第10話:異世界で錬金術師とケミカル談議しました。
自重した、自重したとは思いますが…
マジカルケミカルしてます。
別な意味で、R15になってしまった…orz
(化学ⅠBレベルという意味で)
どうぞよろしくお願いします。
本日、10月2日の月曜日。
今日は、錬金術師のマルコー氏の研究室に行く日だ。
俺の適性に合わせて、月曜日はマルコー氏、火曜日はジュナさん、木曜日はヴェズ&ガドさんの実験室に毎週通うことになった。
研究機関の上役会議での審査により、“研究助手”より上級の“研究員”という職級がいきなり与えられ、休みに充てられている日曜日以外の水曜・金曜・土曜日は、研究棟で自由に研究ができることとなった。
研究棟の機材利用は予約制なので、需要の高い機材を使いたい場合にスケジュールを合わせるのが難儀らしいが。
「おはようございまーす!」
マルコー氏の研究室の扉をノックし、返事があったので入室した。
イェーネンさんはマグカップを片手に、椅子に座って寛いでいた。
『あーおはようさん。ソーマは来るのが早いな』
「あっ! 早かったですか?」
今は午前8時ちょっと過ぎ。そんなに早かったかな…?
『すまんすまん、ちっと言い方が悪かった。全然気にすんな。大概の奴ら、研究始めんのが9時くらいからなんでな』
「なるほど、そういうことでしたか」
『そーいうこと』
マグカップに入っているのはコーヒーだろうか。机の上で、よい香りを漂わせていた。
「昨日の実験、すみませんでした。ところで、あれは何の実験だったんですか?」
気になっていたので、俺はイェーネンさんに訊いてみた。
『ああ、あれな。実験てーか、“水に溶けねぇモンを溶かすための溶媒”を作ってただけだ。最近見つけたヤツだから、名前はまだ決めてねえんだがな』
「溶媒? 作っていた溶媒は何ですか?」
『おお。ソーマは溶媒、知ってるのか?』
イェーネンさんは、嬉しそうに訊いてきた。
「溶媒はつまり、溶かしたい物質を溶かすために使う液体、のことですよね?」
『そう! まさしくその通り』
「それで、合成に使った試薬は何でしょうか?」
『酒精と、“何でも焦がしちまう酸性の液体”だ。俺はこの液体を“焦酸”って名付けた』
(…。…シュセイって何?)
酒精とは何たるかを知るべく、俺はイェーネンさんに質問した。
「マルコーさん、シュセイとはどういった成分でしょうか? 俺のいた世界と共通の物質だったなら、溶媒づくりをお手伝いできるかもしれませんので…」
『ああ。酒精ってのは、酒造りン時にできる成分だ』
「あ、それなら分かります! エタノールのことですね!」
『向こうじゃ酒精を“エタノール”って呼ぶのか。なるほどな。 俺は酒精を精製して、95%まで濃縮することに成功した』
「うわあ、それはすごい…」
実験室レベル、95%エタノールは優秀な出来です。
でも…見たところ、実験器具に冷却管は使っていない。
冷却管が実験台にあれば、エタノールを酒の蒸留で作っていると考えられるのに…。
まさかの…魔法? 魔法で!?
「もしかして、魔法で精製しているのですか?」
『その通り。術式組むのに、時間がかかったがな』
やっぱり魔法か…
異世界だわー。
「実際に見せていただけますか?」
『オッケー。見せてやるよ』
イェーネンさんは、酒瓶を実験台の上に置くと、フラスコの中に酒を入れた。
【計測】と唱えると、青白い魔方陣がフラスコを下から上に通り抜けて消えた。
『酒精度数、16.20% …ね。これをメモって、と』
『はい次。【濃縮】』
次に現れた魔方陣の紋様は、素人でもわかるくらい格段に複雑になった。パパッと済ませているようにみえるのに反して、恐ろしく繊細で緻密な操作であることが分かる。
緑色の光がフラスコに収束したとき、中の液体が減っていることに気づいた。
『さて、酒精度数は何パーセントになったかねぇ? …【計測】』
イェーネンさんは、ありゃ? という感じで、現在のエタノール濃度を教えてくれた。
『ちょーっと雑にしすぎたかな? 今の濃度、92.55% な』
「魔法って凄いですね…!」
ほんの数分でかなりの純度のエタノールが出来るとは、正直思わなかった!
そして何ですか…! サーベイの魔法、機械いらずで反則です。
次。
“焦がす液体”って…あれですかね?
『ああ。それがよ、ヴェズとガドん所で出るガスが毒だっつーんで処理を頼まれた訳よ。そん毒ガスが水に溶けたんでガンガン吸わせてったら、使えそうな2種類のガスが混じった濃いーのが出来上がってよ』
『分けてからもっと濃縮したら、実験着が焦げるわ木が炭になるわのヤバいやつが出来たって訳よ。ちなみにこっちは97.5% までイケてるぜ? もう片方は59.7%だがな』
あぁ… それは“硫酸”と“硝酸”です、イェーネンさん…!
「ありがとうございました。おかげで色々分かりました」
「マルコーさんのいうヤバい液体ってのは、おそらく“濃硫酸”です。薄めると硫酸で、こちらの性質は濃硫酸とはだいぶ違いますが」
『お。“焦酸”、あっちじゃ濃硫酸って名前なのか!』
「そうですね。ちなみに、手とかに付着させたまま放置すると化学火傷を起こしますので注意してくださいね」
『お、おおぅ』
“皮膚が焦げる”あたりで、危険性を分かってもらえたかな?
注意喚起はオーバーくらいでちょうどいいのです。
「そして、もう一方が濃硝酸です。マルコーさんが名付けた硫酸を“焦酸”とよぶと混乱するので、よびかたはこちらを“ショウサン”でお願いします。濃硝酸を薄めると硝酸になってそれぞれ性質が変わってくるので、注意が必要です」
『なるほど、確かに紛らわしいな。そうしよう』
「こちらは、皮膚に付くと付いたところが黄色く変色するので注意してください」
『そんなことになるのか…! 教えてくれて、サンキュな!』
取りあえず俺は、硫酸と硝酸の情報を提供した。
先ずはこれでいいかな?
…というわけで材料がそろった。良かった良かった。
「マルコーさんの作ろうとしていたのは、“ジエチルエーテル”ですね。簡単に言うと、エタノール2分子が濃硫酸で脱水されてくっ付く反応です。高温になると、エタノールが分解してエチレンという別なものができてしまいますが」
『そうそう! それだ。 それなんだが、ジエチルエーテル?の反応温度帯がまだ完全に掴めてなくてよ… その実験中だったんだが…』
「それなら… エタノールと、触媒の濃硫酸を130~140℃ で維持して…。あ、160℃を超えるとエチレンが出来るか下手すると引火爆発するから注意しないと…」
『そうだったのか…! この前は170℃ で術式組んでたから、実はヤバかったのな…』
「ほんの少しのミスで、ドカン、でしたね…」
『…怖っ!』
「それなら………」
『なるほど! っつーことは………』
「そうですね。ならば………」
…
………
…
化学と魔法の融合。
こうして、新たな境地を拓いていく2人だった。
いかがだったでしょうか?
読んでいただき、ありがとうございました!
出来るだけ簡潔にするように努力はしてみたいと思います|д゜)




