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BUDDY ―鋼鉄の相棒と結目―  作者: Sky Aviation
序章 ~遭逢~
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〔RSG-01Xに関する最終報告書〕【国防省最重要機密】

今回から本編はいります。


※なお、これはリアリティ()を出すためのちょっとした演出的回のため読み飛ばしは可能です


2030年4月23日                                                                                                                                      国  防  省


           RSG-01Xに関する最終報告書(簡易)

               ―最重要機密扱―


1.試験機ロールアウトに関する報告

 国防省より、明日の午前にて完全自律思考型戦闘用ロボット「RSG-01X」(以下、当試作機と呼ぶ)の、本格的なロールアウト、及び実地試験の開始が行われることを報告いたします。

 ロールアウトとはいえ、この件は総理のご存じのとおり特定機密事項の中でも最重要機密事項扱いとなり、この件を認知しているのはNSC各員と仲山副総理大臣、そして、「RSGプロジェクト」開発メンバーなどごく一部の者のみとなります。

 現在、明日の実地試験地への派遣に際する最終チェックを行っている段階であり、順調に進めば今日中に完了し、明日の午後に派遣されることになる予定です。

 派遣に際して、機密保持のため当試作機の身分は国防省のほうで仮のものを作成することとなります。

 実地試験終了後は、開発リーダーである海部田先生の提案通り、歩兵部隊単位での戦術/戦闘データ収集計画に則り、多少の改良を加えたのちそのまま部隊に制式に配属となる予定です。

 総理には、今一度翌日のNSC会談にて改めて機密保持に全力を注ぐよう注意喚起をして頂きたいと思います。


2.本試作機開発の狙い

 当試作機は、正式名称「機械化戦闘援護兵」として、各種戦闘地域での所属部隊の戦闘支援・電子的支援を行うとともに、今後発生すると予想される各種災害による被災地への派遣や、そのほか原発内部などの各種危険地帯に対する多様な状況下でのアンドロイド機材の投入に際しての、機材自体のデータ収集を目的とした事前の動的実地運用試験のために開発された。

 戦闘能力に関しては、近年動きを増している世界軍事戦略の転換に合わせており、対テロ・ゲリラ戦闘を重視された設計となっている。(詳細は第4項参照)

 また、今後のアンドロイド普及に際する対人コミュニケーションによる中枢AI等主要機器への負担試験や主要アルゴリズム傾向パターンの調査、さらに根本的目標として、今後のアンドロイドへの搭載が予定されている各主要機器の信頼性拡大を狙った負担運用など、様々な研究調査が狙いとなっている。


3.被派遣部隊選定について

 当試作機の実地試験使用部隊については事前に予定されていた通り、海部田先生の提案、及び我が国防省内での選定の結果に基づき、以下の部隊への派遣を決定いたしました。

 今一度、ご確認をお願いいたします。

実地試験実施部隊:[日本国防陸軍総隊直轄第1空挺団]


4.RSG-01X主要スペックデータと補足説明

 当試作機の主要スペックデータとその解説を以下に記す。

[主要外観スペック]

正式名称:機械化戦闘援護兵試作型1号機(Robotic Soldir Guard-01X:RSG-01X)

身長:164cm

体重:58kg

[OSスペック]

 最新の人工多階層型スパイキングニューラルネットワーク理論をもとに構成された、量子ニューロコンピューターをさらに独自改良させた最新型の『セミブレイン型コンピューター』の改良版から成る。

 AI全体はすべて海部田先生独自提唱のセミブレイン型アーキテクチャをもとに全体ネットワークの設計がなされており、従来のAIにはない新理論の思考演算回路を有しているため、本人の思考パターンが完全に人間に近づいたと予想されているが、同時にどのような発展を遂げるか予測不可能なため、上記の通り今回の試験でも当AIの動作傾向の調査を行う。

 同時に、それによって従来より大幅に性能が向上した大容量の記憶媒体とその他の応用性を持つほか、高性能化改良されたハイパーパイプライン処理機能とハイパースカラ処理機能の併用によって、クロック周波数をある程度抑えた状態でも一つ一つの演算・動作処理速度は格段に上がっている。それは従来のモノの比ではなく、また、それでもクロック周波数は従来のものより上げているためその演算・動作処理速度はさらに向上している。

 新型のニューロンチップを多数主要基部に取り付けることで、本体内で高効率な動力ネットワークを形成、AIから送られる指令を効率的な作動効率で稼働させることを成功させている。

