第36話:友人の腹を自炊で満たすミッションが発生した件。
『旨い飯が喰いたい。喰わせろ』
はい。唐突に、ぐうたら火竜様から念話が届きました。
『………いきなりだなオイ。どうしたん?』
『街のメシが喰いたくなった。とはいえ単独で行くのは敷居が高い、というか、ぶっちゃけ金がない』
『えぇ~? 俺も金欠気味なんだけど…』
そう。
現在の俺、大絶賛金欠中なのだ。
実験器具を纏めて購入したら、思いのほか支払いが嵩んで、貯蓄がかなり削れてしまったのだ。
いちおう残高は10万円以上をキープしているが、次の給金まで半月ほど期間が残っている。
ぶっちゃけ、火竜様に街のメシを奢れるほど残金に余裕が無いのだ。そういう訳で、安直にOKを出すわけにはいかない。ホイホイ喰わせたら、確実に詰む。
…人並みの食欲なら大丈夫なのにな。残念。
『今、本気で金欠なんだわ。俺の手料理でいいなら食わすけど、どうする?』
『オマエの料理か…。まあいい、今から行くから街の門で待ってろ』
『了解~』
飛行時間を考えるに、ラギィさんの到着まで残り約20分。
ちゃっちゃと材料を買い出ししますかね。
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買い出しで購入した品は…。
・ニンニク(地球とさほど変わらない安定のクオリティ)
・唐辛子(干し白ブドウっぽい見た目に反して獄辛という罠)
・玉ねぎ(地球とさほど変わらない味とフォルム。但し鮮やかな緑色)
・ほうれん草?(大根葉に近いフォルム。鮮やかなオレンジ色が新鮮な証)
・塩漬け豚バラ肉の燻製(血抜きが上手い肉屋兼狩猟者さん…の奥さん謹製。美味)
・乾麺(細めの小麦麺)
この材料で、俺流ペペロンチーノを作ろうと思います。
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「よぉ。悪いな」
「…あぁ、慣れたからいいよ…」
竜人族形態で減速飛行し、目の前に降下、到着したラギィさんは、あまり悪いとは思ってはいなさそうな軽いノリで挨拶してきた。
「まずは、共同調理室に行きますか」
「了解した」
共同調理室は、研究棟の一角にある。
研究者なら誰でもいつでも使える施設で、『みなさん調理場はキレイに使いましょう』の貼り紙のとおり、片付けさえルールを守れば大丈夫なのだ。
整理整頓の不備で管理者からレッドカードをもらうと使えなくなるが、そもそもズボラな人たちは外食派がほとんどなので、共同調理場を使わない。
今回は、自分の部屋でペペロンチーノを作るとニンニクの臭いが籠るので、共同調理室で料理をすることにした。
「では、始めましょうかね」
まずは、まな板に小片をばらしたニンニクを1玉ぶん取り、薄皮と芯を除いてから粗く刻む。唐辛子も、1粒だけみじん切りにする。
フライパンに菜種油をひき、刻んだニンニクと唐辛子をフライパンに投入したら、弱火で香味を引き出していく。
はい、ここで問題。
地獄玉を白レーズンと欺いて、俺に食わせた外道は、だぁれだ?
はい、正解。
答えは…『クロード』でした!
次に、燻製肉を5ミリ厚の細切りに、玉ねぎも同じくらいに、ほうれん草?はザクザクと3センチ幅くらいに刻む。
ひいた油の中で唐辛子とニンニクがシュワシュワ音をたて始めたら、玉ねぎと燻製肉をフライパンに入れて火を強め、玉ねぎはしんなり、肉は香ばしくなるまで炒める。
この調理室。コンロは魔方陣と魔石が使われていて、火加減なんかは魔力で微妙なコントロールが可能なのだ。昔は制御に難があったのでこの部屋を使うことが叶わなかったが、今は使えるようになったというわけである。
この間、ラギィにも麺を茹でる湯を沸かす仕事を任せている。
働かざる者、食うべからず。
塩を入れた湯が沸いたところで、麺を茹でる。
硬さを確かめながら茹でた麺。それを、フライパンに投入して軽く具と和えるように炒め、火から下ろした。
「はいよー。一丁上がり」
「よっしゃ! じゃ、いただくぜ!」
男メシに、皿など要らぬ! …手抜きではないよ!
フライパンのまま、ラギィが俺流ペペロンチーノをがっつく。
唐辛子・ニンニク増し増しが俺のスタイルだが、いかがだろうか?
「………。…旨い!」
「おぉ。それは良かった! 口に合って何よりだよ」
「また喰わせろよ!」
「まぁ、また後でね~」
その後、満足してお帰りになったラギィさん。
翌日、唐辛子・ニンニク増し増しのダメージでラギィさんが腹を壊したのは内緒である。
ドラゴン。
彼らは強靭な鱗による鉄壁の防御力はあれど。
食べ物の辛味刺激に対する耐性はそんなに凄いものでもない。
ドラゴンの弱味をトリビア的に学んだけれど、まさかニンニク1玉で腸にダメージがいくとは思わなんだ。
次は気をつけようと思った。




