第4話:異世界に発明王がいました。
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翌朝。
俺は、ウェディングベルの如く朗々と響く鐘の音で、目が覚めた。
欠伸で目ににじんだ涙を拭って、少々早い時刻かもしれないとは思ったが、布団を畳んで部屋の隅に片付けた。
俺の部屋は、棟の形が“門”の字になっている宿の、2階左手前にある部屋。
左右対照に5部屋・奥に大きめの部屋が4部屋あるので、全部で14部屋のさほど大きくない宿だが、室内が綺麗に掃除されていて、中庭も手入れが行き届いているのが好印象だ。
中庭では稽古か訓練だろうか、何人かの人が木剣や木槍の打ち合いをしている。
俺は、日本では絶対に見られないであろうその様子を暫し鑑賞したあと、1階のフロントに下りていった。
「女将さん、おはようございます」
俺が女将に声を掛けると、元気な挨拶が返ってきた。
『あれお客さん早かったですね。おはようございます』
「さっきの鐘の音で、目が醒めたんですよ」
『ああ、なるほど。朝6時の鐘でですか。お客さんは確か、違う世界から来たばかりでしたものね。こっちじゃ、朝6時から夕6時まで、鐘が鳴るんですよ』
「俺のいた世界でも、そういう鐘は場所によってありましたね。さすがに朝6時は鳴らなかったです、朝早すぎるので」
俺が苦笑いしながらこたえると、女将もふふふと微笑んだ。
『あらやだ。急いで朝食をだすから、ちょっと待っておいでね』
「わかりました」
『あ、そうそう。洗面所なら、厩舎の二つ隣の部屋だから、今のうち行っておくとちょうどいいですよ』
女将さんはそう言い手拭いを1枚貸してくれると、パタパタと台所へ入っていった。
(…洗面所は…っと…。…ここか!)
洗面所は、言われたとおり厩舎の隣にある部屋(馬の見張り場として使っているのだろう)の隣にあった。
そこにあるのは井戸は井戸だったが…。
ファンタジー世界で王道の“釣瓶で水を汲み上げる方法”ではなく“手漕ぎポンプ式”だったことは、俺の想像の斜め上を行かれていて、さすがに驚いた。
あとで女将に訊いてみよう…。
――――――――――
顔を洗ってさっぱりし、フロントに戻ると、俺用の朝食が用意されていた。
『簡単だけど、モリモリ食べていってね。一杯お代わりまでは無料サービスだから』
「それじゃあ、早速いただきます」
メニューはというと。
・干し葡萄入りフランスパン(多分そうだと思う)
・野菜の煮込みスープ
・焼いた塊肉のスライス
・冷たいハーブ茶
こんな感じだ。
…うん。うまい!
宿の料金は一番安かったが、“安かろう悪かろう”という低料金でありがちなパターンではなかった。
朝食もガッツリ食べられたので、充分に満足できた。
食事も完食し満腹になったところで、さっそく、気になっていた井戸のことについて訊いてみた。
訊いてみて判ったこと。
発明したのはなんと先王という。
先々代の王の息子、つまり先王が、皇太子の時代に手漕ぎポンプ式井戸を提案し、実用化。そして国内に普及させていったらしい。
今では他国にも拡がり、釣瓶とポンプがケースバイケースで使い分けされているとのこと。
スゴいです。まさに発明王です。
フットワークが軽かったんですね、先代国王さま!
会えたらいいなぁ、絶対無理そうだけど。
自分の世界に入り浸っているうち、朝7時の鐘が鳴った。
…やっぱりこの音、ウェディングベルにしか聴こえないです。まぁ、風情としては、除夜の鐘よりは100倍マシか。ファンタジーで除夜の鐘はアリエナイ!…と、個人的に思う。
さぁ、そろそろ王城に出掛ける準備をしないとね~。
~ 明日8時に、村の正門で待ってます ~
(…この台詞、出頭の待ち合わせじゃなくて恋の告白なら良かったのに!)
ご馳走さましたあと俺は部屋に戻り、身支度を始めた。
服装は、冬装備のインナーに着ていた、黒無地のTシャツと灰色のジーンズに安物のスニーカー。
こちらはいま夏だから、長袖Tシャツもダウンジャケットもウィンドブレーカーも不要の品。
他の持ち物は、IDカードとお金くらいなものなので、手早く用意を済ませたあと、女将に挨拶をしてから外に出た。
今日は9月青の3番目。
空を仰ぎ見ると、そこには雲ひとつない青い空が。どうやら今日も暑くなりそうだ。
俺は、アンナと会うべく、待ち合わせ場所の村の正門に足を運んだ。
そしてアンナと合流したところで、9時の鐘にて出発する、ザルツ村からローレンツ侯爵領の中心都市経由、アルナイル王城市街地終点の馬車(運賃は110Ыだった)に乗って、王城へと向かった。
残金:4537Ы
位置的には、ザルツ村の北にローランディの街、その東に王城かある感じです。
地図がないと視覚的に厳しいですね…。
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