6ー11・すれ違う心根
ジェシカを落ち着かせて、見送ったあと
ドアを閉めるとそのまま、もたれ掛かる。
以前、青年に言われた言葉を風花は思い出した。
『自己満足なんだろう』
そうだ。
そもそも、人間は自己満足の為に生きている。
そうでないと生きていけないのだから。
人の裏事情しか見れなかった。
人間の悪の裏事情ばかりを見て絶望して、見ない様に心を閉ざしたのは何時からだっただろう。
数日後。
「____………」
アルビノ少女は、
相変わらずぼんやりと遥か彼方を見詰めている。
今はそっとして置くのが、良いのだろう。
一人で考え整理する時間も必要だろうから。
自分の立場でもそうして欲しい。
けれどフィーアは、
ジェシカが自分を不幸にしたと思い込んでいる。
そうだろう。自分自身もそう思って内心、彼女に会わなければと思った時期もあった。
けれど。
「………フィーア」
フィーアの前でしゃがむと、風花は口を開いた。
「___貴女は、信じなくていい。
これは私の主観だから。でも、誤解しないで。
孤児院が燃えた日、
私と直斗は逃げ遅れて迷っていたの。影に隠れて怯えてた。
其処でジェシカが見つけて北條家まで連れていかれたの。
形は違うと思う。でも、助けてくれたのはジェシカよ。
ジェシカが助けてくれなければ、
私達は餓死していたわ」
フィーアの表情は冷たい。
フィーアは、風花の話をただ聞いていたが。
「____だとしても、
貴女を不幸にしたのは事実なのよ? 私の母親、
私はその娘なの。貴女に憎まれても当然の立場なの。
貴女は許すとしても、私が許さないわ」
冷たい瞳に、声音。
目線も合っていない。まるで出会った頃に戻ったみたいに。
冷たい風花の手を振り解くと、くるりと背を向ける。
(___許せない)
フィーアの心が、みるみる凍っていく。
あの事実を知ってから、心が冷たくなっていくばかりだ。
風花は冷酷に振る舞っていても、心根が優しいからあんな言葉を言えるのだろう。
「………今更、母親って名乗っても遅いわよね」
ジェシカは、しみじみと言う。
あれだけ泣いたせいか目はやや腫れているし、赤い。
今回は自分のせいだ。
「…………そんな事ないわ。今回は私が悪かったの。
貴女の話を聞いて、もしかしたらと勝手に鑑定に出したのも。
私だけの秘密にして仕舞うつもりだった。
……ごめんなさい」
「___貴女が謝る事、無いのよ。
寧ろ感謝してる。じゃないと芽衣が生きてる事を、
私は自分の娘にも気付けなかったから」
ね?と頬笑みかけるジェシカに、
風花は申し訳なく視線を伏せた。
自分が引き起こした事だ。自分も、二人に顔向けが出来ない。
だが、ようやく気付いた。
「___芽衣とは、フィーアのこと?」




