第15話:森の熊さんとシンクロしてみた。
お待たせしました。第15話、投稿いたします。
公言どおり、10月上旬中に出せました。
それでは、よろしくお願いします!(*'ω'*)
二人ながら双角大熊と“クロード被害者の会”をその場のノリで結成すると、彼から『西の森の範囲なら縄張りだし、オレがいつでも護衛できるから森に来た時には任せてくれ』との言葉をもらった。
ジュナさんに教えてもらった範囲以外にも薬になりそうな植物があるから、時間があったらまた来い、だってさ。
驚愕だったのは、双角大熊など高等魔獣や魔人と呼ばれる魔族たちと、獣人族や真人族との関係は、大戦以前は“殺す殺される”・“喰う食われる”の関係だったという。それなのに、コイツのような魔獣が、人間を襲うこともなく敵愾心をもつでもなく自然体で居られる理由を聞いて、納得した。
それは、『生物濃縮による毒性』だった。
様々な食べ物を食べるうちに体内へ高濃度の毒を溜め込んだ人間。それらを喰らい続けた魔獣や魔人達。彼らには奇妙な病気が発病した。
癒えない麻痺に、治らない臓器の不調。ありとあらゆる影響が十人十色に顕われた結果の末に開催された、“魔族会議”で導き出されたのは、『人族を食べたことによる食中毒』という結論。
その結果、魔族が『俺たち人食禁止にしたんで、戦争止めない?』的な意志表明をしたので、魔族に対する守備や長引く戦争で疲弊していた人族達は喜んで表明を受け入れたという。
後々に魔族が停戦の決定に踏み切った真の事情を知った人族達は、自分たちが毒物扱いされたという笑えない結末に、怒るにも笑うにも微妙な何とも言えない空気が漂ったという。
声明には、戦闘狂やら嗜虐趣味やらには注意してネ! と、ここを強調して注意書きが付けられていたらしい。
もはや物理的な意味でも精神的な意味でも喰えない人族から、魔族というだけで怒りの矛先が向けられるのは御免だという切実な思いがこの文面から感じとれる、と、後の歴史家は述べたらしい。
『幸いオレは人間を喰う必要が無い種族だから、木の実を育てて食ってんだけどな。
お前の兄貴の容赦ないスパルタ教育のおかげで、今じゃ自給自足生活ってわけさ』
「何作ってんの?」
『ええとだな、桃だろ? あと、栗、ドングリ、ブドウ、イモ、他にも色々だな』
「多過ぎだろ!?」
何やったってんのよ兄貴…!!
「あ!」
『ん? なんだ?』
重要なことを忘れてた!
「ああ、そういや名前は…? 訊いてなかったよな」
『オレか? オレは…今更気づいたんだがよ』
「うん?」
『オレ、名前ねーじゃん! ホント今更だよ!』
「うわぁ…」
『んじゃぁ、折角だからよ、お前さんが付けてくれよ』
「うわぁ…。マジか? 本当にいいのか?」
『おう。任せた』
「じゃあ。…“ヴォルト”ってのはどうだ?」
『いいぜ。それで決まりだな。オレは今日から“ヴォルト”だ』
双角大熊ことヴォルトは、満足げに頷いた。
『なあ、名前の意味は何なんだ?』
「ああ、意味は“電圧”だ。双角大熊は雷の魔法を使うだろ? だから、聞いた感じも良くて属性もピッタリだから、これに決めたんだよ」
『要は分かり易さを重視?』
「安直って遠回しに言われてる気もするけど…そうともいう!」
『いや、分かり易いのは重要だぜー。変に凝ったのより性に合うわ』
「それなら良かった」
『ああ』
ああそういえば、と、ヴォルトが話を続ける。
『魔獣なんかと契約すると、距離の制約無しで必要な時に呼び出し出来るからな。試しにオレとしてみないか?』
「え? そうなんだ? するする!」
興味があったので、俺はヴォルトと契約してみることにした。
方法は単純。
おでことおでこを合わせて、相手の魔力と同調させるように自分の魔力を流すだけ!
