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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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140.本命vs本命

 ビスマスのダンジョン地下六階、アリスの案内でカメレオンをリペティションで倒していく。

「リペティション!」

 試しに一回、カメレオンがまた透明に戻って、見えなくなった直後にリペティションをうった。
 カメレオンの動き自体は遅い、消えた瞬間ならまだそこ(、、)にいるはずだ。

 だから撃ってみたんだが。

「効かないね」
「効かないみたいだな。こうなると見えない時は透明じゃなくて無敵って思った方がいいな」

 リペティションは一回倒したモンスターを倒す魔法なのに、認識したカメレオンを倒せない。透明中は何があっても倒せないって思うしかない。

 最強クラスの魔法でも倒せないカメレオンの透明状態を無敵だと判断するしかない。

「たしかにやれる冒険者が少なくなってしまうな、これじゃ」
「うん」
「でも出る瞬間わかるよね」
「もっちろん!」

 アリスは自信たっぷりに親指を立てた。

「ならガンガンやろう、片っ端から生産して魔法カートで送るんだ」
「うん!」

 俺はアリスと一緒にビスマスの地下六階をぐるぐる回った。
 ビスマス結晶そのものの、多層で虹色の地面を歩きながら、見つけたカメレオンを片っ端からリペティションで倒して、麦にして魔法カートで送る。

 しばらくそうしてると、目の前に転移現象が起きた。
 屋敷から誰かが来るのか? と思ったら仲間全員が来た。

 エミリーとセレスト、そしてイヴの三人。

 ハグレモノだから来れないケルベロスと麦の受け取りがあるから離れられないエルザをのぞいて全員だ。

「お疲れ様なのです」
「すごく順調みたいね」
「どうしたんだみんな?」

 手を止めて聞くと、エミリーとセレストが同時にイヴをみた。
 うさぎのぬいぐるみを着ているうさ耳少女はいつも通りの寡黙な顔をしたままいった。

「こっちは気にしない。なにもおこらないならいい」
「どういう事だ?」
「私たちにも分からないのです」
「いった方がいい、その時になったら分かるから、としか聞かされてないのよ」

 困惑顔のエミリーとセレスト、どうやら彼女達も蚊帳の外みたいだ。
 俺はイヴを見た。

 イヴ・カルスリーダー。
 別名キリングラビットとも呼ばれているベテラン冒険者。
 何か思惑があるんだろう。

「分かった、好きにしてくれ」
「それでいいの?」

 セレストは眉をひそめた。

「俺は人質を取ってるからな、イヴには」
「人質なのです?」
「ドロップSのニンジンをとれるのは俺だけ」
「悔しい……でもガジガジ」

 イヴは冗談めかしたように言って、着ぐるみの中からニンジンを取りだして生でかじりだした。
 本当にニンジン大好きなんだなぁ。

 一方でエミリーとセレストは納得した。
 ドロップSから生産する俺のニンジンは他のと味が格別に違うらしく、イヴはほぼそれ目当てで仲間になってる様なものだ。
 それがなくなる――俺に不利益になるような事はしない、という理屈は理解そして納得出来るらしい。

 一方、アリスはにやにや顔で、肘で俺の脇腹をつっついて、俺だけに聞こえるように言った。

「このこの、素直じゃないねリョータは。普通にイヴちゃんの事を信頼してるってだけでいいのに」
「信頼してるならなおさらいっちゃだめだろ、何しろ『信頼』なんだから」
「ふむふむ? それもそっか」
「それにイヴはそっちの方が嬉しがるんだ。お前はニンジンしか愛せない女、とかいうと見た事ない様な顔で喜ぶぞ」
「へえ?」

