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BUDDY ―鋼鉄の相棒と結目―  作者: Sky Aviation
序章 ~遭逢~
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出会い2

『海部田陽一』


 ロボット工学技術関連の科学者で、専門は機械学習を中心として基本的にロボット工学全般。

 12歳という若さで超名門のマサチューセッツ工科大学に入学、MITコンピュータ科学・人工知能研究所に所属し、その後若くして日本に帰国した後日本で独自のロボット工学関連の研究を行い日本の研究開発の発展にも大きく貢献した。


 特にAIシステムの開発では、日本全体のAI開発に大きな前進を促し、彼が独自提唱した非ノイマン型かつ量子ニューロコンピューター理論を基礎として応用させた『セミブレイン型アーキテクチャ(ないしコンピュータ)』を基礎構造とした新型の人工知能モデルをはじめとして、AI・ロボット工学技術界の根底を覆しかねないほど様々な分野で多大な成果を上げていた人でもあり、まさしく誰もが認める“天才”である。その功績は、『IJCAI Awardアワード forフォゥ Researchリサーチ Excellenceエクセレンス』という人工知能研究界でのノーベル賞を受賞したほか、世界各国の研究者らから最大限の敬意をこめて『ジーニアス(英語で天才の意)』と呼ばれるところからもうかがえる。

「彼がいなかったら、世界のロボット工学技術は10年から20年は遅れていた」とか「彼のおかげでロボット工学は次世代の時代に入った」とまで言われるほどの超有名人なのだ。


 日本が生んだ、そのまさに絵にかいたような頭脳的超人は、日本が得意としている精密電子機器やコンピューター関連にも大いにその技術を活用させ、日本独自の量子コンピューター技術や電子機器技術、演算処理能力の高性能化に大きな役割を果たし、結果的にはそれが商業的にも大成功を収める一因になった。ここら辺は、さっきここに来る前の和弥との会話とその前後でもわかる通りだ。

 今はそのロボット工学関連の技術を軍事的に利用するために、政府推奨で技研の陸軍研究所にて特別研究顧問として、自分のロボット工学研究は続けつつも、国防に携わる者としてしばらくそこに身を置いている。




 ……と、俺は聞いていた。



 そう、そのはずなのだが……。




「おぉ、祥樹、久しぶりじゃな」




 なぜか、ここにいる。


 相変わらず老いぼれた声をだすこの老人こそ、その道の人間なら知らないなんてことはあり得ない超天才なのだが、まあ、見た目からはそんな風格は微塵にも感じられない。というか、俺自身が最近それを忘れかけている。それだけ、彼はパッと見は普通にそこら近所にいるジジイなのだ。


 俺は、思わずそのまま聞いた。


「ひ、久しぶりじゃねぇよ。なんでこんなとこに?」


「なんでと言われてものぉ……、あぁ、まだ団長さんから話は聞いてなかったのか」


「は? 話?」


 まあ、たしかにちょうどそれ関連で話そうと思った矢先にあんたの登場なわけだが。

 団長もついでに説明した。


「ちょうど彼にも説明しようとしていたところです。……どうです? 久しぶりに見たあなたの“親戚のお孫さん”は」


「うん……しばらく見ないうちに、立派な男になりおってなぁ……」


「ハハ、そりゃどうも」


 状況が状況ゆえ、俺は喜んでいいのかどうなのかわからず苦笑いして視線をそらしてしまった。


 そう。実は彼は、俺の“親戚”の爺さんでもある。


 昔、俺がまだただの赤ん坊だった時に互いの親戚同士で結婚してたらしく、その結果俺たちも親戚の爺さんと孫の関係になった。ゆえに、彼とは一応面識もあるし、一時期諸事情で彼の保護下に入っていたりもした。

 だが、俺自身が陸軍に入ってからはめっきり会う機会はなくなってしまい、最後に会った日から数えると、かれこれ5年以上の歳月が開いている。何とも久し振りな再会だ。


 しかし、そんな彼がわざわざここに来たってことは、何らかの事情があるんだろうが、はて、いったい何事でここに来たのだろうか。

 しかも、俺がいるタイミングってところからして明らかに俺にも関連がついているんだろうが、まだその意図は全然わからない。


 そのまま爺さんはセンターテーブルを挟んで俺の向かい側にゆっくりを身を下した。

 その向かって左に団長が座り、俺はそれに正対する形でソファに腰を下ろした。


 ひと段落したところで、即行で俺は本題に入らせてもらった。


「んで、なんだって爺さんがこんなとこに? 政府に進められて陸軍の無人兵装の研究開発に特別顧問として雇われたって聞いたんだけど……」


 すると爺さんも「うむ……」と前置きしつつ、団長から差し入れで差し出されたコーヒーを一口いただきつつ、さっそく本題に入った。


「実はな……。詳しくは団長から聞いてくれればわかるんじゃが、日本では前々からある極秘裏の計画を進めていてのぅ」


「極秘裏の計画?」


 なんとまあ、小さい男の子なら目をキラキラさせそうなロマンあふれるワードが出てきたもんだ。しかし、いつの間にそんなのやってたのやら。まあ、極秘裏だから俺がそんなの存在すら知らなくて当たり前なのだが。


