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俺、異世界なう。~理系男子徒然日記~  作者: 糖類ゼロ
第2部:つれづれ異世界ライフ編
16/51

第14話:丸薬。そしてある日森の中、熊さんに出会った。

トランペットのマークの黒い丸薬。

筆者はこれの匂いが大好きですω


それでは、どうぞ!



そして、翌日。


『よっ!』

「よっ! じゃねーだろ!」


とてつもなく軽い挨拶に、俺は思わずツッコミを入れてしまった。

今日の兄貴は昨日の金属鎧ではなく革鎧を装備している。

「兄貴、今日は金属鎧じゃねーの?」

『ああ、あれか? あれはお前をからかう…じゃなくて迎えるために借りたものだ』

「いま、わざと言い直したろ」

『まあそれは置いとけ。俺らの仕事は街の警護であって、あくまでフットワークが重要だからな。革


鎧のほうが体の可動域の制限が少ないし、軽くて動きやすいから格闘技を使うのに重宝するんだ』

「さいですか…」

『そういうことだ』


今の兄貴が前世のスペックなら、街の犯罪者にはちょっと同情してしまう。

格闘技やら逮捕術やらの練習台(餌食)にされた俺にとってはね!

お陰で、俺の返し技や回避能力だけは意図せずとも磨かれてしまったが。

体育の柔道とか剣道の授業でも皆によく誉められたものだよ。カウンター技だけは…。カウンター技


だけだけど!

積極的に行くと負ける哀しさったら…切ない!




『お2人とも~。そろそろ出発しましょう~』

セレーヌさんが俺たちに出発を促す。

「わかりましたー」

俺らはセレーヌさんに導かれて、薬草を採るため街の西に広がる森へ向かった。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





歩くこと1時間。

俺たちは、西の森に到着した。


『それじゃ、講義を始めます~。間違いの無いように、良く観察して薬の原料を覚えましょうね~』

「了解でーす」




『では第一問。この草は何でしょうか~?』

いきなり、セレーヌさんから質問された。


紫がかった赤色の花が下向きに咲いていて、葉っぱがアーモンド形をしている。

何となくナス科の植物っぽいことは、花の形から分かるけど…


『は~い、時間切れですよ~』


当然ながら、分かりません!

分からないけど答えられなくてすごく悔しい。負けた気がする!


『正解は、二度咲きスコポリア(二度咲きハシリドコロ)です~。普通は春咲きなんですけど、こ


れは変異種で春と秋に咲くんですよ~?』

「セレーヌ先生、ハシリドコロって確か猛毒植物ですよね?」

『確かに、猛毒で狂乱したり嘔吐したり色々危険な植物だけどね~、用量さえ適切に出来れば胃腸の


薬になるのよ~』


のっけからエラい植物を紹介されてちょっと引いていると、軽く返される。

俺は二度咲きスコポリアの花と葉っぱを摘み取ると、肩にかけたカバンの中から紙とセロテープを取


り出して、標本にして整理するため名前と特徴を書いた紙に貼り付けた。




『次は、キハダの木です~。樹皮から採れる色が鮮やかな黄色で布の染色につかわれるのよ~。内樹


皮の部分を乾燥させれば、胃腸の薬になるの~』


『うむ。オウバク(黄柏)か』

「え? 兄貴分かるの?」

『ああ。嗅覚が鋭敏になったからな。前世で嗅ぎ慣れたあの独特な丸薬の成分だから、分かっただけ


だがな』

ああそうだった。いま兄貴は虎族なんだっけ。納得した。

『この木の果実は食用で、熟した実は香辛料で使うの~。熟したら採りに来るの~』


「その時は手伝いますよ」

『よろしくね~』

俺たちは果実を採りに来る約束をしつつ、さらに森の奥に入っていった。




『次は、これ~。ちょっと齧ってみて~?』

「はい」

俺は、枯れ木の欠片のようなものをセレーヌさんから渡された。

端っこをちょっと齧ってみると…


「甘っっ!!」


何これ甘い! これってもしかして…!