 アリスは面白そうな顔をして、イヴに向かって行った。
 未だにニンジンをかじってるイヴに対して。

「イヴちゃんはニンジンしか愛せない女だよね」

 と俺がいった言葉をそのままリピートした。

 すると、虹色の洞窟が更に輝いたように見えた。

「心の友よ!」

 イヴがものすごい、未だかつてない程の輝いた笑顔を見せた。
 寡黙なイヴがキャラ崩壊を起こしてるくらいの笑顔だ。

「おお、すごい」

 感動するアリス。
 何も今試さなくていいのにと思ったが、イヴが喜んでるからいっか。

 アリスは俺のところに戻ってきた。

「すっごいね、リョータの言った通りだったよ」
「そうかな」
「うん! 仲間の事をすごく理解しててすごいよリョータ」

 そこまでほめられる様な事じゃないんだけどな。

 アリスにほめられて逆に恥ずかしくなった俺、そのままカメレオン狩りを再開した。
 アリスがレーダーになって、リペティションで瞬殺して、手が空いてるエミリーとセレストがイチゴ狩り感覚で麦を拾って魔法カートで送る。

 のんびりな時間が続くが、それは一瞬にして破られた。

 地下六階を回ってて階段を通りかかったとき、上の階から見知らぬ男達が降りてきた。

 にやにやしている者がいる、真顔でにらみつけてくる者がいる。
 数は10、共通しているのははっきりとした敵意をこっちに向けて来てることだ。

「おーおー、盛大にやってるなおい」
「悪いがここで打ち止めだ」
「恨むなら自分の事をうらめよ兄ちゃん。兄ちゃんがこんな事をやってるとおまんま食い上げなのがいっぱい出てくるんだ」

 口々にそういって、更に敵意を強める男達。

 俺たちは――特に後からやってきたエミリーとセレストは同時にイヴをみた。

「これなのです?」
「なるほど。リョータさんがこれを続けると困る人が出るのを読んでたのね」
「ごまんとある話」

 イヴは静かにうなずき、言った。
 なるほど、だからみんなを誘って来たのかイヴは。

 男達は一斉に襲いかかってきた。
 状況と事情を理解したエミリー、セレスト、イヴの三人が迎撃した。

 エミリーが真っ先にハンマーを振るって飛びかかり、イヴはトコトコと小走りで近づきながら必殺のチョップを放つ。
 セレストはゴミ処理から冒険者への転身で大分戦闘になれてきて、左手にバイコーンホーンで弾幕を張りつつ、右手でインフェルノを使った。

 10人を相手に、仲間の3人は一歩も引かず、それどころか圧倒してさえいた。

「ふっ」
「何がおかしいです?」

 いきなりシニカルに笑った男の一人をエミリーが訝しんだ。

「かかったな。俺たちの目的は全滅じゃない、何か出来るヤツを止める事よ」

 なんの事だ一体――と思ったらすぐに分かった。

 真上から殺気が襲ってきた。男達とは比較にならない程鋭い、無機質な殺気。
 殺すこと以外何も考えていないストレートな殺気だ。

「こっちが引きつけてる間に本丸をドカーン、よ。うかつだったな」
「そんなのは分かっていた」

 イヴが静かに言って、男は「なに!?」と驚いた。
 イヴだけじゃない、エミリーもセレストも動かず、驚かず。
 むしろうっすらと微笑んでさえいた。

 そうしてる内に殺気が迫り、俺はトン、と地面を軽く蹴って下がった。
 直後に突進した。速さSSで一瞬下がってまた突進、奇襲をしかけてきたヤツがからぶったのを懐に潜り込む。

 そのままボディブロー。力SSで思いっきり殴った。
 奇襲者の頭と足がくっつきそうになるくらい体が「く」の字に折れ曲がった。

 叩き込んだ一撃で相手は吹っ飛んで、ビスマスの虹色の壁の中に突っ込んだ。

「低レベルが狙われることは知ってる」
「はいです、むしろ一番強い相手をヨーダさんに任せたのです」
「リョータさんの方が私たちよりも圧倒的に強いものね」

 俺の仲間達は平然とそんな事を言い合いながら、陽動の連中を倒していった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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