ハリス
―――やっぱり、最初ここに来たときアイツを強引にでも連れてくるべきだったのか?
そんな後悔が一瞬、俺の頭の中をよぎった。
衛星のシステムに介入し、即行で全ての衛星の動きを止めることに間一髪で成功したユイ。ほぼ同時期に、俺らもこの深部への突入に成功し、あとはさっさと引き上げて終わりと思われていた、まさにそんなときであった。
「……あのジジイ……ッ!」
最後の最後で、“壁”が残っていたのである。
「アイツは……ハリスか!」
和弥がそう叫んだ。隣にいる二澤さんも気づいた。
「アイツがそうなのか?」
「間違いねえですわ。そういや、祥樹たちが前に会ってから行方がわからなくなってましたが……」
「この機会を狙っていやがったのか?」
二澤さんは思考をめぐらした。だが、それならその前にユイを止めにかかるはず。それをせず、終わった直後にやったということは、別の目的も……。
……しかし、その前に……。
「ユイ……ッ!」
相棒を、どうにかしないといけない。
いつものユイなら、接近を察知してすぐに撃たれまいと抵抗するか、回避していただろう。だが、さっきまでハッキングにいそしんでいたのだ。全ての演算処理をハッキングにかけた結果、周辺警戒が疎かになってしまったはずであり、そうなれば、彼の接近にも気づけなかっただろう。
メリアですら察知できなかったということは、つまりはメリアが使っている監視カメラなどの監視網を潜り抜けるルートがあったということだ。
「クソッ!」
すぐにユイの下に駆け寄ろうとした。しかし、
「動くな」
「ッ……!」
彼は後ろを振り向き、俺の方に銃口を向けた。こっちはフタゴー。向こうは拳銃。だが……
「……デザートイーグル……」
持ってる拳銃が異常なものだった。
『デザートイーグル』。イスラエルIMI社が開発した最強レベルの威力を持つ自動拳銃である。非常に強力なマグナム実包を打ち出す世界最強レベルの威力を持ちながら、射撃姿勢さえ間違えなければ非力な女性ですら扱えるという特徴を持ち、多くのフィクションでも引っ張りだこの人気者の拳銃である。
彼も非力であるはずだが、さっき見た限りでは射撃姿勢は極端に間違ったものではなさそうであった。あれでユイを狙ったのだろう。幾らなんでも、あんなマグナムを撃たれたら例え装甲があろうとなかろうとただでは済まない。というより、火花が散ってるあたりからして、恐らく装甲がないか、若しくは薄いところを狙われている。威力から考えても、貫通しているはずだ。
当然、人に向けて撃ったら即死は確実。フタゴーの5.56mmでは、連射はできるとはいえ簡単に太刀打ちできない。この近距離で、連射はそこまで重要ではないのだ。
「……簡単に終わらせちゃくれねえか……」
さっさとハッピーエンドで終わらせたかったのに、最後の最後にどんでん返しを喰らった気分だった。
「何を企んでる? この期に及んで何をするつもりだ」
一発でも撃たれたらあの世行きの状況の中、嫌な汗を流しながらもそう訴えた。彼からの返答の声は非常に低いものだった。
「衛星が始動した段階でこの予定だった。成功しようがしまいが、もはや彼女に用はないのだ」
「最初から、アイツを殺そうとしたと?」
「彼女さえ我々に従ってくれればそれで終わりだったのだ。アイツのせいですべてが狂った。衛星により世界が死地となろうがなるまいが関係ない。衛星の顛末を伺い、そして彼女にも死んでもらうこととなる」
「てめ……ッ!」
銃口を彼の頭に向けた。しかし、撃つことはできない。頭に当たっても、一瞬でも俺に撃たれる隙が出来てしまえば意味がないのだ。
「最初は利用していやがったくせして、思い通りにならなければこれか……ふざけた野郎だな」
後ろからの二澤さんの声にも動じない。軽く煽り返した。
「邪魔な奴を消すだけだ。何の問題だ」