「セレーヌさん、これってもしかして甘草(カンゾウ)ですか?」

『あら~、あちらじゃカンゾウっていうのね~。これはスイートビーンっていう植物の根っこを乾燥


させたものなの~。喉の痛みとか声枯れとかの薬にもなるし、炎症を抑える薬にもなるし、甘味料に


もなるし、色々使えるの~』

「なるほどー」

セレーヌさんの説明を受けながら、俺はどんどんサンプルを集めていく。



「セレーヌさん。この世界って、ミカンとかシナモンとかってありますか??」

俺は、ちょっとした質問をしてみた。

胃腸の薬になる材料の説明が多かったので、陳皮(チンピ)桂皮(ケイヒ)の存在を確かめた


かったからだ。

『ミカンとシナモンなら市場で買えるわよ~? ミカンはまだ時期的に出回ってないですけどね~』



よっし! リーチ!

あと、木クレオソートが揃えば…!





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





『今日はこれで最後です~』


ついに、今日の最後の説明が始まった。

『この木は甘味ブナ(スイート・ビーチ)っていって、今の時期から秋の終わりにかけて甘くて美


味しいドングリの実が採れる木です~。良質の炭にもなるので、木炭作りの職人さんに人気なんです


~。』

『わたしは、職人さんから蒸し焼きの時ときに出る液体をもらっているんですが、水の層からは木精


などが、油の層からは食あたりとか下痢とかに効く成分、木炭油が採れます~』




よっしゃ! ロン(あがり)


ハシリドコロ(ロートエキス)

キハダ(オウバク)

甘草(カンゾウ)

シナモン(ケイヒ)

蜜柑の皮(陳皮)

・木クレオソート


木精って確か、メタノールだったな。

油層は木クレオソート。独特の臭いを放つ黒い丸薬に入ってるやつね。


これでお腹の味方の丸薬を作る材料が揃った。

セレーヌさんに相談して薬が作れるか試してみよう!

俺は俄然やる気が出た。




それに、木クレオソートはフェノール類とか芳香族化合物が主な成分だから、有機合成で別な薬品が


作れるかも。


そんなことを考えていると、セレーヌさんが話を続けた。



『でも…、甘くて美味しいドングリの実が採れる甘味ブナが切られるのはもったいないので、甘味ブ


ナ以外でも同じような材料が採れるとうれしいんです~』

セレーヌさん、やけに“甘くて美味しい”にこだわってるなぁ。好物なのね?

「セレーヌさん、甘味ブナが好きなんですね?」

『好きなんです~!』

言い切るセレーヌさんに、俺は思わず苦笑してしまった。




その時。

ガサガサと藪が揺れて、山羊のような2本の角を持つ体長4mほどの大きさの熊が姿を現した。


しかし、様子がおかしい。

(ヤベッ! どーするよオレ、殺されるよ…! 獣王に遭っちまったよ…!)


言葉が理解出来てしまった俺は自分自身に衝撃を受けながらも、目がうつろになり挙動不審で威厳も


へったくれも無くガクガク震える熊に、その理由を訊いてみた。


「おーい、大丈夫?」

(ダメかもオレ…ダメ…)

半泣きで、熊は兄貴を指差した。

(獣王コワイ… 半殺し…)


俺は、なーんとなく分かった気がした。

この熊、兄貴にトラウマもらってるなー。ボコボコにされて。


訊けば、森が不作の年に隊商の荷物の食べ物を狙って襲い、ちょうど居合わせた兄貴にタコ殴りにさ


れたらしい。笑顔のままマウントポジションで殴りつつ説教する兄貴に恐怖して、二度と襲わないこ


とを誓約させられたらしい。「次は無い」と。

実際、三日三晩悪夢にうなされて、激ヤセしたとかなんとか。


双角大熊(バイコーンベア)は、高等魔獣で人語を理解しコミュニケーション能力も高い。

この時、食料になる植物の育て方を叩きこまれ、頑張っているのはよく分かった。



ここでだ。




うちのオニーサマは何てことしてるんだか!

戦闘狂なの? それとも馬鹿なの? 正義ってなんなの!?


「俺もさー。昔兄貴の実験台になってさー…」

(へ…? アンタも…?)

「そうなんよー。あれはきつかったわー」

(お互い…酷い目に…)


その後。

熊を宥めてストレスケアをしてあげているところで、本日の講義は終了を迎えた。





いかがだったでしょうか?

読んでいただきありがとうございました!

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