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クライシス・ホーム  作者: 天崎 栞
【第7章~苦悩の先に待つもの~】
72/120

7―1・何も代わらない

1章ずつ、12話で終了なので

今回から新章に移ります。


ただ

書いていて、こんなに短いなと思うのは

前章でした。


誰かが、言っていた。

人は毎日、誰かが生まれ、誰かが死ぬと。




「あなた、私はこれからどうすればいいの…」



火葬。

棺が、どんどん仕舞われていく。

泣き叫び、火の海へと行く棺を追おうとする祖母を止めながら、圭介は棺をぼんやりと見詰めていた。


祖父は、亡くなった。

圭介に謎めいた言葉を遺して。

それは今も圭介の心の中で引っ掛る事だ。



密葬で終わらせる。




涙は出ない。心は氷りの様に無情。

圭介は祖父が死亡宣告を受けた時も、今も。

自分をぞんざいに扱ってきた男に、涙は流せなかった。

あまり親近感が湧かず、まるで傍観者の如く、ただ取り残されぽつんと居る感覚。



(___あんたは、

結局、振り回す事しか出来なかったんだな)


疑問を遺して。

ただ無情の何処かで、そう思った。






息が詰まりそうだ。









「………………」




少女達が暮らす部屋には、ただの沈黙。

風花は元々、当たらず触らずの性格て、必要性のある会話しか交わさない。フィーアは戸惑いと共に心を閉ざしたままで。

__まるで、出会った頃の様に戻ってしまった。


戸惑いがない、と言えば嘘になる。

フィーアは壮絶な過去を持ちながらも、穏やかで優しい、風花にとって姉のようで。

知らず知らずの内に、フィーアに甘えていた。


けれど今は違う。ただ怜悧で冷たい彼女。

フィーアは変わってしまった。



ただ、

風花が、フィーアの支えになる事は代わりない。

何も言わないまま、風花はフィーアの支えになっていた。



フィーアの支え終わったあと

少女は、髪を一部分だけ結び身支度を整える。




(___優しくしないで)



フィーアの中で、気持ちが揺らぐ。

ジェシカの弁解を述べてからあれから風花は何も話さない。

その分、フィーアの心は揺れ動く。



今更、母親と知っても。

確かにジェシカにも、支えになって貰っている。

親身にもして貰った。だから、彼女には…。


けれど。

風花を不幸へと陥れたのもジェシカだ。

ジェシカと風花を比べてしまえば、風花の方が情も移っているし、過ごす時間も長かった。

妹なんて思っているけれど、本当は自分がその立場なのかも知れない。人間関係を知らなかったフィーアにとって

風花は初めて出会った人。



母親と知った今も、

彼女とどう接していいのか、風花への申し訳ない気持ちをどう片付ければ良いのか。

ただ何処かで、自分を知りたいという欲があったのだが。今、知った。

もうその疑念を探る事はないが___


「………どうすべきなの、私は…」




ワカラナイ。


代わりない、風花が恩人てある事も。

ジェシカが、自分の実母だという事も。




祖父の身辺整理を整えてから

圭介はようやく一人暮らししているアパートに帰ってくる事が出来た。暫く空けていた家。

部屋に入るや否や、ベッドに直行し、身を投げる。


ふかふかの布団。

襲ってくるのは、酷い脱力感と倦怠感。


色々と有り過ぎた。

祖父の死、葬儀。謎めいた言葉。

クライシスホームでの、暗い過去を持つ人達。

1人になるのは久しぶりだろうか。


(………風花)



ふと、黒髪少女の姿が横切った。

監視人と教育係という名目の職業だった自分。

けれど。放棄してしまった。


その上、自分の余裕の無さから

身勝手な理由で、彼女を傷付けてしまった。

申し訳ないと思いながら、圭介はぼんやりと天井を見詰めて溜息ひとつ。


過去は変えられない。

代わりなんてない。



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