3-12・北條家の魔王と子分
今でも忘れない。
あの日とあの光景を。
焼け野原になった場所で私が見つけたのは……。
厳造とジェシカは向かい合わせに座る。
厳造は相変わらず眉間に皺を寄せて何時も通りに怒った面持ちだ。
そんな北條家の当主を見据えつつ、用意された焙じ茶を啜った。
「風花はどうだ?」
「最近は平常心で何時も通りに過ごしています。発作も…ないかと。
そう言えば先日 此方に風花が帰省したとお聞きしましたが」
ジェシカは風花の世話役だ。
彼女の小さい頃から北條家で、風花を世話してきたのはジェシカ。
そんな風花の様子を聞いた厳造は険しい眼差しをしながらジェシカに
問われた瞬間、また眉間の皺を濃くしながら不機嫌そうに語り始めた。
「家に帰って来いと言ったのだがな、あの小娘は聞かなかったんだ。
まだ未熟な癖に大口を叩きよって………!! 全く情けのうない」
「……今は帰らないでしょう。風花は立派になってから帰ると決めています」
「だがな、考えてみろ。この本家に次期当主の娘が居ないという恥晒しを」
「いいえ。風花にとって今の自分は恥晒しと考えている様です」
何が恥晒しだ。
風花に何もかも押し付けてきた人間の癖に。
ジェシカの願いも厳造は聞き入れずに、自分勝手に生きてきた。
それに全ての事実を知った今、もう風花はこの家には帰らないだろう。
「ふふふ」
華鈴には嘲笑を浮かべる。
そして、あの北條家の当主が言っていたこと。
『まあいい。そう言えば風花に新しく教育係が付いたという噂が』
『ジェシカが言うに、若い青年のようだ』
ジェシカ以外に、新しい教育係付いたと。
青年の教育係という事は聞いて居たが、誰なのかは分からなかった。
けれど先日、風花を迎えにきたあの青年がきっと風花の教育係なのだろう。
教育係がいると知った瞬間。
華鈴に生まれたのは嫉妬心と独占欲。
北條家の次期当主というだけであの待遇が腹が立って許せなかった。
周りから秀才と呼ばれて何でも祖父の言う通りに答えてきた少女。
あの立場で、平然としているのも気に食わない。
本当ならば、あの立場に居るのはあの小娘じゃないのに。
許せないと思いながら歪んだ華鈴の心が思い始めたのは。
(_____________取ってしまえ)
奪ってしまえ。
あの風花から新しい教育係を。
昔から風花の物は奪いたくなるという精神が華鈴には付いていた。
それらは全て嫉妬心から。
今度はあの青年を、自分の側に付けてしまえばいい。
その自信は華鈴にはたっぷりとあった。
(覚えてなさいよ、風花)
目の前にあった風花の隠し撮り写真をハサミで切り裂きながら
華鈴は再び嘲笑った。