 そして、団長がそのあとを継ぐように話に割って入って説明を始めた。


「ああ。日本政府と国防軍、あと、一部民間から雇った専門の研究機関との共同で極秘裏に進めていたものでな。彼には、それの研究開発チームの主任を務めさせてもらっていたんだ」


「え、主任!?」


「そうだ。計画自体は結構前からやっていたもので、建前を作って初期のころから彼はその研究開発に携わっていたんだ」


「ええ!? ほんとですか!?」


 俺は思わず軽く乗り出して驚いてしまった。危うく手に持っていたコーヒーカップの中身がこぼれそうになるが気にも留めなかった。すぐに気を落ち着けて少し頭を下げる。

 団長は苦笑いし、そして隣の爺さんは得意げにドヤ顔するだけだった。


 な、なるほどね、主任か……。俺の知らない間になんつー重要な役割受け持ってたんだ。まあ、今の爺さんの地位を考えればあながち不思議でもなんでもないが。


 しかし、建前、というのがふと気になった。爺さんがらみの事情を聞くに、これはまさか……


「あ、あの、建前ってことは、もしかして例の陸軍の兵器開発顧問云々の話って……」


「ああ。それは、ただの建前だ。実際は、この計画の主任に就かせるための表面上の口実に過ぎない」


「えぇ!?」


 俺は顔をひきつらせて驚いた。ついでにコーヒーの中身飛び散りそうになったけどこれも気にしない。

 つまりだ。ただ単にこの機関に入って研究開発させるための表の理由づけってことか? 陸軍研究開発しているのはうそではないが、その中身は実は国家機密級の、と……?


 ……ハハハハハハ。


「はぁ、なるほどね。どうりでなんも連絡繋がらんと思った」


「え、取ろうとしてたのか?」


「いやぁ、何となしにお盆とかに墓参り行くかって話を出そうと思っても全然つながらなかったからな。……そりゃこんなことやってたらつながらんわ……」


「はは、そりゃすまんの。そういう事情じゃ」


 そう言ってけらけらと笑いだした。

 まあ、そういう事情なら仕方ないだろう。国家機密級の研究をしてて簡単に電話つながったらまずいし、ましてやそこから機密事項漏洩なんて起きたら洒落にならない。

 何を作ってるのか知らんが、爺さんがかかわるとなるとそういったロボット関連だろうか。

 爺さんがこの建前上の役目に就いたのって12年くらい前だったはずだ。となれば、少なくともその時からこの計画は始まってて、しかも初期の段階から携わってたって話からして、もう行ったころにはさっそく研究開発してたということか。


 ふむ……、俺の知らないところで、なにやらとんでもない暗躍をしていたようだ。こりゃ素直に驚いた。そんな政治的・軍事的な裏仕事まで任されるようになっていたとはね。


 ……そんで、


「はぁ……、まあいいや。そんで、爺さんはいったい何を作っていたんだ? なに、戦場で使えそうな遠隔操作の突撃ロボットでも作ったからその試験官にでもなってくれってか?」


 そう冗談気味に言うと、団長もついでになんか二人でけらけらと笑っていた。ウケたらしい。まあ、狙ったから予想通りということで一つというやつだ。

 しかし、そのあと爺さんから放たれた言葉自体はこれまた予想外のものだった。


「……祥樹、中々いい線いってるな」


「え?」


 意表を突かれて変な声を喉の奥から出した。

 遠隔操作ロボットが近いってなると、UAVか? 陸軍が使えそうなUAVでも作ったのか? だが、そんくらいの兵器今更な気がするし、そもそも機密にするほどでもない。というより、わざわざ爺さんが出向くまでもないもののはずだ。となると、一体何を作ったんだ? まさか、ほんとになんかのロボットでも作ったのか?

 そんな感じで思考をめぐらしていると、団長が答えを提示してくれた。


「うむ。まあ、簡単に言うとだ。……実は極秘裏に、開発していたんだよ」




「……人型の、“完全自律思考型の戦闘用ロボット”をな」




 俺の脳は理解不能の判定を出した。


「………………は?」


 思わず自分でもよくわからずなぜかそう聞き返した。顔をキョトンとさせて。手に持っていたコーヒーがとうとう落ちかけたその時、ギリギリで右手に力を入れて落ちないよう持つが、そっちは関係ない。


 ……オーケー、確認しよう。今、なんて言いました?


