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クライシス・ホーム  作者: 天崎 栞
第二部・危機に踊り狂う者
86/120

1ー3・答えのない疑問


ずるずると華鈴は、

圭介についてきて彼の家に上がり込んでいた。

けれど圭介は指一本、華鈴には触れはしない。


「それを食べ終わったら、遅いから送るよ」


青年の自炊料理を食べては、家に送られる。

居座ろうとも思ったが、嫌われるのを恐れて従ってきた。

強引にしてしまえば、また圭介は遠退いてしまうだろうから。


だから。

彼の気が変わるのを待っていた。

いつか振り向いてくれるのを期待していたが、

予想に反して圭介は何もしてはこない。







華鈴が、圭介の元に現れ始めたのは、風花が消えた時だった。

風花の教育係と監視係を辞めたと聞いた時、

華鈴は思い始めたのだ。


(_____圭介が欲しい)


昔から風花に与えられたものは、

欲しいという欲に駈られその度に嫉妬してきた。

クライシスホームを閉鎖して、北條家に戻ったのは癪に触ったが。


圭介は、もう風花の物ではない。

ならば自由にしても良い筈だ。


そう悟った瞬間、華鈴は行動に移した。待ち伏せを隠して

偶然を装い会ったりを引っ付いて彼の気を引こうと

こんな事をもう7年も繰り返している。


風花が一切干渉してこない事も

拍車をかけて、華鈴の背中を押していた。



「泊まっちゃ駄目?」

「嫁入り前の娘さんを泊める訳にはいかない。

それに終電にはまだ間に合うだろう」


色仕掛けと、媚びた声音を言ってみる。

けれど圭介の返事は穏やかだが素っ気なく、意図も簡単にあしらわれた。

少しばかり期待していた心情は裏切られる。


圭介に振り向かれたい。

最初は“風花の所持品“だったから、嫉妬と独占欲から欲しくて

堪らなかったけれど、圭介に近付く度にいつしか恋愛感情に芽生えた。


あれから、数年。

20歳からあまり変わらないが、青年は逞しくなった気がする。





けれど

もう何年もアプローチを続けているというのに、

圭介は一切、振り向かない。

風花には振り向いていたというのに、華鈴には風花と同じ様な視線を向けられた事は一度もなかった。


(みんな、風花ばかり……)


風花ばかりに視線を向けたがる。

けれど、風花がそれには一切、答えない。

本当の後継者は、北條厳造の孫娘は自分なのに。





ただ。

圭介が、風花を気にしているというのは分かっていた。

風花と別れてから、青年は何処か切なげな眼差しをし出したからだ。

風花の存在が、まだ圭介の心の中に居て留まっているのは。



(いっそ、風花を忘れてくれればいいのに)



風花がいなければ、その視線は自分に向けられるのに。



『風花』というワードを出すと

圭介は気にしてしまうだろう。自分の事を見てくれなくなる。

だからこそ敢えて口には出さなかったけれど。



けれど、一つ疑問がある。


(どうして風花は、お祖父様の元に戻ったの?)


あれだけ頑なに実家に帰らなかった少女が、

意図も簡単に北條家に、厳造の元に帰った。

何の前触れもなかった筈なのに。

それは、何故だろう。





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