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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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154.尻拭い

 テルルダンジョン、地下六階。
 夜はカレー、ってエミリーが言ったから、転送部屋で直にやってきてジャガイモの調達をした。

 夜になってもかなりの数の冒険者が地下六階でモンスターを探す。
 少し歩くと、地面からちょうど生まれてくるのを目撃した。

 親子スライム。
 でっかいスライムが小さいスライムをさながらカルガモの親子の如く引き連れてるのが特徴のモンスターだ。
 「子」を倒して数に応じて、「親」を倒した時にドロップの数も増える特殊なやつだ。
 ちなみに「親子スライム」だが、親も子も含めて一つの個体だ。
 子は子って呼ばれているが、むしろ四肢か髪の毛か、そういう感じの部位に近い。

 六人分のカレー、「二日目のカレー」も含めて十個くらいあれば充分かな。
 そう思って銃を抜いたら、横から一人の男が先に親子スライムに殴りかかった。

「おいそれは俺の……」

 横殴りになるから声を出して制止しようとしたが、伸ばした手共々止まってしまった。
 親子スライムに向かって行く男がふらふらしていたからだ。ダンジョンの中で横顔だけでも分かるくらい顔色が悪い。

 三日徹夜した後の朝日を浴びたゾンビサラリーマンの様なふらつき方、当然モンスターにかなうはずもなかった。
 攻撃が外れ、カウンターをくらって吹っ飛ばされて、壁に背中をしたたかに打ち付けてしまう。
 そのまま糸か切れた人形のように崩れ落ちた。

 親子スライムは当然の如く追撃するが、今度はこっちが横から割って入る。
 通常弾を打ちつつ肉薄する。子スライムを十体くらい倒せたのを確認してから、フルスイングのボディブローを叩き込む。

 子を倒した数に応じて親は硬くなるが、十体分はコンクリート程度の硬さ止まりだったから一撃で倒すことができた。

     ☆

「う……ん」
「気がついたか」
「……ここは!?」

 ぼんやりしてたのが一気にハッとなって、起き上がってまわりをきょろきょろ見回す男。

「テルル地下六階。場所は移してない」
「おれは気を失ってたのか……? どれくらいの時間がたったんだ?」
「五分程度だな」
「くっ、そんなに……まだ間に合うか?」

 男は苦虫をかみつぶした顔で起き上がろうとした。
 しかし立ちくらみを起こして、片膝をついてしまう。

「ムリをするな。何日も寝てないんだろ。顔を見れば分かる」
「ムリをしないと間に合わないんだ」

 男は自分の体にむち打って起き上がろうとしたが、ふらつくことになっただけで上手くいかなった。
 そりゃそうだろ、そういう人間を俺はよく知ってる。
 もう何日もてつやしてるんだろう、つらさも反転したハイテンションも通り越して、肉体の本当の(、、、)限界が来ている。

 どうやっても動かない。
 しばらくもがいたあと、男は諦めた。
 そのままあぐらを組んで、がっくりと肩を落とした。

「だめか……」
「何があったんだ? もしよかったら話を聞くぞ?」
「……」

 男は俺を見て、ため息をついた後話し出した。

「俺はジョエルファミリーのレオン。実は一週間前に、ボスのジョエルが仕事を引き受けてきたんだ。内容は今日までにジャガイモをまとめて納品すること」
「ふむ」

 依頼を受けてその数を期限までに納品する。
 俺もイーナの実家にスイカとか、たまにグルメのエリックにタケノコを届けたりする。
 いわば受注生産、この世界でもそんなに珍しくない話だ。

「それがボスの手違いで、俺たちのキャパの十倍近い量を引き受けてきたんだ」
「十倍? それで無茶してるのか」

 俺はまわりを見る。よく見たらレオンの他にも顔色が悪いのがいる。
 何人かはまだやってるが、大半は壁に背をもたれ掛けてぐったりしている。

「ボスっぽいのは……あそこにいる女か」
「いや、ボスはいない」
「は?」

 びっくりしてレオンを凝視した。

「ボスは植物ドロップが低いから、シクロのダンジョンは俺たち担当だ」
「って、事は……」

 俺の目から言いたい事を読み取ったのか、レオンは苦笑いする。

「ボスの尻拭いさ。まったくやってらんねえよ、あんなボス。しょっちゅうこうやってミスするし、ミスしたくせに自分はセレンで悠々と肉を狩ってるんだ」

 レオンは盛大に愚痴った。
 上司の尻拭い、しかもその間上司は悠々自適と過ごしてれば愚痴の一つも出てくるってもんだ。
 なんていうか……それは……。

「なあ、後どれくらい必要なんだ?」
「え?」
「タイムリミットは? それまでに必要な量は?」
「それを聞いてどうするんだ?」
「いいから」

 説明する時間も惜しい、という俺の意図が伝わったのか、レオンは渋々ながらも答えてくれた。

「時間はほとんどない。量は……あと50万ピロ分だ」
「よし」

 俺はまわりを見回して、誰にも攻撃されていない親子スライムを見つけた。
 銃をかまえ、銃弾を込める。

「な、何をするつもりなんだ」
「俺に任せろ」

 訝しむレオンを置いて、親子スライムに突進する。
 子の群れの中に突っ込んでから、二丁拳銃で全方位乱射。
 通常弾をばらまき、子スライムを一掃する。
 そして限界まで硬くなった親スライム――前は消滅弾五発は必要だった親スライムに。

「リペティション」

 を打ち込んだ。
 親スライムは瞬殺されて、大量のジャガイモをドロップした。

「ここは任せた、全部拾っといてくれ。俺は次のをやってくる」
「あんた……もしかして……?」

 レオンの言葉に応じる時間も惜しい。
 俺はダンジョンの中を疾走して、親子スライムを見つけては乱射からリペティションのコンボでジャガイモを大量生産した。

 ノンストップの瞬殺を全速力で繰り返して、30分足らずで50万ピロ分のジャガイモを生産した。

     ☆

 シクロダンジョンの表、レオンの仲間達がジャガイモを運んでいくのを見送った。
 何人かは本当に体力の限界だったから、マシマシの無限回復弾で回復しといた。

 それを一緒に見送ったレオン。

「助かったよ。えっと……」
「リョータだ」
「あのリョータファミリーの!?」

 驚愕するレオン。しみじみとつぶやく。

「そうか……あんたの仲間はしあわせだな」
「それよりもあんたもそのボスから離れた方がいい。俺の経験上無茶ぶりを応じたから更に無茶ぶり度が上がる……確信犯だあれは」
「……」

 レオンは答えない。その表情からはうすうす気づいているってのが分かる。

「まあ、俺が言うことでもないんだろうけど。考えた方がいい」

 俺はそう言ってダンジョンに戻ろうとする。
 仲間達が待ってる、カレーもそろそろできる頃だ。
 六階まで降りて、転送部屋で帰ろうとした。

「あっ、待ってくれ」

 そんな俺をレオンが呼び止めて。

「とにかく助かった、ありがとう!」
「ああ」

 レオンに手を振って、俺はダンジョンに戻っていくのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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