「だから、開発したんだよ。……人型の完全自律思考型―――」


「か、完全自律ゥ!?」


「ッ!? あ、ああ……そうだが?」


「いやいやいやいや、そうだが?じゃないですよ! 本気で言ってるんですか!? しかも、人の手を離れた完全自律って……」


 俺の体は完全に後ろにのけぞっていた。手に持っていたコーヒーはそのままテーブルの上にあるソーサーに思いっきり叩きつけてしまい、カップ自体は割れなかったがとんでもなく甲高い金属音と共に中身が若干周囲に飛び散った。しかし、今の俺はそんな些細なことに注意は向かない。

 そんな俺にはかまわず、目の前にいる二人は何事もなく普通の表情である。というか「予想通り」とでも言わんばかりに互いに顔を見合わせて若干苦笑いさせている。一体なんの余裕だそれは、と、若干思考停止させざるを得なかった。


 いや、当たり前だ。人型はまだしも、完全自律思考型は聞いてない。俺の予想外をはるかに超えていた。

 完全自律思考型となれば、つまり、人間のように自分で思考し行動するということなのだろうが、今の日本の技術がそこまで達しているのか? いや、日本だけでなく、世界で見てもまだ研究段階のはずだ。今現在普及しているロボットも人間の指示が必要な半自律型だ。

 しかし、今の話が本当だとすれば、極秘裏に日本がその技術でも先行したということになるのだろうか。にわかに信じがたい話だ。


 俺は軽く頭の中で小さくパニックになりつつ自問自答をしばらく続けていた。あまり整理がつかない。

 それを見越してか、団長が話を再開させた。


「まあ、驚くのも無理はない。海部田博士も、開発に際して相当な労力をお使いなさったと聞く。それほど、大きな研究開発内容なんだよ。君、SF好きだって話だから、こういう話は理解はできるだろ?」


「そ、それはもちろんですが……」


 こう見えても、暇さえあれば近未来系SFを読みふけるほどのSF好きだ。自他ともに認めている。近未来が舞台のアンドロイド系SF架空戦記とか特にそうで、隊舎の自室にはその小説が大量に本棚に居座っている。


 その結果、ロボット系の知識も豊富に蓄えている上、自分で言うのもなんだが相当なロボット好きだ。アトムやドラえもんのようなロボットが将来出てこないか、なんていう子供が考えそうな夢を本気で抱いている今日この頃だ。


「しかし、公表されている技術からして、そんなのはあと数年は無理だって聞いたのですが……」


 これは現実その道の専門家などの間で言われていることだ。


 理由としては様々だが、一番は今のノイマン型の処理速度や演算能力が進化の限界を迎えてて、そんなハイスペックは実現できないというのがある。また、非ノイマン型で脳の構造を模倣するという一番最適な方法をやらせても、脳の構造を数学的に模倣するだけでもハードが全然技術的に追いついていない。それよりなら、人工的に作った脳を機械の体に移植したほうがまだ手っ取り早いとすら言われている。それもそれでなんか別の意味で怖いが。


 それだけではない。人間のように一つの行動や判断をすばやく行わせるのにも、相当な技術と苦労が必要だ。一つ手順を覚えるだけでも、実は問題発生から学習、そして再現というまでの過程の手順を細かく分けるととてつもなく複雑で、それを今のロボット、ないしコンピュータにやらせるのはまず困難なのだ。今まで、完全自律のロボットができていない一番の理由がそこにある。


 これだけでも、今の技術をもってしても完全自律のロボットなんて無理難題な話で、それくらい超高度な科学技術が必要だってことがわかるだろう。




 ……ところがどっこい。この爺さんのせいでたった今その説はものの見事に奈落の底に崩壊してしまった。


 その爺さんが説明するには、その爺さんが提唱した『セミブレイン型アーキテクチャ』をさらに高性能化改良させたのを基本構造に、人工知能を組んだらしい。

 セミブレイン型アーキテクチャは、爺さんが数年前に提唱した新しいアーキテクチャで、元のノイマン型の特徴を踏まえ、それをさらに数年前より研究が進んで実用前段階にまでこぎつけかけていた量子ニューロコンピューティングの基礎理論をもとにして構成した、従来の基本の根底を覆すものだ。

 脳の構造を現在判明している部分だけでも数学的に模しており、その他を爺さん独自で効率的につなぎ合わせている。ある意味、天才の爺さんだからこそなせる業だ。しかし、この“通常の”セミブレイン型をもってしても、先に言ったような完全自律に必要な条件をすべてクリアすることはできない。


 それでもセミブレイン型をベースに選んだのは、爺さんにとってはこれのほうが、これがもつ「従来より比較的単純な構造で高い性能を保てる」という特性上、より高性能な人工知能を作るのに最適なのだそうだ。これをさらに改良に改良を重ねることによって、より高性能・高効率な上に自分から人間のような複雑な思考をすることができる人工知能を開発するに至ったという。