「ふざけやがってッ。お前はロボットが世界を支配する理想を作りたかったって言ってだろうが! その結果がこれか!」
「ロボットはロボットでも、反逆的なロボットまで擁護するとは言っていない。勝手に拡大解釈をしないでもらいたい」
「貴様……ッ!!」
隣から新澤さんが軽く宥めたが、怒りが収まることはない。俺の言いたことを代弁してくれたことで、俺が暴走することはなくなった。だが、状況は好転しない。
一刻も早くユイを回収しなければならない。だが、どうすればいい。間にはあのジジイがいる。回り込むような隙もない。救出のしようがない状況となり、俺らはただ茫然と立ち尽くすのみだった。
「頭にしかと入れておかねばならないのは、新しい秩序を打ち立てることほど、難しい事業はないということなのだ。だが、私はそれをやろうとした」
「自分は勇敢だとか自惚れ話でもするのか?」
「“改新”を起こしたいだけなのだよ」
「改新……?」
彼はさらに続けた。
「まず言っておかねばならないのは、恐怖政治を敷くことは、人を管理するもっとも容易な方法だということだ。刑務所しかり、教育機関しかり。国家機関の強制力という名の暴力に裏打ちされた法律などその典型例ではないか」
「何が言いたいんだ?」
「人類の統治。ロボットに強制力を実行する権限を与えたうえでの人類の統治こそ、より安定した世界を生み出すのだよ。全てうまくいくとまではいわん。だが、少しでもマシにはなる。人類が学ばんのなら、学ぶ奴にやらせればいいのだ」
「それがロボットだとでも言いたいのか。随分とロボットを崇めてるらしいな」
そろそろ宗教出来るんじゃないか、と小さく呟いたのを俺の耳は聞き逃さなかった。
「ここまで計画が狂って、今更賛同を貰おうなどとは思わん。だが、世界、人類は、確実にロボットなしで生きられない世界となる。それはロボットに支配されているのと何が違うのだ。私はそれを完全なものとするにすぎないのだ。なぜここまで邪魔をする!」
……彼の叫びの後、沈黙がこの場の空気を貫く。
彼はある意味純粋であった。世界が既にある方向に向かっているなら、それを推し進めてしまえばいい。それだけであった。そのやり方がこうであったのだ。もはやNEWCなど関係ない。自分の理念を、その組織を使って達成しようとしていたにすぎないのだ。
彼は純粋な人間であった。ロボットが世界に普及しているのなら、それをもっと推し進めても何も問題ないではないか。例えそれで、人類の上に立つことはあっても、もうロボットなしで生きられない人類なら、そのうち順応する。そんな思考ロジックでもあった。
……しかし、
「……とんでもない勘違いをしてる」
「なに?」
根本の部分で、もう一度言わねばならないことがあった。
「ロボットなしでは確かに生きられない。強制力があって初めて人類の生活がまともに統治されてるのも事実だ。だが、後者はともかく、前者に関しては前提条件を付与しないといけない―――」
「―――ロボットなしの生活が当たり前でも、上下関係においては人間が上か、ロボットと同じだってことだ」
彼は大きな失念をしていた。ロボットに依存するということと、ロボットの立場の上下は直接的な関係性を持たないということだった。自然動物の保護活動が、人間が中心になってやっている時点で人間が立場的には自然と上位にあることと同じことである。人間とロボットは、互いにやれないことを理解したうえで、それを相互に補完する程度の関係性しか持たない。
……勝手に勘違いした純粋さは、時には悪意ある行動よりも厄介なものとなる。
「飛行機とパイロットなんて典型例だ。飛行機はパイロットに全ての適切な情報を提供し、パイロットはそれを信じて空を飛ぶ。これで飛行機としての根本的な役割を果たせる。その関係が崩れた結果が墜落だ」
