2話:告白
真由美への告白…相当レベルの高いことだろうと思う。まあ俺は、無理だと思っている。
自分でいうのも良くないけど、この告白の成功確率は0パーセントじゃないかな。クラスのゴミみたいな俺がクラスの人気者に告白する。薄いね。でももう決めたんだよ。不登校になってニートになるんだよ。俺は。
最高のシナリオは真由美と一緒に不登校になるってことかな。絶対無理だろうけど。
放課後までの授業は珍しく集中して聞けた。最後の授業と考えるとなぜか深みがあるなと感じてしまう。どーでもいいけどね。
昼食では学食室で弁当を一人で貪り、自由時間では屋上へ行って、好きな歌い手さんの音楽を聞く。
昼からの授業も終わった。最後の授業は体育だった。
体育→クラスの人気者が歓声を謳歌する時間だと捉えている俺にとって、体育の時間は苦だった。
でも今日は違った、フォークダンスだった。しかも真由美とペアの、ね。
「真由美、よろしくね。」
「うん!よろしくね。エイジ」
フォークダンス→リア充共が青春を謳歌するものだと捉えていた俺。素晴らしいもんだな。
真由美とのフォークダンスはとても楽しい。たまに真由美が間違えて赤くなった可愛い顔を見られるし、真由美の手を握れるし、真由美の笑顔を見れるし。俺はなんとなく青春ってのを理解した。自己満足だが。
約30分の至福の時間は終わった。握りっぱなしだった手のひらは汗でびっしょり。
(これが真由美の汗…)そう感じて欲情しそうになった。
「エイジ、ありがと!…私いっぱい間違えちゃって…ごめんね」
「いやいや、こちらこそありがとう。俺だってなんかおかしいとこあったし…」
「…エイジ優しいね。気を使ってくれて嬉しいよ。」
「…そ、そんなことないよ。」
真由美の笑顔を見て、俺の顔は真っ赤に染まった。真由美はこれをどう見ただろうか。
なんにせよ素晴らしい時間をくれた体育にありがとうを言おう。………手はしばらく洗わない。
最後の学校が終わった。真由美を下駄箱にて待つ。
真由美は放課後にいつも、わからなかったところを先生に聞く。約20分くらい。真由美の友達はみんな家は真由美とは真逆のところにあり、一緒に帰るというこうができないのだ。だから真由美はいつも帰路は一人。
俺は告白する。……………なんて言おうかな…
王道パターンの「ずっと前から好きでした」的な?
ギャップで「俺と付き合えよ。」?
素っ気なく「なあ、真由美。俺と付き合ってくれませんか?」?
どうしようかな。やっぱり王道パターンで行こうかな。
真由美が階段を降りてきた。目が合った。
「あれ?エイジ、どうしたの?エイジも先生に用事?」
「いや、違うよ真由美。」
「ん?じゃあ何?」
俺は真由美に近づいた。そして真由美の目の前で肩膝を付き、真由美の手を取った。
「っちょ…エイジ?」
「…ず、ずっと前から好きでしたぁ!俺とつき…付き合ってください!」
言い切った。真由美の顔が赤くなる。俺は真剣な顔つきで凛としていた。そのときの俺は俺じゃないみたいに堂々としていた。真由美の口が開いた。
「…ふふっ…!エイジそんな風に思ってたんだね!だからフォークダンスの時ににやけてたの?」
そして真由美は笑い出した。
「あはは!いいよ!付き合おう、エイジ!今のエイジ格好良かったよ!」
その言葉を聞いた俺は、思わず涙を流した。真由美が笑っている…真由美が喜んでいる…真由美が付き合ってくれる…!
「…ありがとう!真由美!…本当にいいの?」
「いいよ!…あんなに気持ちのこもった告白されて、断れないよ!」
「ありがとう…ありがとう…」
「っふぇ!?私の腕で涙を拭くなー!」
「!?あ…ごめん!あまりにも嬉しくて…」
「もう…。じゃあエイジ、一緒に帰ろう!」
「うん!」
というわけで俺は成功したんだ。まさかだと思ったよ。嬉しくて飛び上がったからね。
「真由美…いつも一人で帰ってたの?」
「まあね。だって友達が全く反対側だし…すごく寂しかった。」
「そっか…じゃあ今日からは俺と一緒に帰ろうな。」
「でも…エイジの家って私の家に寄ると回り道になるでしょ?悪いよ」
「大丈夫。俺は一人でも平気だし。なにより真由美と長い時間一緒に居られるしね。」
「なら…お願いしよっかな!」
「おう!真由美を寂しくなんてさせないから。」
そのときの俺はすごく男らしかった。自分でも驚くほど。