4-12・フィーアの思惑
フィーアは解っていた。
解っていた上で、ジェシカに相談を持ちかけたのだ。
「あの、華鈴さんと
自然と会わせて頂ける機会を授けてくれませんか?」
『え? いきなりどうしたのよ? 』
「ジェシカさんも何処かで、分かっているでしょう?
直斗の事を知る人は少ない。あの手紙を送り付けた人間が限られている。だとしたら考えられる人物は………」
(……………もしかして)
ジェシカは、其処でハッとする。
けれどそれと同時に何処かでやっぱりかと思い悟る。
フィーアが言う言葉は確証があって、ジェシカも謎が解けた。
はぐらかしの利かない事情を武器にされ、話し合いたいという
フィーアにジェシカは承諾して、北條家の奥部屋を指定する。
自分が連れていくという条件を飲み込んだ代わりにフィーアは
「ジェシカさんと、
圭介さんには部屋の前で待っていて欲しいんです。
聞けばあの人、激昂し易いんでしょう? そうなった時
私では敵わなくなると思いますから。
万が一の時にお願いします。……駄目でしょうか?」
「そうね。解ったわ。圭介さんと私も同伴するわ」
条件は揃った。
後は____……。あの少女の裏を暴かねければ。
某日。
フィーアはジェシカはと圭介に連れられて北條家に来た。
圭介も事情は知っている。それを見込んだ上で、
フィーアは二人を連れたのだ。
奥部屋。華鈴が先に待っていた。ジェシカは
「この子が、貴女と話したいそうよ。
それじゃあ、後は任せるわね」
「ありがとうございます、ジェシカさん」
ジェシカは去っていく。
部屋の斜めにいた青年は、こそこそとジェシカに尋ねた。
「今から、何が始まるんですか?」
「聞けば解るわ。良い? 今の貴方は、フィーアの護衛よ。
男手は貴方しかいない。もしもの時はお願いね」
「………分かりました」
二人は静まり、
畏まり部屋の斜めで、立ち止まる。
二人きりの空間になった時、
向き合ってフィーアと華鈴の視線が混ざる。
華鈴は不機嫌な面持ちだ。
それに対しフィーアは薄い微笑みを浮かべていた。
「今日は急用をつけてごめんなさい。
けれどまた一度お会いしたかったの」
「そうなの……」
フィーアと華鈴が面識したのはたった一度だけ。
風花と家を出る前だったからもう再会するのは何年ぶりだろうか。
けれど華鈴はフィーアの事を気に入らない様だった。
……風花の味方だったからだ。
案の定、華鈴はフィーアも欲しがろうとしたけれど、
フィーアの盛大な拒絶により断念したのだ。
フィーアも賢い者だった。
素性は解らぬが、
風花に負けないくらいのIQと理性を伏せ持っている。
それは風花がそうなる様に教えたのか、彼女の眠っていた才能か。
普段は大人しいのに
此方が奪う目的で手懐けようとした途端に、フィーアは華鈴に牙を向けた。
『私には、分かるの。貴女がどんなに醜いか。
人の物がそんなに欲しいの? けれど残念ね。私は貴女に着かない。
風花は私の恩人よ。あの子を裏切る真似なんて私はしない』
私は、風花に着いていく。
目の前の少女にフィーアはそう吐いた。
その事もあってか、華鈴はあまりフィーアを良く思っていない。
「どうして話したいなんて思ったの? 本題は何?」
「あら、じゃあもう本題に入って良いのかしら?」
やや首を傾け、
不思議そうなの微笑を浮かべながらフィーアは尋ねる。
けれどこれが誰も知らない"彼女の合図"だった。
「こないだね、
風花の元に不思議な手紙が届いて風花はパニックになったの。
静かなあの子が取り乱すのは珍しいわよね。
でもそうなって当然だったわ。
『信濃 直斗を殺したのは、北條風花。
己 可愛さに実兄を殺した罪人な女』なんて書いてあるんだもの。私もも驚いたわ」
ピク、と華鈴の表情が動く。
その僅かに動いた表情を、フィーアは決して見逃さなかった。
落ち着いた物言いを続けながらフィーアは本題へと乗り出し始めたのだ。
「一体、誰が風花に酷いこんな事をしたんでしょう……」
段々と落ち着いた口調に熱が篭ってくる。
そんな事があったのという華鈴に、フィーアは心の中で微笑を浮かべながら
「華鈴さん。そろそろ正直になったらどう?
この手紙は___私が一から作って風花に送りましたってね? 」
「……っ、そんな証拠が何処あるのよ!!」
華鈴は叫ぶ。
しかしフィーアの眼の色と目付きが変わってきた事に驚く。
温厚な少女が、嘲笑っている。
「そんな証拠が何処にある? 笑わせてくれるわ。
証拠ならあるわよ? 貴女の指紋と手紙に付着していた指紋が一致してるのに。
後、貴女の甘くて強い香水の香り____それが一緒だった。
人間は口で嘘を付いてもね。
いつか自分自身が教えてくれる様になってるのよ」




