プロローグ。~異世界に来てしまいました~
小説サイト(ノベルズ系)での初作品となります。
つたない文章ですが宜しくお願いします。
「財布ヨシ! 毛布ヨシ! 色々~ヨシ!」
「…あ、スケブ持つの忘れた(笑)」
(それよか…参考書も持たないと課題が〆切に間に合わない…(泣) …教授の鬼ィ~)
俺・佐藤ヴォルフマン蒼真(21歳)は今、無謀な挑戦をしようとしている。 矢鱈に名前が長いのは、親父がドイツ系で、両親の苗字を突っ込んだからである。
フルネームだと書類やら色々で困るので、外向きにはミドルネームを省略しての、『佐藤蒼真』だ。
外見が長身(185cmくらい)に銀灰色の髪と灰青色の瞳といった感じで、親父寄りな為か、大学に入学した当初は留学生と間違えられたのも笑えない思い出だ。うん、実に笑えないわ~。
…というこんな俺が。
今年の冬は、大学の年末年始休みを利用して、長野の実家から某同人誌の祭典に愛車(←軽ワゴン)で遠征しようと計画している。
チャリ通学で30分のご近所にある大学に進学したから、車の免許を取ったところで長距離運転の経験はほとんど無し。せいぜい一回の運転で数十キロ走るくらいか。
家族には呆れられたが、体調は万全だしタイヤはスタッドレスに交換したし、安全運転で行けば2日で会場に到着できるはず…多分。
12月末だし、雪…降らないはず! 降られちゃ困る…っていうか、今、すごい雨だし!
とにかく、必要かと思われる荷物は全て車に積み込んで。カーナビなど豪華装備を搭載していない愛車で、道路地図を参考にしつつ、一路、東京湾岸の会場に向けて出発した。
――――――――――
昼食をとったり休憩したり、遠征前に焼き上げた自作のクッキーをポリポリつまみ食しつつ…節約のため高速道路を一切使わずマイペースで走ること5時間。
雨、止みません。 運転しにくい!
余裕をぶっこいてたら、甲州街道の旧道に入ってしまった模様。そして先ほど日が暮れた。
…もう一回言います。大雨の降る暗い峠道、『運転しにくい!』
とにもかくにも、一息つくには是非とも市街地へ出たい。雨は相変わらずで“路肩崩落注意”とか“落石注意”とか、もうお腹いっぱいな標識ばかりニョキニョキ生えてて運転するの、疲れてきた。
…気分転換に、コーヒーでも飲んでみるかぁ…
俺は、エアコンの吹き出し口に取り付けたドリンクホルダーに手を伸ばし、缶のプルタブを開けた。
―― その瞬間 ――
100メートルほど先の斜面が大きく崩れ、道路を飲み込んだ。そして道路まで、滑り台のように斜面の崩落と同調するようにずれて壊れていく。
((山体崩壊だ…!))
ブレーキをかけたところで崩壊からの回避は無理だと悟った俺は、思い切りブレーキを踏み込みながらも、首と頭を護るため、助手席に敷いていた毛布を被って祈るように目を閉じた。
間もなく、衝撃が身体を襲う。
(…イベント、…行きたかった…なぁ…)
(…お馴染みのサークル…さんに…差し入れ…の…菓子…焼いた…の…に……)
想像を超える衝撃が身体を襲い、耐え難い激痛に俺の意識は暗転した。
…
………
……………
――――――――――
……………
………
…
『すみませ~ん』
「う…ん……」
俺は、遠慮がちな声の主に身体を揺すられ、少しずつ意識を浮かび上がらせた。
完全に覚醒したので声の主を確認すると、そこには淡緑色の髪と濃緑色の瞳をもった中学生くらいの少女がいた。
『良かった~。目が覚めた! あのぉ…こんな街外れで倒れてて、何があったんですか? お怪我とか大丈夫ですか?』
目を覚ましたもののまだ仰向けになっている俺の様子に、少女は心配そうな表情でおずおずと尋ねてきた。
(……! おいおい嘘だろ!?)
緑色の髪。そして瞳の色。
いわゆるコスプレイヤーさんなら、染髪とカラーコンタクトでキャラメイキングするかと思う。
でも、人工的な彩飾の違和感がどうしても出てしまうのが悲しいところ。しかし、この子の緑は天然の色にしか見えない。生え際とかも、完璧だ。
『どうかしましたか…?』
彼方に飛んでいた意識が、彼女の声で現実に引き戻された。
驚いたとはいえ彼女を無言で観察しているのも気まずいので、俺は、慌てて彼女の問いかけに応えた。
「どうやら大丈夫…らしい。ちょっと左肩と腰が痛いけど。深刻な怪我ってわけではないだろう、ね」
(…山中の崖っぷちから土砂に巻かれて落ちたのに、なんでこんな無事でいられたんだ? それはまぁ、まだ置いといて。…俺、なんでこんなところにいるんだ!?)
何が何だか解らないが、先ずは状況を確認するべく、俺は彼女に色々と話を訊いてみることにした。
「すみません、俺は…佐藤ヴォルフマン蒼真っていいます。長野県に住んでる大学生なんだけど…」
『私は…アンナ・マリーナと申します。サトー・ヴォルフマン・ソーマ…様? 失礼を申し上げますが…ソーマ様はどちらの貴族様でしょうか?』
なんか、アンナの口からおかしな言葉が飛び出した。俺が貴族? どうなってるの一体? 俺は、とにかくマリーから名前というものに関する詳細を訊き出した。
「ちょっと待った。アンナさん、俺は貴族じゃないし、ここ、山梨県ですよね?」
『あ、私のことはアンナと呼んで下さい。そして…ヤマナシケンとは何でしょうか?』
「では…アンナ。ん~、なんか初対面で呼び捨てって違和感あるなぁ。アンナに訊きたいんだけど、ここ、日本だよね?」
『いいえ? ここは“中央大陸東部、アルナイル王国ローレンツ侯爵領、ザルツ村”ですよ?』
…何それ。
日本、アメリカ、ドイツ。…最終手段、地球。
どれもアンナには検索ヒットしなかった。
しかもなんか、異世界臭がプンプンする。どうしよう、この状況…。
『ソーマさん、先ずは街にある神殿で身元照会してみましょ? 神殿なら何か手がかりがありますよ、きっと』
…身元照会…。
とりあえず俺は、ガックリと肩を落としながらアンナの優しい言葉に頷いて、名前の件だけでも片付けることにした。
アンナによると、“隷属人は名のみ、一般市民は名+家名、貴族は名+家名+α…”になるらしい。
「なるほど、そういう名前の付けかたなんだ。変な誤解をさせてしまったな。俺の名前、親父の家名がヴォルフマンで母親のほうが佐藤なんだ。国際結婚ってことで、やたら込み入ってるけど…俺の名前は蒼真。家名は一応、ヴォルフマンになるのかな…。日本人の名前としては微妙だけど」
『じゃ、ソーマ・ヴォルフマンさんですね? わかりました。よろしくお願いします!』
「あ、こちらこそよろしく、アンナ」
こうして、アンナとの出会いから、俺の異世界暮らしが唐突に始まった。
国語の文章としては微妙なところですが、
・文頭一字下げの廃止
・平仮名の漢字書き換え
・助詞の見直し
以上の改稿を行いました。
読んで頂き、ありがとうございました。(´- `*)