 途中から難しい専門用語とかも出てきたので後半からは軽く聞き流したりもしていた。


 しかし、それでも、これだけは言えた。


 ……この爺さん、



「(……ヤッヴァイもの作りやがった……)」



 当然、呆然とせざるを得ず、説明途中からもう放心状態ギリギリに迫っていた。すでにコーヒーカップはソーサーの上。まだ若干残ってた中身もすでに完全に冷え切っている。これ、あとでどう処理しようか。こんな中途半端に冷えたコーヒー飲みたくない。

 途中から半ば自己自慢ともいえるような口調になった爺さんの解説に半ば唖然呆然としつつも、その戦闘用ロボットに搭載している人工知能に関してあらかたの説明を受けた後、団長は俺のこの状態を見て少し苦笑いしながら続けていった。


「……まあ、詳しいことは俺もよくはわからないんだが、とにかく今回の計画において、この研究はとても大きな成果だったわけだ。たぶん、ロボット関連にド素人な俺より君のほうがよっぽど理解できていると思うが……」


「まあ……そうですね……」


 今の俺にはそう答えるのが精一杯だった。理解できるからこそ、この途方もなさが伺える。

 爺さんは今もなお得意げにドヤ顔している。はぁ、もういいよ。こればっかりは勝手にやってろ。


 そう思いつつ、一つの懸念も生まれる。


「……でも、もしこんなのが公になったら大騒ぎですね……」


「まあ、そうだろうな。特に欧米とか……」


「ええ……。もう、向こうにしてみれば大発狂ものですよこれは……」


 団長と思わず笑えない言葉を交わす。爺さんも、そこは懸念していたようで、少し顔をしかめていた。




 というのも、これは宗教上の問題がある。日本と世界を比べると、その反応に極端な違いが見えてくるのだ。


 神道や仏教を思想理念としている多神教民族の日本人は、『八百万の神』という万物に神が宿るという思想を持っており、人間以外のこの世に存在するいろんなものに魂が宿っているという考え方がある。外国の思想等から閉ざされた海洋国家という地理条件も、これに拍車をかけている。無機物から有機物まで、なんでも対象になる。擬人化も、結局はそれの延長線上だ。

 故に、それらに対する感情表現も豊かだ。その鉄道や飛行機が旧式化して引退する時にその最後の姿を見て感極まって涙を流す、旧国立競技場が取り壊される時に壮大なお別れイベントをブルーインパルスの展示飛行付きで開催する、なんてのをするのはたぶん日本ぐらいのものだろう。


 別にこういうのは今に始まったことではない。実は結構昔からある傾向なのである。


 平安時代に書かれた回想録の一つで有名な『更級日記』の、晩年の記“門出”にそれがわかる描写がある。

 これの作者である菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめが、まだ小さいころに地方から京の都に引っ越すとき、願い事のために作った仏様を見て別れを惜しんで人知れず泣き出した描写がある。おそらく、その仏様に対する思い入れから出た涙であろう。読んでて結構同感できる俺も、やはり生粋の日本人である。

 これは、作者本人が事実をもとに書いた日記なのでほんとにあった話で間違いないのだが、昔から日本人はそんな感性を持っているということがここからもわかる。

 

 元より、それだけでなくアニメや漫画といった二次創作の影響もあるだろう。日本ではロボットは基本お友達という立場で描かれているので、昔から想像力豊かな日本人にとっては、それらはいつの間にか「ロボットが友達だったらなぁ」といった願望にもなったのかもしれない。


 ……しかし、それに対して真反対ともいえるのが欧米人だ。


 こちらの国の人は大抵は自分の信仰する神はキリスト様一人だけという一神教国家だ。だから、こんな無機物なんかに魂とかそういうのは感じないし、愛着も日本人ほど顕著にわかない。ただのモノかなんかだ。


 今回のような人型の完全自律思考型なんてもんが出てこようものなら、まず彼らが抱くのは『恐怖心』だと思われる。

 これは、ある意味“生命を想像したも同じ”と彼らに考えられた場合、そうでなくてもロボットが人型かつ半分自律なのに対してすら少なくない議論が沸き起こったらしい彼らにとってはこれは一大問題だ。

「その人間並みの思考が原因で我々人間に牙向いたらマズイ」といった、日本人からすれば「なに言ってるんだお前は?」とも言いたくなることを普通に考えるのが彼の国々だ。


 また、こういった欧米国の間でこの話題になると出てくるのが『フランケンシュタイン・コンプレックス』である。

「人間そっくりのロボットは作りたいけど作ったら作ったでなんか怖い」という矛盾ともいえる複雑な感情のことで、特にアメリカではこれの傾向が高く、日本人は極端に低い。日本の有名なとあるSF作家さんが「欧米はフランケンシュタイン・コンプレックスに囚われてるけど、日本人はフランケンシュタインにしてやれなかったコンプレックスに囚われてる」とかいうジョーク交じりの内容の短評を言っていることからもそれは伺える。


 ……尤も、日本人がそういった異質な文化や存在に寛容で協調的だというのも原因にある。だから、昔の偉い将軍たちは自国の文化が汚染されたり、結果的に自分たちに危害が加われないようにバテレン追放令やら鎖国やらを起こして、一時期ではあったが他国の宗教を完全に遮断して布教を防いだのだ。