ロボットの人間の関係は、飛行機とパイロットの関係に似ている。パイロットは、目の前の計器類を信頼し、その通りに飛ぶことで安全な飛行が達成される。それが出来なかった結果、墜落した歴史は幾度となくあった。
その一つに、『アエロペルー603便墜落事故』がある。離陸直後の闇夜、機体は飛んでいるにも関わらず高度計は0を示し、その後速度も0を示した。その後数値は回復するものの、明らかに異常な数字が表示され、さらに、矛盾した警報もコックピット内に響き渡り、パイロットたちは計器類を信頼できない状態となってしまった。速度超過警報が鳴ったと思ったら、全く逆の失速警報も同時になってしまっては、どうしようもないとなるのも無理はない。
計器類がまともな機能を発揮せず、パイロットが計器類に対する信頼を無くした結果、対応が後手後手となり、最後は海面に激突し墜落した。
全ての原因は整備ミスであった。離陸の洗浄作業時、空気流入や外気圧により、速度や高度を計測するピトー管の穴に貼っていたマスキングテープをはがし忘れた結果、空気がまともに入らずテープ越しに中途半端な気圧のみが感知されてしまい、結果的に異常なデータをコックピット上に示してしまっていたというものであった。そして、それに連動した警報装置も、つられる形で異常状態へとなってしまったのである。
ほぼ唯一正常に作動していた警報は、墜落の直前になった地上接近警報装置であったが、それが鳴ったときは、パイロットは完全な『計器類不信』に陥っており、混乱の最中にあったことも考えると、対応は不可能と言えたであろう。
こうした“機械不信”の問題は、ロボットと人間の間の関係性に大きな教訓を与える。俺はそれを訴えた。
「考えてみろ。飛行機という機械を整備して扱ってるのはどこの誰だよ。人間だろ? 人間が整備ミスした結果、603便は墜落した。全ての原因は人間だ。飛行機はそれに巻き込まれたに過ぎない。ロボットだってそうだ。そして、今だってそうだ!」
「なに?」
まだわからないか! 自然と語気も強くなった。
「ロボットが支配する世の中をとか言っていながら、それを実行しているのは誰でもな人間だ。お前だよお前! お前はロボットじゃない、れっきとした人間だ! 当のロボットは蚊帳の外なんだよ! ロボットを持ち上げてるのは誰でもない人間たるお前で、ロボットのことは完全無視だ。ロボットの事を思っているかのような口ぶりだがな、これは自然保護の話と同じだ! 人間が勝手に動いている時点で、双方の立場のうち人間の方が自然と上位にあることを証明しているようなものなんだよ!」
「なッ!」
彼の狼狽っぷりから見て、たぶんそこの点は何も考えていないのであろう。彼ならば、たぶん自然保護の話を振ったら「素晴らしく栄誉な事だ」などと口走るに違いない。
自然保護活動は、確かに素晴らしいことであるのに相違ない。だが、当の動物たちや自然は完全に蚊帳の外になっていることに気づく人間はいない。こうした活動に、当事者、すなわち行動の主体として、動物や自然が参加したことはない。できるわけがないので当然なのであるが、そうすると人間が各々の都合と判断で勝手に動いてしまう事となる。
構造上どうしようもないのは間違いないが、何れにせよ当事者が完全に参加していない現状の自然保護活動は、「人間の都合と価値観で動いているに過ぎない人間独自の活動」でしかないことも理解せねばならない。良い悪いではなく、結果としてそうなっているという話である。
今回も同じだ。ロボットは完全に蚊帳の外。人間が、人間の考えに基づいて、勝手にロボットを使って現状を変更しようとしているにすぎないのだ。だが、当の当事者本人は、それを完全に失念していた。盲点というやつである。
