かくげー!【vsマイナー】
対戦型格闘ゲーム。それは1980年代から存在し、1991年のカプコンの『ストリートファイターII』により、複雑な駆け引きのできる対戦を前提としたゲームシステムが完成。この作品の爆発的なヒットにより、1990年代に対戦格闘ゲームは一つの大きなブームを巻き起こした。数々の亜流ゲームが作られた以外に、格闘ゲームを原作とする実写映画やアニメが何本も作られ、1993年に始まったK-1など現実の格闘技人気にも大きく寄与した。また、アーケードゲームとして人気だった格闘ゲームは家庭用ゲーム機に移植され、キラーソフトとして家庭用ゲーム機の普及に大きく貢献した。
しかし、対戦格闘ゲームは当初は爆発的ブームとなったが、各シリーズの新作とともにシステムも複雑化し、ポリゴン技術による3D化を除いて革新がなかったことも手伝い、徐々にマニア向けなジャンルとなっていった。今では、格闘ゲームの人気は下火になりつつある。
そんな中、格闘ゲーム業界を盛り上げようと、ある企業が立ち上がる。全国の高校生を対象に対戦格闘ゲーム全国大会を主催したのだ。
使用するゲームソフトは、新作対戦格闘ゲーム『下克上!』。現在多く出ている格闘ゲームを平均化したようなソフトである。ルールは5人1組のチーム戦での総当たり戦。使用するキャラクターはランダムセレクト。それぞれの都道府県で一組(東京・大阪は二組)が全国大会に出場できる。そして、全国大会では、なんとその様子が全国中継されるという。
――今、対戦格闘ゲームの人気が再燃しようとしていた。
あらすじを読み、俺はマイナーらしい作品だと感じた。格闘ゲームを題材にした小説。
一部のピンポイントの読者にしか伝わらないだろ。そう思いながらも続きを読むと、キャラクターに中々
個性が備わっていると俺は感じ始めた。キャラクターは以下の通りだ。
主人公はオタク。高校生。学校以外では部屋に引きこもってアニメやゲームばかり。
格闘ゲーム大好きのオタクの同級生。格闘ゲームの大会に出るにはメンバーが一人足らず
格ゲーの有名人の一字違いから勘違いされ、ウミハラダイゴがメンバーへ。格ゲーは、ほぼ素人。
メンバー
主人公『海原大吾』MMORPGとアニメをこよなく愛するオタク。ひょんなことから格ゲーの世界へ。
格ゲー初心者にもわかりやすくする為の役割を担っている。初心者と共に成長していく。
格闘ゲーム部、大将『神藤 佳代』。格闘ゲームをこよなく愛する。全てにおいて格闘ゲームが
優先される。天真爛漫、無邪気な性格で強い相手との対戦には、わくわくするサイヤ人的存在。
勝ち負けよりも、どれだけ素晴らしい勝負ができるかを重視している。格ゲー暦、わずか三ヶ月。
目に見張る成長を見せる。
「強いなー! すごいなー! わくわく! わくわく!」
部長兼副将『宮村 カナ』。佳代とは対照的に、勝つ為だけの試合をする。部活のまとめ役。
頭脳明晰で、策略家でもある。勝たなければ意味がないというのが信念としてある。
「部長の私が負ける訳には、いかないのでね」
中堅『最京 詩音』。最弱キャラ使い。自らにハンデを課し、逆境から勝ち上がる事に快感を覚える変態。
その性格故、3番手に甘んじているが、本当の実力は未知数。性格は悪魔。相手の心を折る事に関しては右に出る者はいない。どS。相手と差がある程、ハンデをつける為、よく負ける。
「ほらほらぁ! さっきの威勢はどうしちゃったのかしらぁ!?」「へぇ、貴方の歪む顔が楽しみだわ」
次峰『幸村 薫』。部員の中でもダントツの可愛さを持つ。だが、男だ。
女よりも女らしく、ナンパされることも多い。
勝負よりも盛り上げる事を優先するエンターテイナー。
勝つ事しか考えていない部長とよく対立をする。
「試合に勝っても、場が盛り上がらなかったらそれは負けと同義じゃないですかぁ?」
先鋒『海原 大吾』。ゲームアニメオタク。格ゲーに関してはほとんど素人。格闘ゲーム界で強いと
有名な人と名前が似ている事から勘違いされ、無理やり入部させられる。転校生。
