第47話:ダメ元で交渉しました。
『今更ですよね?』
アンドロイドのナイスガイ、ケルベロス氏が呆れたような口調で言い放った。
ちょっと造形を凝らしたフルフェイスヘルメットな頭部…その顔から感情は読み取れないが、肩を竦める“ヤレヤレだぜ”みたいなリアクションが正確に気持ちを伝えてくる。
「そこをなんとか! …デジタルが無理ならアナログでもいいんで!」
『そうは言っても…』
「試験機がないと、試作した合金の性能評価が出来ないんですよ~」
『…今までどうやって試作品の性能評価していたか、むしろワタシが訊きたいです。』
「ぐっ…」
的確なツッコミが痛いです、ケルベロスさん。
実は俺、この国の単位系をSI単位系(地球の世界標準規格)に変換してみたり、いろいろ試してみてはいた。結果、だいたいOKだったからついつい…!
確認していなかった。大事な大事な環境評価。
スキルに自動翻訳があるからなんとなく気にしないままで済ませてきてたけど、幾つかの数値について厳密にはかってみたら、案の定、微妙に誤差がありました。くそっ。
恥を忍んで彼に実測の数値を確認したら、当たってました。
小数点四桁あたりで誤差が出たけどね。
水銀柱で気圧を測ったら平均770mmHg(地球は760)だったり、重力が地味〜な差で地球比1.02倍だったり、大気組成が地球で窒素:酸素→78%:21%(+アルゴンが1%)のところ窒素:酸素→77%:21.5%(+アルゴンが1.5%)だったり。
「うわ…ホント、残念ですよね」
俺はガックリ肩を落として所感を述べた。
『キミの頭がね』
「ぐっ…」
言葉を詰まらせた俺に、ケルベロス氏が面白がっているような声色でツッコミを入れた。
フルフェイスヘルメットな頭の彼の表情は判別しがたい。今は彼が意図的にオーバーリアクションしているからわかるが。
…分かるけど…
…なんか悔しい。
それはそれで置いといて。
話を本題に戻して、新規素材に対して評価をするのに機器分析が可能かどうかケルベロス氏に訊いたところ、持ち込みの評価依頼なら可能との回答が返ってきた。
うん、…普通ですね。
評価試験、有償の外部委託なら、地球でも普通にあったし。
「あ、持ち込みでいいんで。分析のほうお願いします」
『了解した。では、話を開発部に通しておくからこれから渡す用紙に必要事項を記入してくれ』
「分かりました」
結末があまりに普通でちょっと驚いたが、外部委託でもいいかということで書類をまとめ、本日の用事を終えた。




