2-7・薄幸の少女達
この話から残酷な描写が続きます。
苦手な方は、お控え下さい。
__________3年前、北條家・本家
「なんだと!!!」
遠くからその声と共に怒号と、乾いた音が聞こえてくる。
酷いと思いながら、フィーアは両腕で身を引き締めて、その罵声の惨状を堪えた。
まただ。
この家の当主が、孫娘にキツく当たっている。
“本家の離れ”だという遠い部屋でも騒音と呼べるくらい大きな声だから、現場はもっと凄い筈だ。
フィーアは、この北條家に引き取られた里子だった。
正式に引き取られてまだ日は浅いけれど、段々とこの家の中の事情が理解しつつあった。
この当主は自分本意な性格で、正反対の性格を持つ孫娘が気に食わないらしい。
それは本当の祖父と孫か、と疑う程に。
当主は容赦がない。
(___あの子、大丈夫なのかな……)
風花という、
自分を拾って身のまわりの世話をしてくれる少女。
助けに行きたい。
けれど、この動かぬ足と、制限された部屋では到底無理で
自分の足である車椅子は、この本家の屋敷の中では使用禁止だった。
フィーアを隠している事がバレてしまうからだ。
だが。フィーアは手を伸ばし
手を使って床を滑る様にドアである障子に耳を当てるとより一層に様々な声が飛び交って聞こえてくる。
「もうやめて上げて下さい!!」
当主の怒る声。世話役の止める声。
そして、ひとつも声も上げずにただ耐えている呼吸。
理不尽な声を聞いて居て、環境に堪れなくなりながらも、この家の環境が普通でない事は、フィーアには分かりきっていた。
けれど。この現場を聞いていると、いつかの自分を見ているようで。辛い。
この家は、代々続く葬儀屋。
そしてこの家にその後継ぎとなる少女がいると知ったのは、あの瞬間。
フィーアはアルビノだった。
ただ自分の身がそれという事実だけで、それ以外何も分からなかった。
自分の実親も、自分の名前も。自分自身の素性すらも。
ひとつ分かるのは、窓もない冷たい牢屋の様な場所。
自分達が数人詰め込まれて誰かも分からない人間の元で育てられたいるという事だ。物心付いた時からその場に育ったという事は深く覚えている。
これは知らない事実だったが数人のアルビノの子供達だけを集めて最小限の生活をさせていたのは裏社会で生きている人間達で、厳つく大柄なマフィアや兵士達。
彼らは、地上でコカイン、麻薬等の密売や本人達の摂取。
派手な酒盛りを繰り返しながら、生活。
そして。醍醐味は。
地下室に閉じ込めているアルビノの子供達を、自らの感情に任せ
腹いせにストレスを発散させる為に、地下室の子供達へ
虐待とも呼べる酷い暴力を浴びせていた。