 これらの機能は海部田先生の考案した先の新理論のセミブレイン型コンピュータによってすべて統合されており、それによる分散処理能力は従来のものの比ではなく、また、彼女に搭載されているAIのアルゴリズムに学習プログラムを内蔵させることにより、その学習量は人間にはるかに迫るものとなっている。

 その学習プログラムは周囲の環境に影響されやすい性質を持ち、コンピューター上の簡易的な予測シミュレーション結果によれば、比較的短時間のうちに行動選択・思考パターン・言動性質等に偏りが生じ、人間でいう一種の“性格”が形成されていくことが判明している。ただし前述のとおりどのように発展するかは完全な予測は不可能なため、あくまで予測の範囲を超えない。

 これらのメインOSを構成する電子機器はすべて胴体内の胸部に内蔵されており、さらにサブとして頭部にも内蔵されており、基本これらは常時連動している。


[胴体:人工筋肉]

 従来のものより小型高効率化改良された導電性高分子ゲル(ICPsG)内臓の高効率人工筋肉で作動しており、高い反応速度や外部からの強い衝撃、負担にも瞬時に対応可能、さらに長寿命で整備性・信頼性の高いものとなっている。

 特に脚部のものは特別使用頻度が高いこともあり大きく強化がなされており、その能力は時速で最大75km/h(100mを5秒弱以上)で走ることができるものとなっている。

 ただし、これはあくまで最大出力で作動させた場合であり、長い時間その状態を維持した場合、使用している導電性高分子ゲルの消耗が激しくなることが予想されるため、あくまで緊急時以外は基本使用しない。

 一回のメンテナンスで少なくとも約半年は通して使える。


[脚部・腕部・手部動作]

 人型そっくりのマニピュレーターを有し、それぞれで下記の骨格を軸として、その周りを人工筋肉で覆っているが、各関節の動作は1個のアクチュエーターで構成されている。

 脚部のアクチュエーターは特に耐久と出力が強化されているが、それによって上記の通りの速度を出した際も耐えうることができる。

 また、手部のほうに関しては1個のアクチュエーターと指の各関節に小型のニューロチップを組み込むことによって、そのアクチュエーターや、さらに上記の通りメインOSなどとムーブリンクをネットワーク接続し、より効率的な動作を実現することができる。

 それらの動作は人間の動作と大差ないほどに緩やかとなった。


[胴体:骨格]

 改良された炭素繊維強化炭素複合材料(RCC)を使用し、それを基礎として各部を骨格として構成した複合型炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CCFRTP)を骨格として構成されている。

 胴体内各主要用アクチュエーターをつないだメイン骨格と、それを補佐する小型のサブ骨格から構成されており、これが本体の支柱ともなる。

 通常の金属骨格より耐久が高く、また軽いため、本体自体の軽量化にも一役買っている形となる。


[胴体:装甲]

 上記の複合型炭素繊維強化熱可塑性プラスチックは、骨格のほかにも外郭の人工皮膚の内側にある装甲にも使用されており、安価性と高い防弾性、軽量化を両立させ、これは彼女が戦闘用として作られる所以であり、防御を格段にまで高くしつつ、軽いためにより俊敏に動けるという利点を持つ。

 実験では至近距離から89式自動小銃の銃撃を喰らっても十数発は貫通せずに耐えたという結果がRSGプロジェクト研究チームより報告されている。

 主に重要機器等が搭載されている区画である胸部を中心とした胴体上半身と、頭部にその装甲が多く張られているが、大なり小なりで本体全部分に装甲が張られている。


[胴体:人工皮膚]

 人工皮膚は上記の装甲の上から全体を覆われている。元の人の皮膚細胞を取り出しIPS細胞等の人工複製技術を応用して作られており、そこに耐熱・耐衝撃性強化型のカーボンナノチューブを織り交ぜ、さらに元の皮膚組織細胞にあった構成遺伝子の改造により、特殊な防弾性・高伸縮性を実現させた強化型細胞シートで構成されている。

 細胞シート側の構成物質との相互補強効果によってその能力はとても高くなっており、防弾性が強いとはいえ、想定されている任務上耐熱性にも強い。有害物質内などの特定条件下での腐食性も高く、相応の条件下でも十分な活動が可能である。

 また、人工皮膚の細胞シート内にある繊維同士の密閉率も高く防水性も高めの数値を出しており、見た目は通常の人間ほぼ変わらない。さらに衝撃吸収剤として内部に微量ながら特殊加工型のαゲルを入れているため、触感自体も人間と大差ないものとなっている。


[動力]

