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クライシス・ホーム  作者: 天崎 栞
【第5章〜少女達の攻防戦〜】
57/120

5ー10・急変する事態



この事は、死んでも口にしないで下さいね。



そう穏やかな少女は、念を押す。

それは何処か狂気を逸した様な頬笑みで。

何故かそれに危機感を感じたのは気のせいではない。


時々にして、語られる

風花の過去話は壮絶過ぎて、絶句してしまう。

一体、どれ程の苦行を少女に与えられるのだろうか。






ふと、携帯端末が震えた事に気が付いた。

滅多に入らない連絡。画面が表示する相手に圭介は眉を潜める。………相手は、育ての親、祖母からだった。



「………え」




メールの文章に呆気に取られた。




___クライシスホーム・事務所。

照明の明かりはひとつ付けられていない。

ただ暗い部屋には、パソコンの明かりだけが光々(こうこう)と光っていて、その前に居座っているのは漆黒の少女。


夜番と称して、風花は事務所に引き籠る。

否。誰にも知られたくない情報を静かに探っていっていた。

パソコンのメールフォルダには、新着メールがひとつ。



“北條 風花様


依頼されていた情報を、送ります”



相手は、警察。警部補。



表情をひとつ変えないまま、風花は送られてきたメール内容に目を通す。

カチカチ、とキーボードを操る音だけが静寂な空間に響く。

開かれた機密の情報開示。


(…………)



画面を見詰めながら、風花は怪訝な顔をした。

例の物は、中々見つからない。


___アルビノ監禁暴行事件。


フィーアが長年、拘束されていた事件だ。

地下ではアルビノの子供達“だけ”が集められ、監禁されていた。

死者13名。

フィーアを除いてだがアルビノの子供達は全て死んだ。

生き残りはフィーアのみだが、世間には知られていない。



けれど

経緯も、事件そのものも謎が多い。

アルビノの子供達の素性、個人情報は何もなかった。

フィーアを助けた時だってそう。フィーアは何一つ、自分の個人情報を知らなかった。


アルビノの子供達は、どういう経緯で集められたのか。

警察も事細かに調べたらしいが、裏は出てこなかった。


北條家は警察とコネクションがある。

それは昔から警察は北條家と縁があり、警察からの火葬申し出等は、全て信頼を寄せる北條家に一任される。


警察の右腕的な存在である、北條家の頼みを警察は断らない。

「北條家の跡継ぎで当主の孫娘」という立場を利用すれば尚更。

機密情報も頼めば閲覧可能で、誰にも内緒のうちに、フィーアと関わりのあるこの事件を風花は調べていた。


送られて来たのは、

アルビノ事件で関わり、命を落とした子供の名簿。

しかし名前がない為、推定年齢と性別しか解らない。



“20歳前後 女性”



恐らくフィーアの情報だろう。

本人も言って居たがフィーアは

アルビノの子供達の中でも一番の年長者だったらしい。

現にそうだろう。他は皆、10代か、それ未満の子供ばかりだ。


(___詮索はしない主義だったのに)


風花は、自分で自分を不思議に思う。

普段なら、こんな事はない。

だが。


フィーアがいつか言っていた。

自分の素性が知りたいと。



他人に興味がない風花だが

フィーアには沢山の借りがあって、頭が上がらない。

いつも気遣い傍に居てくれる彼女には感謝だって覚えている。

だが、自分は恩返し一つ出来ていない。


貸したままの借りは嫌だ。

何かにつけて返さないと、何処かでそう思っていた。


しかし、これだけでは解らない。

犯人は今年、無期懲役の判決が下されたが一貫して黙秘を貫き何一つ語らないのだ。探れる何かは無いだろうか。



時計に視線を移す。

一瞬だけ、躊躇ったが、まだ時間はありそうだ。

善は急げ。メールを送ってきた責任者に、電話をかける。



「……北條です。情報ありがとうございました」

『いいえ。何かお役に立てましたかな』

「……はい。あの、お尋ねしますが名簿の他にアルビノの子供達の、出身とか把握していますか?」

『それは…』


途端に口籠る相手に、風花は諦めかけた。

無いか。警察でも探れなかった情報だし__。

だが。


『あ、そうそう。

これは確定ではないですが、

アルビノの子供達は全員 日本国内で拉致・誘拐されたそうです』

「__国内で?」

『はい』



入ってきた情報に風花は、驚いた。

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