4-13・少女の一面
今回、危ないシーン満載です。
それを承知でお読み頂ければ幸いです。
「………」
圭介は驚きを隠せない。あの手紙を送り付けたのは華鈴。
何処かで分かっていても衝撃だった。
「それを暴きに此処に来たの?」
「……そうね。それが本題だけれど。
こんな大事じゃなければ私は、素通りするわ。
貴女に興味はないから。
でもね。
それではどうやら私の腹の虫が治らないの」
さらっと笑顔で、フィーアは毒を吐く。
その微笑が怖い。まるで何かを隠し持っていている様で………。
やがて華鈴は後退り始めたが、彼女の行動の範囲は制限されていると解る。
「それでどうしようって言うのよ?
貴女は…____何も出来ないじゃない!!」
「……そう思う? まあ、表向きそうは見えるわね」
其処で、華鈴は眼を見開く。
さっきまで車椅子に座っていた少女が立ち上がり、ゆっくりと此方に来る。
歩幅はゆっくりとだが、不気味な微笑を見せながら確実に自分へと近付いてきた。
「脚を鉄の棒で叩かれ続けて、
私の脚は動かなくなったと思ってたんだけれど…………
違ったみたい。臆病な私がまだその恐怖から立ち直れないだけみたいなの。
あ…………これは余計な話だったわね」
そうだ。
フィーアは、少しだけゆっくりとなら歩ける。
あの日動かなくなった脚を自覚してもう歩けないと悟って諦め切って居たが
けれど。それを覆したのは風花だった。
『脊髄は損傷していません。
ただ衰弱により体力と脚力が落ちています。
後は精神的なショックからの影響が大きいでしょう』
『リハビリをすれば、歩ける様になるかと』
医者からそう聞いた。
現にフィーアにレントゲンや、数値の結果等も見せたのは風花。
「貴女は失っていない。また歩けるそうよ。
強制はしない。けれど貴女に意志があるならば、
また一歩踏み出してみない?
そして
貴女を痛め付けた奴らに、驚かせてやりましょう?」
風花はその事実を知ると
自らリハビリの説得を根気良く続け、手を差し伸べた。
彼女の諦めない根性に手を引かれる形で、
念に押され、二人三脚で始めたのがきっかけで
今もリハビリをフィーアは努力を、密かに続けていた。
そう言いながら近付き
ポケットから、忍ばせて置いたナイフをフィーアは出した。
その事実とナイフに華鈴は震え出して後退りし続けるがその瞬間____。
体ごと強くアルビノの少女に押し倒されて、その重みがかかってくる。
初めて見た。少女の本当の顔を。
目の前にあるのは可憐に整った顔立ちをし、不気味な微笑を浮かべる少女。
先程の淡く優しい表情を浮かべていたのに、今はピエロの様に不気味だ。
そして、その右手にはナイフが握られている。
華鈴は凍りついた。
「ねえ貴女は知らないでしょう?
風花はね、私を助けてくれた人なのよ。
私も妹同然に可愛がってきたの。
そんな私の大事な人にこんな事させるなんて許せないの………許せないのよ…………」
「………っ」
無表情で淡々と狂気を告げるフィーア。
華鈴は身じろきしようと踠き、悲鳴を出そうとするが声が出ない。
自分はどうなるのだろうかと恐怖に怯えながらも、目の前の少女からは逃れられないまま。
ナイフの刃先を見て恐怖に震える。
あの温厚な顔立ちと雰囲気の少女はもう此処にはいない。
狂気に満ちた、危険を感じる事しか出来ない。
「あはは。怖いのね? けれどこんなの軽度よ。
風花が味わった絶望も精神的ショックはこんなものじゃないわ。
ねえ。今後こんな事したら私が黙っていないわよ?
あと___お祖父様とやら、
この家の親戚にこれをバラしたら命はないと思って頂戴……ね?」
「分かったわ。分かった…風花にはもう二度としないわ。だから離れて!」
「そう。なら良かった。でも見逃しはしないわ。
風花に傷付けるなら、容赦しない。
あと、これは此処だけの秘密よ?」
フィーアはナイフを落とし
そっと人差し指を、華鈴の口元に当てて微笑。
狂気を秘めた少女は、腹の虫が治ったのかジェシカを呼んだ。
「ジェシカさん、ちょっと手伝ってくれませんか?」
「はいはい。ちょっと待ってね____」
そう言った後、フィーアはナイフを拾う。
そして微笑しながらナイフの平を愛おしそうに頰に当てる。
「これ、本物だと思った? 残念、単なる玩具です」
「……っ」
愛らしいで繊細な美貌。
その狂気を逸した可憐な少女が、美しいとすら思う。
こ奴は危ないと華鈴が心の其処から理解して何も無かった事に安堵する。
もし誰かに話し風花に何かしたら、今度は本当に殺されそうだ。
「あら、フィーア………地べたに座って………」
「歩き疲れてしまったの。車椅子まで運んでくれませんか?」
「じゃあ圭介くん。頼めるかしら?」
「分かりました__」
すぐ側にジェシカと、青年がいた事に驚く。
此方にきた青年と一瞬目が合ったが直ぐに逸らされてしまう。
嗚呼、皆知ってたのだ。そして青年も知られて、自分のした醜態を聞かれていた。
ひょいと圭介は、フィーアを抱き抱え車椅子に座らせる。
(もっと、俺も警戒して風花を監視しないと。
フィーアさんをみたいに………)




