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俺、異世界なう。~理系男子徒然日記~  作者: 糖類ゼロ
第1部:異世界転移編
10/51

第8話:異世界の研究所に連れ込まれました。

第7話・第8話の2日連続投稿が達成できました。

お楽しみ頂ければ幸いです。


※ 2015/04/22 誤字修正しました。

『いやー。すまんすまん!』

「うぅ…。ところで兄貴、何で俺がこっちに来たと分かったんだ?」


俺は、先ほど浮かんだ疑問を兄貴(クロード)にぶつけた。


『アホかお前は。ワゴンが落ちてきたと言っただろう? ワゴンには、何がついてる?』

「え? そりゃぁ…。あ! ナンバープレート!」

『そう。そして車検証も、普通は車中に載せてあるよな』


兄貴は車を検分し、遅かれ早かれ俺が現れることを知った。

それで、このイタズラを計画したという。

アルマリオ氏も、兄貴の提案に悪乗りし、今に至ったらしい。


アルマリオ氏は転移者管理部門のトップ、兄貴は兄貴で王国騎士団の重役〔治安維持部隊の隊長だとか〕、という立場の人たちがヤンチャできるこの国は、無駄に平和だなぁとかおもってしまう。


…にしても兄貴、こっちでも警察してたんかい!




◆ ◆ ◆ ◆ ◆





アルマリオ氏に許可をもらい、愛車のもとへ向かった。

近づいてみると、よく爆発しなかったと感心するくらいの壊れ様だった。

助手席は滅茶苦茶に潰れていたが、運転席側は、辛うじて原形を留めている。

後部座席を倒して貨物スペースに布団を敷き詰めていたが、こちらも泥で汚れてはいるものの洗えばまだ使えそうだった。

貨物スペースの端に寄せて置いていた、濃緑色の150Lサイズのキャスター付き密閉型RVボックスも、無事だった。

バイト代をはたいて12,800円で購入したばかりの新品のアイテムだったので、壊れていたら多分泣き崩れた。



『何が入っているのだね?』

アルマリオ氏が、興味深そうにRVボックスを見ていた。

「大した物ではないですが…ご覧になりますか?」

『そりゃもう! ぜひお願いしますよ』

アルマリオ氏はここぞとばかりに喰いついてきた。


兄貴にリア扉をこじ開けてもらって車内からRVボックスを取り出し、地面に置いた。ついでに布団や持ち出せる小物も出してもらう。特に、太陽電池パネル式の充電器は願い倒して取りはずしてもらった。


「ではアルマリオ様、こちらが私の所持品です」

俺が、順に説明していく。最初は、筆記具の類。次に、レポート作成用に持ってきた教科書や参考書の類。そして…

…某イベントの厚いカタログはスルーして…

衣類や靴など。そして車内泊に必要な日用品や食品。



兄貴の生温かい視線が痛いです。

アルマリオ氏は全てにおいて興味を示したが、教科書が気になったようだ。

やはり異世界の書物だからだろう。


「教科書、ご覧になりますか?」

教科書は日本語で書いてあるのでアルマリオ氏には読めないと思ったが、一応聞いてみた。

『では失礼して…【言語翻訳(トランスレート)】』




そうだよ魔法があったよ!





『なになに? 人類が鉄を知ったのは極めて古く…? 鉄鉱石を製錬して鉄器を作るように…ふんふん…鉄鉱石と木炭を火床中で錬鉄に… なるほど』


アルマリオ氏は、食い入るように読み進んでいった。

『ソーマくん、紀元前1500~2000年とは地球の暦でどのくらい前になるのかな?』

「そうですね。だいたい、3500~4000年前になります」


『そんなにも前なのか…! 我々の国の、実用的な製鉄の歴史はまだ1000年にもなっていないのに!』


「今はもう連続鋳造法という技術で、一基の高炉で1日あたり10000トン以上の銑鉄が作られているはずですよ? …こちらをご覧ください」

教科書をペラペラめくると、そのページをアルマリオ氏に見せた。


『グハッ…!』


アルマリオ氏は鉄の製造量に衝撃を受けたようで、目を白黒させた。

『ソーマくんは確かに、大学生?…とかいう職業だったよね!?』

「正確には職業じゃないんですが…」

『なに、プレートには上級魔導研究所の研究生に相当、とあるんだ。問題ない! ぜひ研究所に来てほしい! 頼む!』


血走った目のアルマリオ氏に迫られ、俺はドン引きした。ドン引きしたけど、アルマリオ氏の勢いに負けてつい頷いてしまった。


仕事をどうしようかと考えていた俺にとっては渡りに船だが、どうしよう…


兄貴に助けを求めると、“アルマリオ氏に任せておけ!”と返された。

アルマリオ氏は転生転移者部門の部長だが、適材適所に人材を振り分ける能力は人事部副部長クラスで、かなり信頼できるらしい。

特に、俺たちのようなこの世界で扱いの難しい人間を捌く手腕は、人事部長も舌を巻くという話。


アルマリオ氏が、さっそく手続きを! と息巻いていたので、アルマリオ氏に身を任せて諸々の手続きの作業を進めることになった。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