 しかも、日本人はそれらを勝手に変えてしまう。クリスマスしかり、バレンタインしかり。それが、「日本人」なのだ。

 だが、欧米人にはそれがほとんどない。日本人と考えることが違う上、こういった懸念も必然的に発生する。




 しかも、話を聞いていれば、人間としっかりハイレベルな会話までできるらしい。はて、いつの間にそんなのを作ってたんだよと爺さんをしばらくの間問いただしたいところだが、今は我慢だ。


 団長が続けた。


「しかも、その性能自体もすごい。簡単に言えば、人間顔負けだ。身体能力なんて、はっきり言ってひどいもんだ」


「そ、そんなにですか?」


 この場合のひどいは、間違いなく“すごい”に部類するものだろう。確実に。


 そしてまた自慢交じりの説明を簡単に受けたわけだが、それでも長くなるので一言で要約するとだ……。うん。




「……アホちゃうか?」




 そんなぶったまげたことを言ってしまうほどのものだった。


 導電性高分子ゲル(ICPsG)を使った人工筋肉に始まり、各高性能アクチュエータの人工知能によるネットワーク制御化と多機能人手型マニピュレーターの搭載、従来の炭素繊維強化炭素複合素材(CPP)を改良させた複合強化型炭素繊維強化プラスチック(CRCFRP)で構成される強化基礎骨格ベーススケルトン(Base Skeleton:BS)と主要装甲メインアーマー(Main Armor:MA)、リアルな発音を重視させた人工声帯と口部や各種主要機器の予備などの必要機能を多数乗せた頭部……などなど。難しい単語をつらつらと並べたが、とにかく性能が確かに“ひどい”。


 あとで機密に触れない程度に詳しく書いたアウトラインシートを渡してくれるらしいので、わからないところはそれで確認することにする。


「あぁ、それと、そいつもうすぐここに来るから」


「はぁ……、ん? え!? 今日なんですか!?」


「ああ。すまんな、機密の関係上今まで一部の人間に限って黙っていたんだ」


 涼しい顔でコーヒーを嗜んでいる団長からサラッと言われたこの一言を俺は一瞬聞き逃すところだった。

 聞くと、どうやら動作負担等の試験のために実施される実地試験期間中はもちろん、その後も、今後の戦闘用ロボット開発のために役立てる戦術データ等の回収のためにそのまま正式に配備されるということだった。わざわざ他のを作らないのは、どうやら予算の都合らしい。金が足りなくなるほどって、一体そのロボットに国家予算のいくらつぎ込んだんだ。金額がめっちゃ気になるところだ。本音嬉しいんだが、なんか疲れて思い切って喜べないこの俺の不幸。


 はぁ、なんか本格的に疲れてきた。俺は、さっきからどんどんと明かされる驚愕な事物についていくのに一苦労していた。日中の訓練での疲労も相まって、俺の身体的負担はそろそろピークを迎えようとしていた。


「……あー、それで、そのロボットと最初の一件にいったい何の関係があるんで?」


 とりあえず、今の俺の気持ちを落ち着ける意味もかねて話題を少しだけ話題転換。もうロボットのチート説明はこりごりだ。

 とはいえ、このころになるとそのロボットに対する興奮も覚えてくる。なんとなく、子供の時のようなあのわくわくした感情が湧き上がってきていた。ロマンあふれることなんだ。しないわけはない。しかし、ここは抑える。


 団長も思い出したように相槌を打ちながら言った。


「あぁ、そうそう。それについてなんだが……」


 と、また話を続けようとした時に、


「……ん?」


 また話を遮るようにドアがノックされた。う~ん、なんとも図ったようなタイミング。しかしまあ、こんな時もあるだろう。


「お、きたか」


「もしかして、例のロボットか?」


「うむ。ちょっと待っておれ。迎えに出る」


 そう言って爺さんは「よっこらせ」と呻きつつ杖を支えにしてゆっくりと立ち上がり、自分が行くという団長をやんわりと断って自分から扉のほうに向かった。

 俺も団長と共に迎えるために立ち上がって、そのロボットが来るのを待っていた。


「……なにがくるんだろうなぁ……。団長、先に見たりしたんですか?」


「ん? あぁ、一応ここにくるにあたって研究施設に視察に行かせてもらったのだが、ちょうど動作試験の最中でな。……いやはや、中々精巧だったぞ?」


「ほほ~う……」


 精巧というだけあって、隅々まで細かく作られているんだろう。どんなのが来るか、そんな子供じみた濃い期待に思わず心が躍った。


「……なんだ、楽しみか?」


 団長からそんなことを少し口をニヤッとゆがませつつ言われた。顔がニヤついていたのだろうか。和弥が今日の訓練中、ヘリの中で言っていたこともあながち否定できないかもしれない。俺もまだまだだ。