…って。…難しいわ!!
携帯の電波の受信を強めたいときについやってしまう携帯をブンブン振るという無駄な行為と似ている、執拗なデコの擦り付け。
剛毛にワシャワシャとデコを擦り付けるたび、タワシを思い出す。デッキブラシでも可。
『煩わしい』
「イエッサー」
悪戦苦闘してようやく同調させると、頭の中で何かがつながって、契約が完了した。
『では。さっそく繋ぐぞ?』
「OKー」
了解してすぐ、ラジオのチューニングをしているようなノイズが脳内に響いた。
大音量ではないが、ハッキリ言ってこれは気持ち悪い。
例えるなら…歯医者のドリルのような音とか、潮騒とか、非接触式電子楽器のような音とか、色々な音が重なって反響しつつ現れたり消えたりしながら自分に近づいてくる感じだ。
“どうだー?”
“大丈夫かなー? でも気持ち悪いわ、これ”
“慣れだ、慣れ”
“精進するわ…”
『よっし! じゃあ交換してもう一回な』
「あいよー」
さっきの感覚を真似て、ラジオをチューニングするイメージで魔力の状態を変化させていく。そういや魔力操作、まだロクに習ってなかった。どうしたもんかなぁ…
ヴォルトの顔色がよろしくないように感じるのは気のせい…じゃないようだ。
同じような苦痛を長い間味わわせるのも忍びないので、頑張ってなんとかシンクロさせる。
ヴォルト側からの受信は十数秒だったが、俺はもう数十秒単位をかけてしまっている。何とか繋がったとき、ヴォルトはぐったりしていた。
『お前さん… 下手過ぎ。頑張って手伝うからマジで練習してくれよー?』
「…ガンバリマス…」
慣れると数秒で交信できるようになるらしいので、森へ出掛ける上での安全確保のために、真剣に練習することにした。…ヴォルトにとっては苦行以外の何物でもない俺の交信練習、付き合ってくれてホントありがたいと思いました。ごめんよヴォルトくん!
小一時間ほどの練習で、三十秒を確実に下回れる程度には進歩できた。
でもここで、俺は重要なことに気付く。
セレーヌさんと兄貴、放置しちゃったよ!
俺は平謝りで、だいぶ待たせてしまっているセレーヌさんと兄貴に、日没までにはまだ時間があるから先に帰って大丈夫だと話した。
まあ、二人を置き去りにしてしまったけど、わきで話は聞いていたはずだし状況は分かってもらえているだろうとの考えから出した結果だが、兄貴からは断られた。
『お前、俺の今日の職務が何だったか当然覚えてるよな?』
「あっ…」
『そうだ、お前の護衛だ』
「…そうでした。ゴメン」
『分かれば結構。それで、セレーヌさんはどうする? お前が自分のやりたいことを済ますまで、待たせるのか?』
「それは… 自分の我儘でした! セレーヌさん、ごめんなさい!」
『うん、そういうことだな』
「はい」
そして俺は兄貴に、頭をワシャワシャと乱暴に揉みしだかれた。
なんか久々の感覚だな。…昔は普通にアイアンクローされたけど。
俺、ちょっと浮ついてた。反省。
『まずは、セレーヌさんと研究室に戻ること。そのあと森に引き返すと日没は確実だから、今日は諦めろ。フリーの日にまた来ればいいだろう? その時には、俺か部下かが森と街との間だけお前を護衛する形で調整する方向で考える』
「分かった」
『オマエもいいな?』
兄貴は急に、ヴォルトに話を振る。
『も、勿論!』
では決まりだな、と兄貴が言うと、街へ戻ることが決まった。
俺はヴォルトにまた会おうと言い、もうちょっと練習をしたいと後ろ髪をひかれながらも、二人とともに森を後にした。
読んでいただきありがとうございます。
次話も10月中に出せるよう頑張ります!