「メリアだって、元々はお前が自分の考えに基づいて作った都合のいい存在に過ぎなかった。理想実現のための、お前の所有する道具だった。この時点でおかしいことに気付くべきだったんだよ。人類の未来をもっとよくするためとか、ロボットをもっとうまく使うためとかそんなこと言ってながら、結局はお前という人間とそれに賛同する人間が、自分の考えに基づいてロボットを道具にして勝手に革命ごっこに興じてるだけだったって気づくべきだった! 別に崇高なものでも何でもない! 誇り高いものでも何でもない!」
「テメェやってるのは、ただの“自己満足なんだよ!”」
「貴様ァアアアア!!!」
堪忍袋の緒が切れたのか。彼は俺の顔の右側面のすぐ横をかすれるように銃弾を飛ばしてきた。仮にもマグナム実包である。あたりはせずとも、すぐ横を通っただけで衝撃が顔面を直撃。頬を抑えた時、手に血が付着しているのがわかった。衝撃波により、軽く皮膚が切れてしまったのだ。
相対する彼の荒い息遣いは、彼の荒れた精神状態をこれでもかと表している。自らの理想と現実との矛盾を突きつけられた結果がこれとあっては、やはり彼が純粋であるという見方は間違いなさそうだった。深いところまで考えていないのだ。純粋さの悪しき面であった。
「……同じ境遇にあったにもかかわらず、ここまで考えが違うとはな……」
「同じ?」
「10年前だ。オキナワで、私は絶望に立った」
「ッ!」
10年前の沖縄といえば、例の中亜戦争だ。まさか、彼もあそこに……?
「あそこで私は人類の愚かさを見た。家族から疎遠され、故郷を離れ放浪していた私は、あの地で彼の戦争に巻き込まれた。あれのせいで、人類が統治する現実に絶望した。人類は、再びあの戦争の惨禍を引き起こしたのだ」
かの戦争で、彼も当事者であったというのは初耳だ。まさか、それの関係で俺のことも知っていたのか? そこまで彼が話すことはしなかった。だが、彼にとって、あれはトドメであったと同時に、一つの決意の時でもあったのだという。
「人類の手による人類の行動が、時としてあのような惨禍を引き起こすのなら、人類の統治という歴史を終わらせてしまえばいい……。あのような出来事をもう見たくなかったのだ、なぜわからない!」
「目先の目的に囚われすぎている。俺が求めている将来はそんなものじゃない」
「お前は家族も何もかも失った! なぜそんな風にいられるのだ! 人類の愚かさに気づかなかったのか!?」
「んなもんとっくの昔に知ってるわボケ!!」
勝手に悲劇のヒーローみたいな役回りにされたことを言われ、思わず叫んでしまった。俺は確かに何もかも失った。もしかしたら、ドラマティックかつお涙頂戴な話題が大好きなマスコミがかぎつけてきそうなぐらいの人生を、俺は歩んでいるかもしれない。
……だが、それは人類への憎しみを抱くものではない。勝手にイメージで語られたことに無性に腹が立った。
「人類は愚かしい面を持ってるのは、学生の頃戦争の歴史を学んで幾らでも思い知ったわ。だがな、それは人類の秩序の間違った方向への改新を願うものじゃない。それとこれとは話は別だ、何でもかんでも一緒くたにするな」
「間違った方向だと?」
「ああ、間違ってるよ。そりゃ人類が統治してたら間違った将来を歩む可能性だってある。だが、結局はただの道具に過ぎないロボットを過剰評価して早まった改新を達成しても、正しい将来が来る保障なんてこれっぽっちもない。俺は何度でも言うぞ。ロボットは人間の道具であって、語源の通りある意味人間の“奴隷”なんだよ。良い悪いじゃない、ロボットってのはそういう役割をもって生まれてきた! それ以上のことはアイツらにはできない!」
「できるようにしようとは思わんのか!?」
「これっぽっちも思わねえよ!」
「なぜだ!」
「俺は今のアイツらとの関係が大好きだからだ! 特にお前が今撃ったアイツとはな!!」