 楽しみでないはずがない。それこそ、最初はあまりの事実に驚いてパニックになりかけていたが、それでも、冷静になってみればこれはすごいことなんだ。


 日本が、初めて本格的な完全自律型の人型戦闘用ロボットを、極秘裏に開発した。この事実は、ある意味、人類がかつて夢見ていたSF世界の一つを達成したといっていい。SF大好き、アンドロイド系大好きの俺からすれば脳内でアドレナリン大噴出ものである


「そりゃもちろんですよ。完全人型の戦闘用ですよ? 楽しみでないはずがありませんよ」


「ハハ、最初はあんなに驚いてたのにか?」


「最初は、ですよ。冷静になれば、これほどの偉業はほかにないんです。 今、俺たちは人類の科学技術の進化の産物と対面しようとしているんです。興奮しない人間なんていませんよ。フフフ……」


「……まるでおもちゃを与えられる前の子供だなおい」


「あー、やっぱりそう見えます? でも、ほんと楽しみなんですよ……。やっぱり、来るとしたら現実的に見てロボットらしいごつごつした感じでしょうか? あ、でも人型だからある程度似せるとして、やっぱり無難に無機質な感じで……」


 それこそ、あの『アイロボット』みたいな、人間っぽさはあるけど完全にロボットってわかるようなああいう雰囲気のものだろうか? または『バイナリ―ドメイン』のあのユーモア満載のフランス製ロボットみたいにゴツゴツした感じだろうか。

 まあ、この際、あの近未来SFのあれが実現できてるなら何でもいい。とにかく、早く一つこの目でそれを拝ませてもらって……


「え?」


「……え?」


 ―――とか思っていたら、団長が思わずそんな声を上げていた。相手は俺である。

 一瞬何のことかわからなかったが、団長が何やらを察したようで「あ~……」と小さく相槌を打ちながらまた言った。


「……ま、まあ、うん、精巧なのは間違ってないが……、う~ん……」


「……?」


 団長が少し首をかしげて、視線をそらしながらバツが悪そうに苦笑いをしていた。

 「こりゃ困ったな」とでも言わんばかりの顔である。俺が一体何したっていうんだ。ただ単に妄想ふくらましてただけじゃないか。


「……あぁ、きたきた」


「お?」


 すると、ドアのほうで一人の男性が見えた。

 少し中年の方だが、どうやら、遠くからかすかに聞こえる会話からして副主任の人らしい。彼が、少し遅れてそのロボットを連れてきたみたいだな。


 少し会話していたのち、団長に入室の許可を申請して即行でオーケーサインをもらう。すぐにその副主任の方らしい男性が少し中に入り、外に向かって手招きしていた。

 いよいよ、その例の極秘裏に計画していた戦闘用ロボットという名の“男のロマン”がやってくるわけか。


「(さーて、どんな姿か、この目で拝ませてもらおうじゃないか……)」


 俺は目をキラキラさせて扉のほうを見ていた。

 なぜか隣にいる団長は俺を横目に少し複雑そうな視線を送っていたが、まあ理由なんて後で聞けばいい。今はそっちなど問題ではない。今俺は忙しいんでちょっとほっといてくれ。


 そんな細かいことにはかまわず、俺はその扉からくる“夢”を待っている。そう、これは俺にとっての“夢”なのである。

 アトムやドラえもんといったロボットに出会いと今までずっと願い続けてきた俺の夢。それが今、実現されようとしている。


 そして、ついに……


「(お?)」


 俺の興奮は最高潮に達する。耐えきれず胸が和太鼓を思いっきりたたいたようにバクバクと高鳴る。抑えろ抑えろ。ここで焦ってはならない。落ち着くんだ俺。


 俺の期待の視線は、見事に扉に集中している。


 そして……






 ついに、副主任さんらしき人と入れ替わるように、その扉の陰から例の戦闘用ロボットの姿が……




















 ……あ、あれ?








「……え、え?」



 ―――と、その扉の外から入ってきたものに対して、思わず頭に「?」と疑問の感嘆符を大量に浮かべた。あれ、おかしいな。ロボットが来ると聞いてたのに、なんだこれは?


「え、あ、あの……、だ、団長、これ……」


 視線をずらさず言葉を探すように団長に聞くが、団長は相変わらず気まずそうな空気を出しつつ苦笑い。というかより、なんとなく俺のこの疑問を予想していたのか、回答に困っていた。

 俺の疑問の回答が得られないまま、俺はその入ってきたものをそのまま凝視してしまう。頭の中でもこんな感じで整理がついていない状態だった。

 どうにかして落ち着けさせようにも、それが中々できない。理由は言わずもがなだ


 その扉から入ってきて、今俺らの目の前にいるのは……


「……あー、爺さん? この人は……」











「ど、どこの、どちら様でしょうか?」












 どっからどう見ても、最新の迷彩作業着を着た“ただの若い女性”だったからだ。












「ん? どうかしたのか祥樹?」


「いやどうかしたのってあーた」


 俺は何の疑問も抱かない爺さんにおもわず昭和風味のツッコミを入れた。


 その女性は、若干茶髪がかった黒髪ショートで、俺より背の小さい大体160前半くらいの、胸は控えめ、というより、ほとんど平のスリムな体格を持つ比較的小柄な人だった。しかも、お世辞抜きで結構可愛い。明らかに見てくれは俺より若い。

