2-2・風の様に居ない鳥
__あれから数日。
式の段取りや準備に追われて、圭介は慣れない作業にあたふたとしていた。
なんせ初めての事だらけだからこそ、まだ慣れていない面も沢山ある。
重い物を運ぶ等は男手が必要なので其方を任されて、作業をこなしていた。
圭介に与えられた役割は、北條風花の監視人兼教育係。
表向きは彼女の護衛のボディーガード、とフィーアが片付けたらしい。
主に風花の見張り役。
風花やフィーアは、花屋で花をどうするかの交渉に行き
話術に長けたフィーアが交渉して、風花はメモを取ったとか。
けれど。
このクライシスの責任者であり
トップの北條風花は、居る時よりも居ない事の方が多い。
居たと思っても、鳥が羽ばたくようにすぐに居なくなる。
「フィーアさん」
「どうかしましたか?」
「北條さん、何処に行ったんですか?」
花屋さんとの交渉を終えてひと段落ついて
式で飾る花のイメージ画を描いていたフィーアに圭介は尋ねた。
フィーアは圭介の言葉に一旦、その手を止めてから不思議そうな、
けれどまんざらでもない冷静な面持ちでキョロキョロと辺りを見てから言う。
「……そういえば、
さっきから見ないですね。あの子は何処に行ったのかしら?」
「いつも居なくなるんですか?」
不思議そうに圭介は尋ねる。
対してフィーアは平然としたままだ。
心の何処かで監視人役を命じられ、目を離した事を怒られるとは思いきや。
「ええ。まあ……。もう慣れっこですけれど。
仕事の関係で何処かに行ったのか。それとも気紛れでふらりと町に行ったのか。
でも。今日はなるべくこの場所には居たくないんじゃないでしょうか」
何時しか、手先の作業を再開しながら言うフィーア。
「それってどういうことですか?」
「……えっと…。
今日はあの人が出勤して居座ってますからね」
フィーアはイメージ画を描きながら、平然と言い向こうに視線を向ける。
釣られる様に圭介も視線を向けた。
_________事務所のデスクワーク。
パソコン画面と向き合いながら作業している女性だ。
艶のある綺麗な金髪。日本人離れした容姿とスタイル抜群の美女が座っている。
その美貌は、思わず視線を奪われ見惚れてしまう程。
ジェシカ・小川。
イタリア出身のハーフだと言っていた。
(フィーアさんが言っているのは、彼女の事か?)
決まった曜日に出勤する非常勤職員で
会計等の計算をする事務をする役割の人物だと
初めて面識した際に紹介された記憶が今日の始めにあった気がする。
……彼女が何か関係して居るのか? そう薄々感じ始めた圭介に
その表情を察したフィーアは『後々に分かる事ですから』と言った。
「………」
こつこつと靴音が聞こえて、視線を向ける。
其処には何時も通り黒い制服を着た、風花が帰ってきた。
……その瞬間だった。
まるで狙った獲物に飛び付くジェシカが、風花に抱き着いた。
刹那の瞬間。一瞬の事に思わず唖然とした圭介。
それに対して、慣れて少し引いた眼差しでいるフィーア。




