第21話:ソーマ先生の化学講座。~鉄の巻~
初めての銅の精錬から2週間。
鉱石の採取も捗り、鉄含有率平均75%の球がかなりの量で蓄積されてきたので、一気に精錬することにした。
ニッケルも鉱石から魔法で分離してストックしてあるけど、ニーズ的にはまず鉄だよね。
…というわけで、今日は鉄の加工をチョイス。
取り置いておいた水酸化鉄(Ⅲ)のゲルが、だいたい薬缶一杯(約18L?)ほど。
不純物の多い鉄球が、ビーチボールくらいからソフトボールくらいまでので大小あわせて20個。
まず、鉄球を【構造破壊】の魔法で適当に粉砕した。俺は魔法の出力がバカだから、破壊にかけては天災だ、いや天才だ。
適当にこの魔法を使えば普通なら砕石くらいにくだけるはずが、俺の場合、砂利レベルになる。
次に、耐熱煉瓦で作った各辺100cm四方の小型の溶融炉にドバッとゲルを流し入れ、【強制脱水】で脱水する。
脱水したゲルはパキパキになっており、軽かったので炉の底から簡単に外せた。
鉄だけは、実験場の製鉄炉を使わない…ということを研究のテーマにしているので、鉄球をいかにして融かすか、いや、溶かすかを考えた。
【火炎放射】の魔法での製鉄は、コントロール的に火災発生という面で危ういので封印。
【温度制御】なら、2000℃以上まで温度をあげてもコントロールの失敗により火災に至らないので可。
うん、間違いなく後者だよね?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺は鉄の破片を持てるぶんだけ持って実験室に戻り、50cm四方の立方体の形状をしたガラス水槽に深さの八分目くらいまで破片を入れた。
そして、希硝酸を破片がかくれる辺りまで注ぐ。
最後に上から、取手のところに穴を開けてコルク栓が取り付けられるよう細工を施したガラス蓋を被せた。
樹脂のチューブがないのは痛いが、コルク栓やガラス管はこの世界にもあるというから助かった。
発生した水素は、蓋につないだガラス管から、酸性ガス吸収用の水酸化カルシウム水溶液入りの広口瓶を通す。
水素ガスをより純粋なものにしたいので、こういった形で貯めることを考えた。多少のNOxガスは出るだろうから、念のためにね。
そして圧縮保管した水素は、のちのち還元剤など様々な用途で有効活用をするつもりでいる。
魔法があるこの世界において、この方法はイチイチ無駄で冗長かもしれないけれど、押さえるべきポイントは手作業でやりたい。せっかくだからね。
破片を入れる→鉄が溶ける(回収した水素を圧縮する)→破片を入れる→鉄が溶ける(回収した水素を圧縮する)→半分くらい脱水する→破片を入れる→鉄が(以下略)→…
…という具合に、鉄を溶かしては水素を回収する作業を繰り返しつつ、鉄(Ⅲ)イオンが溜まってきた頃合いをみて、一度加熱して二酸化窒素を追い出し、アンモニア水を注ぐ。
アンモニア過剰の状態では鉄は水酸化鉄(Ⅲ)になって沈澱、銅はテトラアンミン銅(Ⅱ)イオンになって溶けたままになるので簡単に分離できる。
微量に混じっているニッケルもヘキサアンミンニッケル(Ⅱ)イオンの形で溶けたままなので、沈澱を回収するだけで鉄を選択的に採取できる。
…効率って、大事だよね。
こんな感じでひたすらルーチンワークをこなし、夕方には沈澱を回収し終えた。
これらもまた、外の炉でパリパリに脱水してある。
水酸化鉄(Ⅲ)の乾燥したブツは、実験場の熔解炉に放りこんである。
あとは高熱で還元すれば単体の鉄が得られるので、さっさと残りの成分の分離を済ますことにした。
残った水溶液をある程度脱水し、希硝酸での酸性条件のまま硫化水素をバブリングする。
すると、酸性では沈澱しない硫化ニッケルと酸性でも沈澱する硫化銅に反応が分かれるので、沈澱を回収して、銅の精製に使う硫化銅をゲット。
残った水溶液から硫化水素を追い出し、強塩基の代表である水酸化ナトリウムの代用として水酸化カルシウムを用いて水溶液を過剰の塩基性にすれば、水酸化ニッケルをほぼ選択的に沈澱させられる。
水酸化ニッケルが手に入れられれば、これを焼いて酸化ニッケルにしたあと水素で還元することで金属ニッケルが手に入れられるから、だいぶ楽だよね!
こんな感じで、篩い分けを次々に進めた。
いよいよ金属鉄の製造と、ニッケルの精製を残すのみに。明日からがまた楽しみだ!
☆ ☆ ☆
出来たもの:
・水酸化鉄(Ⅲ)
・硫化銅(Ⅱ)
・水酸化ニッケル(Ⅱ)
・圧縮水素ガス
・(副産物)硝酸カルシウム
凄く説明チックですが、仕様です(笑)
参考資料の無機化学の章に載ってます、ニッケルは無いのもあるかな?
化学化学してますが、よろしくお願いします。