 当のその本人も、何の疑問もなく俺のほうを一直線に見ている。女性にまっすぐ目線を指された経験はほとんどない俺にとっては少し緊張する行動だった。まっすぐなその瞳はきれいで吸い込まれそうな錯覚を覚えるが、しかし今は、緊張はしていても、そんなことを一々気にしている暇はほとんどなかった。

 俺の疑念は絶えない。一体彼女は誰なのか。ロボットでなくてなんで彼女がいるのか。当然、爺さんにその疑問をぶつけた。


「爺さん、この人だれ? ロボット来ると思って構えてたらどこのどちらさんの方ですか?」


「……は?」


「いや、は?でなくて。いきなり入ってきたのはまだいいとして、彼女の身分をだね……」


「いや、身分って、彼女は……」


「……あ~、わかった」


「?」


 なるほど。まあ、冷静に考えてみればたぶんこれしかない。いや、副主任と入ってきたんだ。これしかあるまいて。


「なんだ、やっと察したか?」


「オーケーオーケー。理解したぜ。……なるほどな、彼女は……」





「……その、ロボット研究開発に従事した研究員の一人だろ?」





「ズテッ」


 なぜか爺さん隣にいた団長が昭和芸人の如くズテッと肩を落としたが、まあそれ以外考えられなかったのでたぶんこれだろう。なんでズテッとしたのかは知らんが。


「あれだろ? 若きホープというか、ロボット工学関連で超優秀な若手を使ったんだろ? それで、迷彩着てるのは彼女自身が陸軍ファンというか、その道のオタクだったからとか。まあ、一応戦闘用ロボットという名の陸軍兵器の研究をしてることに変わりはないんだから、そこらへんは詳しくてもおかしくないわな。……にしても、結構な美人さんで……。あぁ、どうもどうも。初めまして」


 そんな感じで彼女に接近しつつ軽くあいさつを交わす。


 ……が、


「……?」


 彼女は、なぜか不思議そうな顔をして首を小さくかしげていた。


 ……あれ?


「……あれ、なんか変なことしたっけか?」


 そう思わず小さくつぶやいた。


 いや、俺自身は別に変なことは……あ、もしかしていきなり美人さんとか攻め方向の単語を発したから戸惑っちまったか? あっちゃ~、こりゃまずいことをした。


 自分に正直というか、こういうことを言うのに一切ためらいを感じたことがなかった自分だが、これは少し配慮したほうがよかったのだろうか。というか、よく考えたら初対面の人からいきなりこんなこと言われたらそりゃ変に思うか。考えてみれば、今までの人生で全然経験なかったしな、「あいつ」がいた関係で。


 しまった、失敗した。これはどうしたものか……。


「……なにしてるんじゃ、祥樹?」


 すると、隣にいた爺さんが怪訝な顔をして俺に聞いてきた。


 俺はいきなり隣から言われたのでハッとしつつも、少し慌てた感じで答えた。


「あ、いや、初対面の人相手にちょっといきなり失礼すぎたかなと……はは……」


 しかし、爺さん自身はそんな感じの答えを期待していなかったようだった。

 怪訝な表情は崩さない。いや、むしろ余計怪訝さが増した。


「ん? いや、そうでなくてじゃな……、いきなりなんで挨拶をと」


「……は?」


 なんで挨拶と言われても、礼儀を尽くすのは当然のことだろう。突拍子もなく前座もさせずに勝手にやってしまったのは確かに申し訳ないが、しかし、別に間違ったことではないはずだ。むしろ、団長含めアンタら二人はどうなんだ。もうすでにしてるのなら別にいいが……。


 しかし、そんな俺の疑問はなぜか相手方には理解してもらえていないようだ。眉間にしわを作り、怪訝の表情は相変わらず崩さない。


「今わしはロボットを連れてきただけで、別にわざわざ挨拶などは……」


「うん、それは知ってるって。だから、彼女はそれを連れてくる研究員の一人なんでしょ? で、今もうすぐロボットがここに……」


「は? いや、もうここに来とるぞ?」


「……え?」


 俺の考えていた回答パターンより思いっきり外れたのが来たために思わず目を見開いて爺さんを見た。

 来たって、一体どこの話だ。廊下か? でもそれだったらもう入れてるよな。つまりこの場合の「来てる」の意味には当たらないわけで、この場合で言ったら……えっと……


「来てるって……、どこによ?」


 俺がそう聞いた時、


「いや……、ここに」


「?」


 爺さんはそのロボットのいる方向を指さしてくれたのだが……、


 ……その方向に、俺は目を疑った。


「…………え?」







 その先は、なぜか、今さっき入ってきた“若い女性”だった。







 ……………は?