「だからボクは格ゲーなんてほとんどやったことないんだよ!」
補欠『神宮寺 祭(SAI)』人前だと緊張してしまい、実力を全く発揮できない。
しかし、顔の見えないネット対戦では佳代すら凌ぐ強さを発揮する。部室内では、常に一人で
オンライン対戦に没頭している。
「……(こくん)」
部活内ランキング戦あり。それによって先鋒~大将が変化。
そして、物語は短編3000文字で収めようと初の大会からスタートした。
初の大会、一試合目。大吾は初心者でありボロ負け。薫は、場を盛り上げる事に力を入れすぎて敗北。
二人の負けで追い込まれるチーム。相手チームからは失笑。
「ほとんど女ばかりの初心者集団かよ(笑)」
三人目、詩音。自分が負けたら終わりという状況に興奮。5本先取制で4本を落としてしまう。
相手チームも会場も詩音の負けを確信する。
「みんなごめんね……、私にもっと実力があったら……」
詩音は俯いたまま、か細い声で言う。普段は見せない詩音の弱々しい姿に大吾の胸はきつく締め付けられる。
ゲーム如きでこんなにも悲しく、そして悔しい思いをするなど、大吾は考えもしなかった。
「はははっ! 女が格闘ゲームなんて所詮無理な話っしょ! さ、あと1勝で俺の勝ちー。とっとと決着付けようか?」
宮路はガムを汚らしくクチャクチャと噛みながら、スティックを握り直した。詩音も同じくスティックを握り直し、5本目の試合が始まった。
――5本目の試合、それはあまりにも一方的な展開となった。
全く手も足も出せず、ただの一度も相手に攻撃を当てる事もなく、パーフェクトで敗北した。
その実力差は、あまりにも開きすぎていた。まさに瞬殺だった。
無念そうにゲーム画面のキャラクターが無残にも倒れている。
――宮路の操るキャラクターが。
「な、な、な、そんな馬鹿なっ!?」
宮路は目をまん丸にして、パーフェクト負けを喫し倒れている自分のキャラクターを見つめていた。
「フフフッ……」
不意に詩音の笑い声が宮路の耳に届く。
「ばぁーかぁっ! 勝てると思ったー? あはっ! あははっ! 今までずーっと手を抜いてあげてたんだよー?
ねぇ? 自分が強いと思った? 思っちゃったの? ねぇ、ねぇ? 今どんな気持ちですかー? あははっ!」
詩音は完全に相手を馬鹿にした口調で言葉を吐き出す。宮路はわなわなと震えだし、大声を上げた。
「ふざけんなぁーっ! 今のはただの偶然だ! 大体まだ4-1で圧倒的に俺が勝ってるんだ!
舐めてんじゃねーぞ! すぐに終わらせてやっからなー!」
「あはっ! 全ての攻撃を見切られて、ダメージ一つ与えられなかったのに、偶然? じゃー、偶然でこっから逆転しちゃおっかなー?」
「て、てめぇ!」
その後、相手を全く寄せ付けない強さを見せ大逆転。副将のカナも5:3で華麗なコンボが決まり勝利。
そして大将対決も圧倒的な差で佳代がストレート勝ち。
そこで物語は終わっていた。正直に言えば、物足りなかった。
完全版が読みてぇっ! こういうマイナージャンル大好きなんだよ、俺っ!
と嘆いていると、あとがきに嬉しい書き込みがあった。
後書き
この度は私の稚作を読んでいただきありがとうございました。
この作品は、元々連載中のモノを読みきり用に再編したモノです。
もしこの作品を読んで興味を持っていただけた方がいたら、ぜひ連載中の作品を読みに
お越し下さい。
うおぉっ! とテンションが上がる。完全版があるんじゃねーか。
というか、これはうまい宣伝方法だ。今、この祭りは盛り上がり自然とアクセス数が跳ね上がる。
今は日の目をみていない作品も、この方法でならば……。そこで俺は思いつく。
連載をしたが、あまりにも反応がなくて途中で挫折してしまっていた作品をこの祭りに乗じて
復活させられないだろうかと。
俺は決意した。自分の挫折した作品を祭り作品用に再構築し投稿しようと。
そして祭り自体もある作家の登場で更に加熱することになる。
それは4番目の本家作家の作品だったのだが、その作者は「なろう」の総合ランキング100位内の作品を持つ
ランカーであった。
つづく