1ー5・忘れられない少女の存在
実家が花屋だったことを知ったのは
クライシス・ホームが閉じられてからの事だった。
母娘で生活の生計を立てる為に、花屋を始めてからもう7年は経つ。
花が好きだという娘の意思を尊重して、ジェシカは花屋を建て直した。
フィーア_____芽衣は、今では花屋の看板娘だ。
その気立ての良い人柄からは好かれていて、商売は繁盛している。
ただそのお人好し過ぎる優しさがたまにはキズになるが、
今ではジェシカを引っ張る必要不可欠な存在だ。
芽衣は、あれから献身的なリハビリに励み
歩行出来るまでに回復になり、性格は更にしっかりと、温かみのある優しい女性に成長した。
柔らかで温かみのある美貌は
磨きがかかり、すっかり大人な顔立ちになっている。
「_____でも、どうして送り出したの?」
「…………なんだか、風花を思い出してしまったのよ」
カウンターに背を預けながら、芽衣は視線を伏せた。
風花。7年前に理由もなく黙って消えたあの妹の存在だった様な少女。
「風花に助けられた頃、部屋から出れない私に
彼女は花を飾ってくれたの。同じじゃなくて、持ってくる度に花は種類も色も変わっていた。
あの子の話を聞いたら、風花を思い出して
おまけしてしまったの」
「そうだったわね……」
しんみりとした空気が流れる。
母娘の脳裏に浮かぶのは、あのミステリアスな、北條家の娘。
彼女には教えられたものばかり。
「…………私は、風花に花の一輪も返せなかった」
(貴女にはして貰うばかり。私は、何も返せてはいなかった)
突然消えた恩人の少女に
怒りさえ覚えたが、同時に自分は何も出来なかったのだと思い知った
次にもし再会出来たのなら
見返してやると、驚かせてやるとリハビリに勤しんだあの日々。
けれど、後悔は消えない。
風花の事は、何年経った今でも忘れられなくて、心に存在の影を落とした。
(___貴女は、どんな姿になったかしら)
ジェシカは思う。
芽衣が26歳になるのだから、一つ年下の風花も立派な女性として成長している事だろう。
音信不通になり
連絡すら取れないけれど、風花はどうしているのだろう。
北條家にいるだけで心配だけれど、今は祈るしか出来なかった。
数話表記が間違っておりました。
申し訳ありません。