そう言ってユイの方を向いた。生きてはいたらしい。若干顔を起こし、俺の方を一直線に向いていた。非常に苦しそうな顔であり、見るだけでも目を逸らしたくなるぐらい痛々しい表情の中に、強い意志を込めたようなそのまっすぐな視線はあった。アイツの“強さ”は健在だ。
「他のロボットがどうかは知らん。だが、少なくともアイツは、人類の上に立とうなどという意思はない。人間が作ったんだから当たり前かもしれないが、ある程度学習した今でも変わらない。お前の今の話を聞いても賛同しようとしない。……アイツの意思は、お前の理想を拒絶している」
「……ッ」
「ロボットは自らの立場をよく理解してる。だから、外では旧式の奴らがアイツの要請に応えて、俺たちの味方を守った。身の丈に合わないことをしても、まともな将来は保証できない。……人間とロボットは、正しい関係であるべきだ。そうすれば、飛行機事故で言うところの、ハドソン川の奇跡のようなことだって起こせる」
『ハドソン川の奇跡』。USエアウェイズ1549便が、離陸直後のバードストライクによりエンジン全停止、推力の無いままほとんど滑空の状態で市街地へ降下していくという絶体絶命の状況の中、すぐ近場のハドソン川への緊急着水という前代未聞の判断を下し、無事成功。乗員乗客全員が生還するという、まさに奇跡としか言いようがない出来事であった。離陸から着水まで、たったの5分という短時間での出来事であった。
あれこそ、人間が適切に判断し、信頼し、飛行機のコンピューターが適切にアシストできた理想的な状態である。飛行機がパイロットを操るのではなく、パイロットが飛行機を操り、飛行機がそのすべてを支援する。これこそが、ロボットと人間の理想的な関係であり、適切な関係である。ロボットが人間を操るのではなく、人間がロボットを操り、ロボットがそのすべてを支援するのである。
例え自由意志を持っていようが関係ない。その大前提は不変なのだ。
「……いい加減長話は終わりだクソッタレ」
「ッ!」
もう事は済んだ。アイツのペースにつられて思わず長々と話してしまったが、もうこれでいいであろう。
「もうじき別働隊がくる。ここを完全に制圧すれば、お前も終わりだ。今のうちに降参しろ。こっちもむやみに撃ちたくない。……アイツを撃ったことに関しても、これ以上危害を加えないって言うなら許してやらんでもない。だからもう銃を降ろせ」
後ろから銃のマガジンを交換する音が聞こえる。膠着した状態となる。眉をひそめた表情を崩さない彼は、小さく「フッ」と笑うと、銃口をこちらに向けたまま、少しずつ後ずさりしていった。
「……どうせもう終わりなら、最後くらいは面白いショーを見せてほしいものだな」
「なに?」
彼はユイの隣に立つと、彼は、まだ床にうつぶせで起き上がり切れていない状態のユイの迷彩服の後ろ襟をつかんで、強引に前に投げ飛ばした。
ジジイのくせして相当な怪力の持ち主だが、少しばかり前に投げ飛ばされたユイは、また床に軽く叩き突きつけられ、うつぶせの状態で倒れた。
「ユイ!」
駆け寄ろうとする。しかし、彼は俺の針路上に銃弾を放って止めた。
「まあ待て、見たいものがある」
「……今更なんだ?」
イライラしながらも彼の次の行動を待った。
「……おい、立て」
「……誰に言ってます?」
「お前だ。さっさと立て。撃たれたくないならな」
ユイが「どうします?」とでも言いたげな助け舟を求める目線を向けてくるが、ここは無駄に抵抗するのもマズい。一先ず従うよう頷いて返した。
撃たれた部分のダメージは少なからずデカいのか、やはり立つのも一苦労だった。正面の腹部からは電気が走っている。エグイ光景だ。正直、あまり目を向けたくない。
「……何をさせる気だ?」
二澤さんがそう呟いた。その時だった。
「……お前」
ユイに対し、たった一言。
「彼を殺せ。彼も元凶の一人だ」
空気が間違いなく固まった。
そう実感できるぐらい、衝撃的な一言だった…………