7―1・何も代わらない
1章ずつ、12話で終了なので
今回から新章に移ります。
ただ
書いていて、こんなに短いなと思うのは
前章でした。
誰かが、言っていた。
人は毎日、誰かが生まれ、誰かが死ぬと。
「あなた、私はこれからどうすればいいの…」
火葬。
棺が、どんどん仕舞われていく。
泣き叫び、火の海へと行く棺を追おうとする祖母を止めながら、圭介は棺をぼんやりと見詰めていた。
祖父は、亡くなった。
圭介に謎めいた言葉を遺して。
それは今も圭介の心の中で引っ掛る事だ。
密葬で終わらせる。
涙は出ない。心は氷りの様に無情。
圭介は祖父が死亡宣告を受けた時も、今も。
自分をぞんざいに扱ってきた男に、涙は流せなかった。
あまり親近感が湧かず、まるで傍観者の如く、ただ取り残されぽつんと居る感覚。
(___あんたは、
結局、振り回す事しか出来なかったんだな)
疑問を遺して。
ただ無情の何処かで、そう思った。
息が詰まりそうだ。
「………………」
少女達が暮らす部屋には、ただの沈黙。
風花は元々、当たらず触らずの性格て、必要性のある会話しか交わさない。フィーアは戸惑いと共に心を閉ざしたままで。
__まるで、出会った頃の様に戻ってしまった。
戸惑いがない、と言えば嘘になる。
フィーアは壮絶な過去を持ちながらも、穏やかで優しい、風花にとって姉のようで。
知らず知らずの内に、フィーアに甘えていた。
けれど今は違う。ただ怜悧で冷たい彼女。
フィーアは変わってしまった。
ただ、
風花が、フィーアの支えになる事は代わりない。
何も言わないまま、風花はフィーアの支えになっていた。
フィーアの支え終わったあと
少女は、髪を一部分だけ結び身支度を整える。
(___優しくしないで)
フィーアの中で、気持ちが揺らぐ。
ジェシカの弁解を述べてからあれから風花は何も話さない。
その分、フィーアの心は揺れ動く。
今更、母親と知っても。
確かにジェシカにも、支えになって貰っている。
親身にもして貰った。だから、彼女には…。
けれど。
風花を不幸へと陥れたのもジェシカだ。
ジェシカと風花を比べてしまえば、風花の方が情も移っているし、過ごす時間も長かった。
妹なんて思っているけれど、本当は自分がその立場なのかも知れない。人間関係を知らなかったフィーアにとって
風花は初めて出会った人。
母親と知った今も、
彼女とどう接していいのか、風花への申し訳ない気持ちをどう片付ければ良いのか。
ただ何処かで、自分を知りたいという欲があったのだが。今、知った。
もうその疑念を探る事はないが___
「………どうすべきなの、私は…」
ワカラナイ。
代わりない、風花が恩人てある事も。
ジェシカが、自分の実母だという事も。
祖父の身辺整理を整えてから
圭介はようやく一人暮らししているアパートに帰ってくる事が出来た。暫く空けていた家。
部屋に入るや否や、ベッドに直行し、身を投げる。
ふかふかの布団。
襲ってくるのは、酷い脱力感と倦怠感。
色々と有り過ぎた。
祖父の死、葬儀。謎めいた言葉。
クライシスホームでの、暗い過去を持つ人達。
1人になるのは久しぶりだろうか。
(………風花)
ふと、黒髪少女の姿が横切った。
監視人と教育係という名目の職業だった自分。
けれど。放棄してしまった。
その上、自分の余裕の無さから
身勝手な理由で、彼女を傷付けてしまった。
申し訳ないと思いながら、圭介はぼんやりと天井を見詰めて溜息ひとつ。
過去は変えられない。
代わりなんてない。




