そうだな、サトウ様の言うとおりだな」
「わるいな」
「しかし困った。余はせっかくこの街にきたのだ、少しでもサトウ様とつながりを持ちたい」
「……」

 その言葉に俺が困った。

「そうだ! 毎日サトウ様のドロップを届けてはくれまいか」
「ドロップ?」
「うむ。一緒に来た余の妹がグルメなのだ。ただの偏食家ともいうが……サトウ様がモンスターを倒してドロップさせたものなら満足するはずなのだ。相場の倍を出そう、だから毎日!」
「……ふむ」

 俺は考えた。あごに手を当てて考えた。

「そういう話なら……わかった」
「本当か!」

 提案を受け入れてもらって、大喜びするセル。

「やっぱりケルベロスそっくりなのです」

 エミリーがしみじみつぶやくが、困ったことに俺も同感で。
 ストーカーっぽいけど、それをとがめつらい複雑な気持ちになっていた。

     ☆

 リョータ邸を出たセルとクリントは、ステム家の馬車にのっていた。
 セルの向かいに座るクリントが微苦笑しながら言った。

「まさか、屋敷の事を断ってくるとは」
「だから尊敬に値する。サトウ様はやはりサトウ様なのだ」

 クリントは密かに驚いた。
 目の前にいるセルという男、この世界の金の源を握っている男は、本気でリョータの事を尊敬しているように見えたからだ。
 なんだかんだ言っても腹の中では……という話を屋敷から出た後にするつもりだった彼は予想を外され、大いに驚かされた。

 しかし、それはそれでいいとクリントは思った。
 セルの純粋な憧れの眼差しが彼を確信させる。

 リョータのおかげで、シクロはいざという時の、何よりも強大な後ろ盾を手に入れたということを。
 クリントは、確信したのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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