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俺、異世界なう。~理系男子徒然日記~  作者: 糖類ゼロ
第1部:異世界転移編
9/51

第7話:再会で腹パン一発喰わせました。

初の長文投稿(改行込み約4800字/改行抜き約4300字)←文字カウント参考値 になりました。

予定より早く投稿できるラインに来たので、さっそく投稿します。


8/24 14:25 現在

第7話



『さあ、ここだ』


クロードに連れてこられたのは、王城1階にある石造りの部屋だった。

扉は鉄だろうか? 金属製で、建物のモダンな外観とは違って、物々しい雰囲気を醸し出している。


『こちらクロード・ディン・ウォーカー。規則に法り、佐藤・ソーマ・ヴォルフマンを連れてまいりました』

クロードが扉をノックし、中にいる誰かに入室の許可を求めた。

『うむ。入れ』

部屋の中からは、入室を促す男の声が聞こえた。



俺は、クロードに促されて室内に入った。

俺が室内に入ると、クロード達二人の衛兵が閉じた扉の前に並んで立った。



「…失礼します」


部屋の中には真人の男が一人だけ居た。

しつないには応接用のテーブルと椅子が配されており、ビロード張りの豪奢な椅子に彼は座っていた。


『うむ。君がソーマくんか…。遠いところ、労足有り難く思う』

「いえ、規則ですので…労いのお言葉、ありがとうございます」

『あまり硬くならなくていい。まあ、取りあえず座ってくれ』


その人は挨拶もそこそこに、俺に着席を求めてくる。

俺が対面の席に座ると、彼が話を始めた。


『改めて挨拶しよう。私の名はブラット・ヴァン・アルマリオだ。この国(アルナイル王国)で、転生者転移者記録部長をしている』


姓名3文字、彼は貴族か…。

「初めまして。わたしの名前は、サトー・ソーマ・ヴォルフマンです。こちらの階級だとわたしは平民にあたるそうなので、ソーマ・ヴォルフマンと名乗っております」

俺は、出来るだけ丁寧に、失礼にならないように口調を心掛けた。



『君のIDの記録は、前もって見せてもらっているよ』

「…これは…!」


机上には、A4サイズくらいの大きさのプレートが置かれていた。

金属のような非金属のような、よく分からない材質で出来たそのプレートには、自分に渡されたIDカードと同じ内容の文字が浮かんでいた。


『驚いたかい? このプレートが、IDカードの原本ともいうべきものなのだよ』

「そうなのですか…。驚きました」

『今の君のIDカードには、情報の抜けが多い。しかしそれは、ID記録書込装置(デバイス)の性能差によるものだから、この装置を使えばすぐに修正できるよ』



『ソーマくん、私の真似をしてくれないか?』

アルマリオ氏はそういうと、装置に手をかざしてプレートをうっすらと発光させてみせた。

「分かりました。…では」

俺は同じように、プレートに手をかざした。

「 ……あれぇ?」


全然、反応がない?

俺が困っていると、アルマリオ氏が助言をくれた。

『そうだな… 血流は認識出来るかい?』

「…はい…姿勢を工夫したりすれば何とか…」

『では、プレートに手を当てて、血流のような流れを感じられるかな?』

「うーん…」


なんだかぱっと分からないなぁ…。


「…あ、これでしょうか…」

俺は、腕からプレートに向かいまた腕へと循環する何か不思議な流れがあることに気付いた。その流れをプレートに流し込むように意識すると、プレートが発光し始めたことがわかった。


『うん、それが魔力。覚えておくようにね』

アルマリオ氏はうなずくと、プレートを魔力で満たすイメージを維持するように俺に指示した。



それから20分後…。


『情報書き換えの魔力循環はもう大丈夫。さあ、プレートを見てみようか!』


アルマリオ氏の指示により魔力の循環を止めると、プレートを改めて読んでみた。








★書き換え前

――――――――――――――――――

【サトー|《佐藤》・ソーマ|《蒼真》・ヴォルフマン】

種族:平行世界Ⅲ太陽系地球人/真人(ヒューマン)

性別:男

年齢:17 [アルナイル新暦217年 7日7日 生]

