第41話:いろいろ目撃されてました。
現実逃避なう。
恥ずかしい二つ名を付けられ、炎神ファミリーと神域でてんやわんやし。兄貴が電撃結婚したあの日から月日は過ぎ、もう10月になった。爽やかな初秋である。
こっちの暦、太陽暦に慣れている(慣れていた)俺にとって、言い方がいちいち面倒だ。なもんで、太陽暦仕様で数えりゃいいか!…となっている。
今日は10月8日なのだが、こっちの言い方だと“10月赤の1番目”。
いや、マジめんどくさい。
1年=月28日×13ヶ月=364日。
【春】3月、4月、5月
【夏】6月、7月、8月、9月
【秋】10月、11月、12月
【冬】13月、1月、2月
【第1週】青の週
【第2週】赤の週
【第3週】白の週
【第4週】緑の週
【曜日】日曜=1番、月曜=2番 ~ 土曜=7番
何度も言おう。…めんどくさい!
研究室の仕事、つまり鍛冶やら薬学やらの業務を一通りメンバーに任せられるようになったので、日曜日=お休みである本日を、フルーツ狩りに充てようと目論んだ、というわけなのです、はい。
いつもは西側だけど、西側じゃなくて南西の森に。西の森がホームグラウンドだけど、狙い目なんでございますよ、この森。秋の味覚が豊富なんスよ。
…とはいっても、一般人が町の外を自由に歩けるかといったら、そうは問屋が卸さない。
ここいら一帯の国でほぼ共通、外遊と狩猟に関する法律が定められている。ここには保証的な意味もあるのだ。
大都市の市街地を中心に、そこに繋がる街道や衛星都市(っていうか町とか村?)だけを行き来出来るのが、『D級ライセンス』という発行証である。
大都市の“市街地”というのが、ハイ重要。
治安の悪い地区に行くには、『C級ライセンス』が必要だ。
そのC級ライセンスを取得するには、国営の“狩猟協会”から自衛能力に関する認定をもらわなくてはならない。
他にも狩猟協会はその名のとおり、野獣や魔獣の狩猟を管理していて、害獣が出ると組合員にオファーを出す。狩ったモノの持ち込みも可能。
組合員は腕前によりさらにB級・A1級・A2級・A3級・S1級…といった感じで区分されていて、何かしらの要請が来たら出動する。要請は義務で、もちろん拒否権は無い。
ちなみに兄貴に魔改造された俺は、残念ながらA3級らしい。
これ以上あがりたくないわぁ…
戦後平和になって以来、A2級以上の害獣や凶悪犯は出たことがないという話だし、出ても残念火竜様と雷熊さんに『実力行使』してもらえば円満に問題解決である。
…ねっ♡
というわけで、単騎フルーツ狩りに向かうべく、狩猟協会に立ち寄った。
俺たちの国じゃ、狩りに(フルーツだけど)行く場合には事前の申請が必要だ。
いつ、どこで、どのくらいの期間か。
申請すれば、トラブっても幾ばくかの後ろ楯が得られる。申請がなければ全てが自己責任。
この違いはデカいので、大概の人は事前に申請していく。…後ろ暗い奴は分からんけどね~。
「ちわ~す」
協会に着いた俺は、窓口で書類作業をしているマックスさんに声をかけた。
「よっ! ソーマ君、相変わらず元気だね」
「まー、それが取り柄ですから!」
他の組合員さんの書類申請を邪魔しない程度に、二人で世間話に花を咲かせていると。
ふと、マックスさんが真顔で呟いた。
「で、ソーマ君。いつかはやらかすかなぁ…と思ったけど、ついに人間辞めちゃったんだねぇ」
「ちょっ…! 止めてくださいよ! 不可抗力です不可抗力!」
「分かってるさ~。加護持ちかぁ。いいよねぇ、加護って」
マックスさん、ニヨニヨと悪い顔をしてるよ…。
呟きなわりに、フロアに美声がやたら響いてるよ…!
「おい、アイツが竜殺しの…?(ボソボソ)」
「ああ、竜殺しだ…!(ボソボソ)」
ざわついてるよ…
どーするよ…
「…マックスさん…」
俺が絶望に満ちた眼差しでマックスさんを見ると、マックスさんが苦笑混じりに答えた。
「残念だけどね~。クロードさんがこれ見よがしに吹聴してた。不可抗力不可抗力!」
「ええぇ…」
兄貴のやつ…
なんちゅーことを!
「んがァァァー! …チックショォォォー!」
ムキーッ! と地団駄を踏む勢いで絶叫したら、フロアにいる方々がビクッとした。
…しまった。魔力が人外になってるんだったよ…
組合員さんは大抵魔力感知が出来るので、人外魔力はヤバかとです。
雰囲気的に居たたまれなくなり、いそいそと申請を済ませた俺は、目下南西の森に向かうことにした。
「さーてと」
街を出て、人の往来も疎らになり、さらに人影も無くなった頃。
俺は、おもむろに服を脱ぎ半裸になった。
露出狂じゃないよ? ホントだよ?
『竜化』
精神を研ぎ澄まして、身体を流れる独特の力を制御する。
南西の森はちょっと遠いので、竜形態で飛んでいく腹積もりである。…低空飛行だけどね!
次第に身体の構成が変わっていく。
ベキベキポキポキと、人型から竜形態に骨格が変化していく。…この過程、ちょっとしたホラーかもしれない、と思ってます!
人前では見せられないよ? ね!
「うぉっ!?」
「わぁ!」
俺、忘れてました。
世の中、スケベ心で付いてくる野次馬が居ることを。
「…やだっ! エッチ!」
舞い上がった俺は変なことを叫びながら、はるか南西の空へバッサバッサと飛び去った。
目尻に涙が浮かんできた。
…なぜこうなった。解せぬぅぅぅ!