午後3時。アルマリオ氏により、研究所の空き部屋を与えられた。

六畳間ほどの広さの実験室には、据え付けの机と椅子と、光源用魔晶石(魔導ランプ)。木製の台に薄い石板を載せて固定した、耐火性の実験台。

そして隣には、四畳半くらいのベッドスペースが設けられている。


「アルマリオ様、至れり尽くせりで、俺、なんか恐いんですけど…」


“甘いものには罠がある” そんな言葉が脳裏をよぎる。

『わたし、幸せすぎて怖いの』…とかいう台詞は、こういうシチュエーションでも使用可なんだろうか? …結婚とは違うけど。


罠は無いみたいだが、手続きがあれよあれよとせわしすぎて目が回る。


「アルマリオ様、私物を部屋に運び終わりました…!」

『では次は、研究員証の発行登録と、研究棟使用許可証の発行と、上席研究員への挨拶回りだ! どんどん行くぞ~!』



~軍曹殿! 本機の残弾はゼロです!~

そんな幻聴が聴こえそうだったが、次々と任務をこなし、残るは挨拶回りだけとなった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆



研究棟2階の南側の一角。


『ジュナ君、失礼するよ』

掛札が“休憩中〔居室〕”になっていることを確認したアルマリオ氏は、木製の扉をノックすると、扉をゆっくり開けた。

アルマリオ氏に続き、俺も室内に入る。


『あら、新人さん?』

「ソーマ・ヴォルフマンといいます。よろしくお願いします」

俺が挨拶して頭を下げると、ジュナと呼ばれたその女性は微笑んだ。

『わたしはジュナ・セレーヌ。薬学(ファーマシー)が専門なの。こちらこそよろしくね』

ジュナさんは、軽やかな口調で挨拶を返してきた。

緩くウェーブがかったハニーブラウンの髪をポニーテイルにまとめ上げ、瞳の色は紅茶色。

ちょっと眉尻が下がっているのでぽわぽわとした印象がある。


アルマリオさん情報によると、彼女は真人族の21歳。頭脳明晰の才媛らしく、14歳で研究助手、19歳で上席主任研究員に抜擢されたとか。実はすごいんですね、ジュナさん。


俺はこの世界の医療用医薬品の事情を知らないので、大学での勉強を活かすために、彼女からこの世界の薬学を学ぶことになった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆



研究棟2階の西側の一角。


『イェーネン君、失礼するよ』

こちらの掛札は“実験中〔居室〕”となっていたが、先程と同じく入室した。


『おや? 新人かい?』

「ソーマ・ヴォルフマンといいます。よろしくお願いします」

『俺はイェーネン・フォン・マルコー。専門は錬金術(アルケミー)だ。よろしくな』

俺があいさつすると、イェーネン氏も手短に挨拶してきた。

『名の通り貴族だが、格式ばったのが嫌いなんでな。家から逃げ出してこうして趣味を満喫してる訳で…て、おっと!』


俺たちの来訪で、反応時間か温度をミスったのだろう。やれやれといった感じで、薬品の入ったフラスコを火からおろした。

すみませんでした、イェーネンさん。


淡青色の立てた短髪(ツンツンヘアー)に深青色の瞳の彼は、貴族ということを感じさせない、気さくなお兄さんだった。


アルマリオさん情報によると、彼は真人族の27歳。16歳で研究助手、25歳で上席主任研究員になったとか。

普段は気さくで親切な紳士だが、怒らせると恐ろしい結末を迎える…らしい。この20年、彼の中の眠れる獅子を起こした勇者は、3人いたとか。怒らせた後の経過を聞くのが怖い…けど訊きたい!…訊かないけど。



俺は、彼からこの世界の化学工学を学ぶことになった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆



研究棟の北側にある、高温実験室。


『ヴェズ君!ガド君! 失礼するよ!』

こちらは入り口に“可燃物持ち込み禁止”の立て看板が置かれ、棟の中からガキンガキンというけたたましい金属音が響いてきた。


『おぅ? 新人が来なすったか!?』

「ソーマ・ヴォルフマンといいます! よろしくお願いしやーす!!」

言葉遣いを崩してしまったが、こう騒々しくては仕方ない。なんちゃって体育会系のノリで言ってしまった…。

『おう、活きがいい兄ちゃんだな!』

怒られるの覚悟でいたら、怒られなかった。


『オレはヴェゼルヴィザード・グーラギオン、なげぇからヴェズって呼べ。見ての通り、火の竜人族だ。専門は鍛冶師(ブラックスミス)、よろしくな!』

『ワシはドワーフ族のガド・コーキンじゃ。ワシも専門は鍛冶師(ブラックスミス)じゃが、装飾品の制作も手掛けとるよ。よろしくな!』


ヴェズはなんか、ヤンキーの(アン)ちゃんみたいだな。面倒見が良い兄貴的な意味で。鱗がルビーの輝きを放ってて、いい感じだ。…欲しいとか言ったらボコボコにされそうだけど!

身長は…俺より頭一つ高いくらいで、意外と大きくなかった。体格は雲泥の差だけどね。


アルマリオさん情報によると、ヴェズは竜人族の155歳。これで若手のホープだそうだ。140歳で研究助手、142歳で上席研究員になったそうだ。研究所に来たきっかけは、王国の戦乱が終わって情勢が安定し、平和になったからだそうだ。

彼は結構器用でお菓子作りが好きらしい。本人はばれてないつもりでも、部屋から漂う甘い香りは隠せていない模様で。…意外だ!


ガドは、ドワーフ族の45歳。20歳で研究助手、35歳で上席研究員になった苦労人だ。

提唱した理論が、なかなか花咲かなかったという。



俺はこの2人のもとで、この世界の金属工学を学ぶことになった。








説明回っぽくなりましたが、いかがだったでしょうか?


読んでいただきありがとうございます。

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