身長:184cm

体重:86kg


固有技能:不明

獲得技能:不明

所有アイテム:軽ワゴン車(アイテムボックス)[状態/一部損壊]

――――――――――――――――――



★書き換え後

――――――――――――――――――

【サトー|《佐藤》・ソーマ|《蒼真》・ヴォルフマン】

種族:平行世界Ⅲ太陽系地球人/真人(ヒューマン)

所属:日本国/甲信越地方/大学生[※アルナイル国立上級魔道研究所・研究生に相当]

性別:男

年齢:17 [アルナイル新暦217年 7日7日 生]

身長:184cm

体重:86kg


生命活動力(バイタル及びスタミナ):正常 94/100%[一般平均値は95]

状態異常:無し

魔力循環:正常 26/108%[一般平均値は76]

魔力強度:正常 108/127%[一般平均値は100]




〔評価方法/F,Eを初級、D,Cを中級、B,Aを上級、Sを特級とする7段階評価〕

※ただし、限定的にX±表示(プラスマイナス評価)が付与されることがある。


固有技能:

錬金術師(アルケミスト)

鍛冶師(ブラックスミス)

薬師(ファーマシー)

平行世界Ⅲ太陽系地球/有機化学工学系技術 B

平行世界Ⅲ太陽系地球/金属化学工学系技術 C


獲得技能:

多言語理解 C

魔力制御 F


獲得魔法:

無し


所有アイテム:

軽ワゴン車(アイテムボックス)[状態/半壊]


所持金額:4537Ы(45370円)

――――――――――――――――――





『どうだい? こいつの性能、凄いだろう!』

いい笑顔でドヤっとしているアルマリオ氏。

非常に頭がズキズキする。…ズキズキする。

………。

…だいぶ変わった。変わったというか…、増え過ぎだろこれ!

唖然として間抜けな表情(かお)をしている俺。

その俺の百面相をよそに、アルマリオ氏が驚きの声を上げた。

『ほう、キミは学生か! 17歳で上級魔導研究所の研究生相当とは、凄いじゃないか!』

「いえ、わたしがあちらにいたときには21歳でしたから、今とは年齢も違いますので…」


『ほう。転移で4年の時間がずれたか…。』

アルマリオ氏が、研究生というところより時間のずれのほうに反応した。

『良かったなぁ。21年以上戻っていたら死んでいたよ、キミ。時間遡行で生まれる前まで戻ってしまい、存在自体が消える危険があった』


ドキッ


怖いこと言うな!





『ところでだ。アイテムボックス(軽ワゴン車)というものは、あの白い乗り物だね?』

話題が急に変わり、アルマリオ氏が窓の外を指さした。


…あぁ、俺の愛車が…!

そこを見ると、俺の愛車が、窓が割れてベコベコにひしゃげた姿で佇んでいた。

せめて中身だけでも無事であってくれ…。


『あれはね。一昨日の朝、南東a-28ブロックに建っている住宅に空から落ちてきたんだ。』

『幸い空き家で死傷者はでなかったけれど、大変な騒ぎだった。少なくともこの国では見たことがない物体だからねぇ。そういうわけで、ここに持ち込まれた訳さ』


そうだったのか…。




『アルマリオ様、私も彼に訊きたいことがあるので良いでしょうか?』

クロードが、俺への質問の許可をアルマリオに求めた。

『うん? 許可はするが何故だ?』

『まぁ、聞いていただければ…。というわけで、ヴォルフマン君も、いいね?』

俺は、よくわからないままに頷いた。




『では。 “佐藤斗真(トウマ)”、という名前に心当たりはあるかい?』





クロード…何故その名前を…?








