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クライシス・ホーム  作者: 天崎 栞
【第7章~苦悩の先に待つもの~】
76/120

7ー5・急変を告げる男




朝。

小鳥のさえずりが、響く。

寒い雪解けから、季節は暖かな陽気になってきた。

母とも再会しわだかまりと解けて、気が晴れた筈だったのに。


それは、突然だった。



「____え?」



アルビノの少女は、耳を疑った。



「風花。今、なんて…言ったの?」




フィーア、もとい、芽衣がそう聞き返せば、風花は変わらない表情でこちらを見た。

なんとも言えない、けれど冷めた眼差しと表情で。

風花はくるりと首を真っ直ぐに向けると鏡と向かい合い、慣れた手付きで髪を結び始める。



「___言った通りよ。このアパートを更地にするから、出ていけ、とね」


「………………………」


冷静な声音。

けれど。少女にとっては、棘のような言葉。




(____聞き間違いじゃないのね)


聞き間違いではない。

それを悟った瞬間、芽衣は風花の言葉に絶句した。









いつもの道の筈なのに、ジェシカは違和感を感じる。

いつもの雰囲気ではない。何処か余所余所しく感じ、初めて訪れた感覚に襲われた。

けれどこれが突きつけられた現実なんだと、痛感する。


事務室を開ける。

いつもの空間があれば、と願っていた気持ちとは裏腹に。



見慣れた事務スペースにはデスクや書庫。

休憩スペースに置かれたコーヒーメーカー。テーブルセット。

静かだったけれど、笑みもあった空間。



しかし、今はもぬけの殻の白い空間でしかない。

見慣れたものは一切、綺麗さっぱり何もかも無くなっていた。


もう何もないのだ。

ジェシカは視線を落し、目を伏せた。



(____終わりなのね、もう)



あの少女が創り上げた空間は、もう終わる。




____数時間前。



『お嬢様から、聞いていませんか。

本日付でクライシスホームの運営は停止にすると』


『いいえ。どういう事ですか?』



いつも通り、ジェシカはクライシスホームに出勤した。

しかし入り始めた瞬間に感じたのは、違和感。

なんとも言えない。慣れている筈なのに、まるで初めての場所に訪れる様なもので。


そして、気付いた。

クライシスホームの契約スペースが、全て整頓されもぬけの殻になっていた事に。


どういう事だろう。

誰か呼ぼうかと思っていると、待っていたかの様に

暗い空間の向こう、こつりと靴音を立てながら誰かがやって来る。


暗闇が影響して、最初は警戒したが

相手側の顔を見た瞬間にそんなものは、捨てた。


ジェシカの前にやって来たのは青年。

端正に整った顔立ち、長身痩躯。モデルの様な出立ち。

すらりとした出立ちだからか、黒いスーツが映えて見えた。


ジェシカは知っている。彼は、北條家当主が用意した、北條風花の後見人、萩原はぎわら 孝義たかよしだ。



孝義が現れた瞬間、

ジェシカは驚いたが同時に悟りを開く。


理由は解る、

大概、彼が出てくると良からぬ知らせの象徴なのだから。


___そして、上記の事を告げられた。



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