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ハッピーライフ  作者: 藤川佐介
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第2話 日常を越えて

何度、この赤色を見て来たのだろう

もう数えることはやめた

だが、この赤色の輝きが薄れることはない。

見るたびに、さらに輝きを増しているように見える

もう恐れはない

この感動を味わう事が出来るのなら、何度でもやってやろう


これを見ている時、自分は最も幸せだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あおりによる暴挙を処理するために思いついた食虫植物フェア。

結果から言おう。


大繁盛この上なかった。


店の前には開店前から人で溢れかえっていて、店を開ければたちまち、人の津波が店内に押し寄せて来た。

街角にある小さな花屋では、そんな大量の人数をどうこう出来るわけもなく、店の中はパニックになってしまった。

そこで急遽、食虫植物達を店外に移動させ、仮説の屋外販売をする事によってどうにか事なきを得たのだが、すべての食虫植物を売り終わった時には、店の皆は抜け殻になってしまっていた。

「……店長、一体、何をしたって言うんですか」

「……いや、あの後帰ってすぐに広告のデザインを考えて、出来上がったらすぐに知り合いの印刷屋さんに連絡入れて大量に刷ってもらって、昨日の朝から友達とかに協力して貰って近くの小中学校とか回覧板とかと一緒に配ってもらって、ちょっとネットで口コミ広めただけなんだけど……」

「どんな人脈してるんですか!?」


この女、赤井あおりは、こんなんでも友好関係はかなり広い。

いろんなツテやらコネやらがあるらしい。

こんなやつにどうして協力してやろうと思えるのかわからないが、人を惹きつける力があると言う事は、あまり否定出来ない。


「……わ、私がいない間に何やってるんですか……」

いつも仕事を的確にこなし、終わってもケロッとした顔をしている橘言葉も、流石に今回は限界のようだ。

「あ、言葉ちゃん、今日は来てくれて助かったよ。確か今日も模試で一日休みの予定だったのに、大丈夫だったの?」

「あ、はい。でも今日は午前だけでしたから。むしろ午後からしか来れなくてすみません」

「いやいや、午後から来てくれただけでもずいぶん助かったよ。ありがとう。」

「……ていうか、帰ろうと思った時にこんなメールが来たら誰でも来ますよ」


宛先:言葉ちゃん

件名:

本文:もうダメかもわからんね


「……本当に、やばかったんだよ」

「……まるで自らの死を受け入れたかのような文を見てしまっては黙って帰るわけには行きませんよ流石に」

「心からありがとう」


午後から言葉が来てくれたお陰で、午前よりは大分楽になった。それまではたった二人でやっていたのだ。売り子として店長が外に出て、レジは自分一人で捌いていた。数時間ほとんど休憩無しにレジで手を動かしてたのだ。今、腕はほとんど上がらない。

「……まだ閉店まで結構時間あるな……まぁいいや、よし、片付けてとっとと店閉めるぞ」

「……了解」

「わかりました」

重い体を無理やり起き上がらせ、3人は店の外にあるテーブルや看板を片付けに向かった。

すべての片付けを終え、事務所にあるロッカーで着替えをし、最後に店のシャッターを閉め、店じまいをすべて終えた。


「ちゃんと全部閉めたな?よし。じゃあ、お疲れさん!店は明日もあるんだから、しっかり休めよー」

「はい、お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

店長の挨拶に合わせて軽く挨拶を言い、3人はそれぞれの帰路に立った。

夜道を歩きながら花宮は、ふぅ、と息をつく。

なぜだろう。

あおりのせいでこんなに疲れているのに、心の中は不思議と充実感で溢れていた。

店の仲間たちと働いて、笑って。

それが、自分にとっての一種の幸せなのかもしれない。

この幸せが、ずっと続けばいい。

そう思った。



そして、今夜も赤色が舞う。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


油断をしていたわけではなかった

気を抜いていたわけではなかった

周りが見えてないなんて事はないはずだった

常に周りを警戒していたはずだった

この幸福を1人で堪能するために

この美しさを誰かに取られぬように

この輝きすべて受け止めるために

なのに

なのにどうして



「………………花宮先輩……?」



目線の先にある橘言葉の顔は、青く染まっていた



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