◆ ◆ ◆ ◆ ◆








俺には、8歳年の離れた兄がいた。

父に似たのか、兄は格闘技が大好きで、俺が物心ついたときには、空手や柔道、剣道、合気道、ボクシング等々、子供心にも呆れるくらいの力の入れようだった。


父曰く。『斗真には才能がある! 天才だ!』…ということらしいが、贔屓目抜きにしても確かに兄は強かった。地方ブロック大会では上位の常連で、時には全国大会に行くことも。

俺は、小さい時から試合で優勝する兄の姿をみては尊敬していた。


俺が小学5年生になり兄は高校を卒業すると、都内の大学に通学するために家を離れた。なかなか会えなくなって寂しかったけれど、帰ってきたときには満足するまで俺と遊んでくれた。



月日が流れ、俺は興味のある理系の大学に行こうと決めた。 そして、無事に理工学部の材料工学科に入学した。

友人もたくさんでき、大学生活は毎日が充実していた。







そして時が過ぎ、21歳、大学3年の夏。


8月24日、訃報が飛び込んできた。

雷まじりの激しい雨が降る、夕暮れ時の高速道路。大型トラックが起こした車両トラブルの原因を検証するため、警察官として出動した兄。路肩に退避しつつ運転手に事情聴取を行っている最中、無理な車線変更をしようとしてスリップした乗用車が、現場にいた兄とトラックの運転手に突っ込み、搬送先の病院で兄の死亡が確認されたという内容だった。兄がかばったトラックの運転手は、ひどい重傷を負っていた。



何故? それ以上頭が回らず、携帯電話を持ったまま俺は茫然と立ち尽くした。 様子がおかしい俺を心配したゼミの仲間が車で自宅まで送ってくれたらしいが、俺は全然覚えていない。







――――――――――――






「クロードさん、何でその名前を…?」

俺の目を見ながら、クロードはふっと柔らかい表情をみせた。

『それはね、オレがいわゆる“転移者”とりわけ“部分転移者”という存在だからだよ』

それと兄の名前とに、何の関係があるのだろうか?

俺が怪訝そうにしていると、クロードが話を続けた。


『何でオレが君のお兄さんの名前を知っているのか、解せないんだろう?』

「…ああ」

クロードは頷くと、言葉を続けた。


『君の兄は、キミより8歳年上だった。そして、名前は佐藤斗真。発音は“トーマ”でなく“トウマ”』

『キミも、本当は“ソーマ”ではなくて“ソウマ”だろう?』

「はい…」

『兄は、日本の長野県警勤務、当時29歳だった。趣味・特技は格闘技で、そこそこの強者だった。…合っているかい?』

「はい…」

クロードの口から、次々に兄の情報が飛び出してくる。まるで、彼が俺の兄であるかのように。


『では、違う角度から質問するよ? オレの言葉に続けて後の句を継いでくれ』

俺が頷くの見ると、クロードは再び話し始めた。


『牛にひかれて?』 「…善光寺詣り」

『御神渡りといえば?』 「…諏訪湖」



では最後に、とクロードが言い、とんでもないことを言い出した。


『“俺は三上さんがめっちゃ大好きでs”…おっと!』

俺は口を封じるため、クロードに飛び掛かった。…そして余裕で躱される。

この人、俺の黒歴史を(そら)んじ始めやがった。

他人の書いた失恋ラブレターの中身に触れるな!

呪詛をこめた涙目でクロードを睨むと、クロードをはじめアルマリオ氏や真人の彼まで爆笑し始めた。




『クロード君、これは確定だな?…くくっ!』

『もう充分です、アルマリオ様。…ぐふっ!』


なんか俺、悲しくなってきたよ…

独り切なさに悶々としていると、クロードが俺に彼自身のプレートを見せてきた。



――――――――――――――――――

【クロード・ディン・ウォーカー 〔魂名:サトウ・トウマ・ヴォルフマン〕】

種族:平行世界Ⅰ太陽系地球人/獣人(ゾアノロイド)・虎族

性別:男

年齢:29 [アルナイル新暦189年 8日24日 生]

身長:189cm

体重:107kg


技能等:一括省略表示

――――――――――――――――――



そこには、懐かしい名前が書かれていた。

そして誕生日は兄の命日と同じ日付が刻まれていた。



父さん、母さん…

兄貴は…異世界で…虎になっていました。





爆笑しながら肩をバンバンと叩いてくる虎男に、俺は八つ当たりの腹パンを一発喰わせた。

…俺の涙を返せ!




読んでいただきありがとうございました。

次話もどうぞよろしくお願いします。

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