 俺の頭の中が「?」で完全に埋め尽くされた。

 アニメだったら背景が「?」ばっかりのアイコンが大量に散らばってる描写がでてるところであろう。それほど、今の一言で俺の頭の整理がつかなくなってしまった。

「とうとう頭おかしくなったかこの爺さん?」と言いたくなるほどの訝しげな顔を爺さんに向けてやった。


「……え、彼女は若い女性の人間でしょ? どっからどう見てもロボットじゃないでしょこの人は?」


 全力で戸惑いつつ言いはしたが、一応は普通に人として当たり前の反応を示したつもりだった。誰だって、この場面に立ったら誰だってするはずの反応を俺はしたはずだった。


 そう、そのはずだったのだ。


「は? いや、彼女は“人間”ではないぞ?」


「……はぁ?」


 ついつい他人をバカにするような呆れたため息を出した。人間をロボットと言い出したぞこのジジイ。そろそろ年か?

 爺さんからの回答にそのまま固まっていると、団長が割って入ってきた。


「まあ、俺も最初聞いた時は驚いたんだが……確かに、彼女は人間じゃない」


「え?」


 団長までそう言ってきた。その顔には何のウソ冗談等の他意はない。これが、俺の頭の中にさらに大量の「?」を浮かばせることとなったが、さらに団長は追い打ちをかける。


「というか、わざわざ研究員が迷彩服きてここに来るかよ。お前の爺さんやさっき来てた副主任の人も、しっかり白衣で来てるってのに、なんで彼女だけ迷彩服なんだ。いくら陸軍オタク云々とかそれに無理やり合わせた理由つけても、それはいくらなんでも無理がないか?」


「うっ……」


 た、たしかに。わざわざこんな重大な研究に従事する人が自分だけ他と違う服着てるとか、集団で研究することになるのを考えるとあんまり好ましくないよな……。自分だけ違うとかって、連携感がないし。

 確かに、俺が考えていた理由自体も、あんまり理にかなってないしほぼ無理やり感満載だ。身に着ける必要はないな……。


 ……え、てことはちょっと待て。それ以外で陸軍迷彩を着る理由って言ったらこの場合……



 ……ハ、ハハハハハ、じょ、冗談きついぜ。



「な、で、でも、さすがにそれは冗談ですよね? ハ、ハハハハ、ふ、二人とも冗談きついなぁ~もう。今年分のエイプリルフールはとっくに過ぎましたよ?」


 少し焦り半分で自分を落ち着ける意味もかねてかました震え声満載のジョークは、その焦りを取り払うどころか、逆の効果を招きかねない内容の返答をさせた。


「いや、ところがどっこい残念ながら冗談でも何でもないんだな、これが」


「……え?」


「さっき、俺が言ったことに嘘偽りはない。確かに彼女はこんな姿をしてはいるが、だが、何度でも言おう。彼女は……、“人間じゃない”」


「ッ……!」


 団長は自信をもっていっていた。彼女を見た時、自分でも信じられないといった感じで少し首を横に小さく振っていたが、その目に、ウソ偽りはなかった。

 目が泳いでいない。ウソを言っている目ではなかった。いや、というかよくよく考えてみれば、一々こんな時に冗談ぬかす理由が全然ないしそんな人じゃない。ウソをつくメリットがなかった。



 ……ということは……



「……て、てことは……まさか……」



 俺は驚きを包み隠さず、喉の奥から冷蔵庫にしばらく缶詰にされたような震え声を出しながらその驚愕の目を彼女に向けた。

 相変わらず、彼女は何も言わずにこっちを見ている。考えてみれば、ただの若い人間の女性が、ここまで何も言わないどころか、表情一つ変えずにこっちを見続けていられることさえおかしいんだ。さっきの挨拶の件もあるし、何かしらの人間らしい反応があってもいいはずだ。ただ首を傾げて終わりとか、いくらなんでも“静かすぎる”。確かに、この点に関しては人間とは相違がある。


 それが、ただ単にこの場合の人間らしい反応の仕方を、まだ“完全に理解できていないから”だとすれば……。


「……そうじゃよ。その、まさかじゃ」


 そんな俺の考えを見透かしていたのか、爺さんは割って入ったそう得意げに言った。

 彼女のほうに手の平を上にして彼女のほうを差し、そして、宣言するというか、少し声のトーンを上げていった。


「……うむ。では、紹介しよう。彼女こそが、先ほど話していた、完全自律思考型の戦闘用ロボット……」









「『RSG-01X』じゃ。こう見えて、正真正銘の“戦闘用ロボット”じゃよ」











「…………ええぇぇぇえええええ!!!??」











 俺は思わず叫ばずにはいられなかった…………

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