 基本は外部からの充電による電力に頼っており、USB接続による接触型充電と、緊急用の電磁界共鳴型ワイヤレス充電を使い分けている。それらは大容量リチウムイオンポリマー二次電池バッテリーによって大量の電力を充電可能であり、一回の充電で約1ヶ月~2か月は活動可能だが、電力消費量の関係で電力が少なくなると活動に支障が出るため、通常は一日一回は夜間の活動休止中に充電し、常に充電をほぼ満タンにしておくのが望ましく、かつ基本的である。また、性質上扱いに細心の注意が必要(過放電をすると発火するなど)なこのバッテリーの制御等はすべてAIが適切に判断して行う。

 基本は首元につけているUSB端末を介した従来の接続型充電に頼るが、緊急時(戦闘中など長期による接続型充電ができない場合)はこのワイヤレス充電を使用する。

 しかし、ワイヤレス充電は接続型充電より充電出力が低いため、あくまで緊急用であり、また、接続型充電をするまでの一時的な繋ぎとしておく時に使うのが一般的である。

〔接続型充電〕首元につけられているUSBポートにUSBコネクタ(最新のUSB規格準拠)を接続し、ほかの室内などのコンセントに商用電源(AC電源)に接続したACアダプターを中継して、USBケーブルから電力を供給する。

 最新の高効率化システムの導入による充電出力の倍増と、当試作機側の非常時に備えた効率的な充電受給システムの採用により、こちらのほうが一度により多くの電力を給電できる。

〔ワイヤレス充電〕近年実用化が目覚ましい電磁界共鳴方式の充電方法を使用。主に接続型充電が何らかの理由でできない場合にこれを使用するが、あくまで接続充電をするまでの繋ぎとしての使用を想定しており、給電量も少ない。また、これを長期間使用する場合は途中から本体動作の使用部位を限定させる必要がある。(そうでないと電力消費量が跳ね上がり、すぐに電力がなくなるため)。繋ぎとして使うにはこれが適切であり、その後電力不足による動作不良が起きるまでの時間をできる限り伸ばす。


[頭部・首]

 主要演算機器やAIの中枢システムが内蔵されている。

 ただし、中枢システム自体は胴体内にも存在しており、こちらは予備となる。

 人工声帯によってより人間らしい自然な発声・発音を実現し、呼吸もするが、これは胴体内の電子機器が発する熱を排出し、冷却のための外部の空気を取り込む、いわば胴体内の換気のような冷却機能を持たせるために行っている(胴体内と外部とつながるのがこの口と鼻だけであるため)。

 アイカメラには、周りに各種ステータスやデータも表示できる。そこから目標を指向することも可能であり、そのステータスやデータは自分でも画面内で確認できる。

 これに映っている情報は多岐にわたりそれぞれで適切に変更可能。データリンクによってリアルタイムで各種指定の場所に送ることが可能となり、それによってリアルタイムで外部からの適切な指示を受けることが可能で、双方で適切な方法でデータを保存することも可能である。

 赤外線探知能力やサーモグラフィー機能、それによる熱源の個体別反応からの高い敵味方識別機能や対象個体の識別・解析能力、さらには暗視装置などその機能と性能は多岐にわたり、日中はもちろん夜間や荒天など特殊環境下での行動を支える中心となる。

 また、右目に限っては機能ファンクションモードを切り替えることによって、平面円形型のホログラフィを指定空間に投影することも可能であり、これは他者の指の動きによって投影情報を操作でき、自分で表示情報を操作できるため、それによって現地での友軍との戦術・戦略構成にも役立つことが期待されている。

 顔の表面上も小さく薄い人工筋肉が内蔵されており、それらを万遍にちりばめられたセンサーを介して的確に動かすことによって、人間のような表情を再現可能、首の動き等もほとんど人間である。

 通信機器も頭部に内臓。

 『閉口無線』と呼ばれる、耳にかける無線機なしで、口内にある音声合成機能で口を閉じたまま味方との無線での応答ができるようになっており、隠密性を高くする要因となっている。

 さらに、衛星とのデータリンクにより周囲の状況把握が可能なほか、さらに三次元パルスX線センサーは、出力調整によっての範囲調整はできるものの、最大で周囲約数百mの状況把握が容易となり、対象個体の識別・解析能力の向上に繋がっている。また、このパルスX線センサーで得た情報をデータ変換することで、現地から直接味方航空部隊への精密爆撃ポイントの指定ができるようになっている。

 以上のように、頭部にだけでもこれらの重要機能が詰まっており、それらを覆う頭部の装甲はとても厳重なものとなっている。


                             以上




                    日本国政府内閣国防大臣  新海 和人



                      同 内閣総理大臣  麻生 新造 印

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