第45話:有能過ぎて事後報告でした。…大事件なのに。
驚愕の文明開化(動機は腐ってはいるが)に戦慄を覚えつつ晩餐を頂いていると、執事のセヴァスさんが食堂に入ってきた。
ノックの音まで紳士的エレガンスさを感じるのは…俺だけじゃないはず。多分だけど。
「お食事中失礼致します」
「いや、構わないよ。…やはり…動いたんだね?」
「はい。全く、彼の国は何を考えているのやら…」
セヴァスさんはあきれ顔でボヤいているが、俺は全く事情が飲み込めない。尤も、政治の範疇の話なら俺がどうこうするという訳でもないので、聞き流すか退室して終わりだが。
「俺、お邪魔かと思うんで帰りますね?」
「いやいやいや! ソーマ君も関係してるから、聞いていってくれると非常に助かる。頼むよ」
「あ、そうなんですか…」
一旦立ち上がった俺だが、義父殿の願いを断る理由もないのでまた椅子に腰掛ける。
何だろう、碌な事にならない予感がヒシヒシと感じられるのだが…。
「さて。先日依頼をいただきましたアルヴァハル帝国の動向についての調査結果について、ソーマ様も同席ということで報告申し上げます」
「セヴァスさん。アルヴァハル帝国って…たしか、王国北部に隣接する国ですよね?」
「その通りでございますね」
「北部っていうと、国境の火山山脈エリアにダメ竜…じゃなくてみんな承知の火竜様が陣取ってますよね…? その辺、どうなんですか?」
「我が国では残ね…いえ我流を貫く人畜無害…でもないですが、まあアレな火竜様といった感じで認知されていますが。帝国からは“憎き邪竜”と見做されているようです」
「うわぁ… まあ、見た目は凶悪だからなぁ…慣れればやたらフレンドリーだけど」
「彼のお方は…ツンデレでございますからねぇ」
「…うん、まあ。否定はしない」
「最近は、薄い本なる絵物語の執筆が趣味だとか」
(ラギィ… 腐竜に堕ちるなよ?)
「人気次第で高価格で売れるようですし、街で飲食するための軍資金集めといった感じですか」
「…セヴァスさんったら…もしや…忍者?」
「忍者が何かは分かりかねますが、諜報を生業とするものでございますかね? …まぁ、正しい情報こそが、わたくしの武器でございますので。誉め言葉として頂いておきますね」
さて、本題に入りますが。
と、セヴァスさんが脱線した話題をバッサリ切った。
「その、帝国でございますが。気候的には東部は雨が少な目で表土はやや乾燥し西部は雨が多くて多湿、夏は涼しく冬は厳しい環境でございます」
「うん、なんとなく土地柄の想像は出来る」
「地力は『まともに開墾すれば』豊穣なほうなのでございますが、残念なことに頑なな民族主義でして…多様で豊富な労働力の活用が」
「ああ、ダメダメなんですね。わかります」
「明察ありがとうございます。今の時代、我が国に内乱を起こして火事場泥棒で利益を出そうなんて、馬鹿げてます。本当に救いのない国でございます」
「でも、国民はどうなんだろ?」
「恐怖政治で手も足も出ないようですね」
「じゃあ仕方ないね~。それで、我が国の火種は捻り潰しですか」
「もう済んでございます」
「はやっ!?」
なんというか、警備部隊も出る幕がないよね。
俺も有事の時は、駆り出される。戦力にならないからヤダとか言えないレベルだしね(兄貴のせいで)。
にしても、前以て事件を潰すって…。
しばらくの間、我が国の行く末は安泰だわね…
今回はセヴァスさんの事後報告ということで完了し、俺は自宅に帰った。




