歳下彼女との付き合い方
「廊下で立ってろ」
正月明け一発目の授業で爆睡していた火山こと僕は、担任である数学教諭の片桐に手痛い一撃を喰い、促されるまま、廊下へと旅立つことになった。
「担任の授業で寝るとか自殺行為だろ。お前はなにやってんだ」
鼻にティッシュを詰めながら教室を後にする僕を、呆れながら友人・修平が小声で揶揄してきた。
「正月休みのサイクルが抜けてないんだよ。ね、火山?」
修平の背後に座る友人・亮哉が、人の好い笑みでそう言った。
「火山の家は寺だろ? 早寝早起きなんだからその言い訳も苦しくないか?」
背後の亮哉へ振り返る修平。
「あ」と亮哉。
修平の頭に鉄拳が落下した。
「お前も廊下で立ってろ」
修平と僕が二人して廊下へ出る間際、「アホだ」と校内一イケメンの声が聞こえてくる。
廊下に出て、会話ツールたる携帯電話を取り出す僕と修平。 メールを起動した修平が『ぜってーコブできてるし』と自分の頭を撫でる。
『つ〜かなんで亮哉は咎められないんだ?』
『昔から亮哉は要領が良いんだよ』
くそっ、と修平が悪態をつく。
『亮哉も坂本も顔が良いからって調子にのるな!』
変なところをやっかむ修平くん。
そこへ――
「先生、ピロシキが僕に消しゴム投げてくるんですけど」
「ピロシキ言うな! ぶっ殺すぞ優哉!」
「坂本、鈴城、廊下に立ってろ」
「僕関係なくない!?」
唯一無二のバカたる鈴城優哉と坂本寛貴となぜかバカの姉たるが鈴城姫風が廊下に出てくる。
「ピロシキ殺す!」
「来いや! あとピロシキ言うな!」
鈴城弟と坂本がファイティングポーズをとり、今にも殴りかかりそうなところへ、鈴城姉が割って入る。
「坂本殺す」
「姐さんやめて下さい!」
坂本と鈴城姉の追走劇が始まり、それを追う形で、鈴城弟の姿も階段へ消えていった。
『あいつら人生楽しそうだよね』と僕。
『そうだな』と修平。
『修平も最近楽しそうだよね』
『は?』
『亮哉から聞いたんだよ。睦月さんとのこと』
『亮哉ぶっ殺す』
いきり立つ修平。
『羨ましいよ二人とも』
『そうか?』とどうにか正気を取り戻した修平。
僕は修平や亮哉――彼女持ちの余裕綽々な態度にムカつく。
『そうだよ。片や弥生ちゃんは天然で可愛いし、睦月さんは大人っぽくて優しそうだし……友人は彼女持ちだってのに僕だけ独り身か』
『弥生はマジでウザいぞ。睦月さんは見た目ほど大人じゃねえし。彼女なんて居ても肩が凝るだけだ』
僕の感情が思わず声に出る。
「うわ、ノロケだ! 自慢だ! 調子にのんな!」
「いて! ちょっマジで蹴るな!」
太股を庇いながら修平が叫ぶ。
「火山には卯月ちゃんが居るだろ? いて! 威力上げんな!」
「アホか! 相手は小学生だ!」
「『火山様、お慕いしております』なんて言うのは卯月ちゃんくらいじゃねえか!」
小学六年生女子の声真似をする友人が凄く気持ち悪い。
「アホか! 僕は高三! 卯月は小六! 仮に僕が手を出したら犯罪だぞ!?」
「両親の同意があれば問題ない!」
「僕はロリコンじゃない!」
全力で否定した。
「お前がロリコンかどうかはどうでも良い」
隣から中年オッサンの声音が聞こえた。
「「げっ」」
廊下に出てきた担任が、腕をグルグル回しながら歩いてきて、僕と修平の前で止まる。
やつの射程距離だ。
「今は?」と担任。
「「授業中です」」
担任の拳は痛かった。
時は流れて放課後の自宅敷地前。
亮哉が寺と言っていたけどちょっと違う。僕の家は広大な土地を所有し、氏子さんをそこそこ抱える神社だ。
家屋の作りは古く、国の指定有形重要文化財に認定されている。
けれどそこに住んでいる人間からすれば、面倒臭いの一言に尽きる。
宮大工傑作の観音開きの戸を、何枚も開いては閉じてを繰り返し、十分ほどかけて、自宅玄関前まで辿り着く。
細心の注意を払い慎重に玄関のドアを開けて閉める。
そして、蚊の鳴くような声音で「ただいまぁ」と告げる。
「居ないよな? 居ない居ない」
静かに静かに靴を脱いで、左右の和室を極力見ぬよう、抜き差し差し足忍び足で漆塗りの廊下二十メートル先にある自室を目指――
「お帰りなさいませ。火山様」
玄関を入ってすぐ右手にある客間から可愛らしい声音が聞こえた。
「た、ただいま。卯月」
僕は愛想笑い混じりで声の主に振り向く。
「鞄をお持ちします」
傍らにやってきた紬姿の女の子――卯月が、僕に有無を言わせない感じで、学生鞄を奪取してしまった。
「あ、ありがとう」
「お夕飯に致しますか? それともお風呂になさいますか?」
「あ〜……今から宿題するし、両方あとで良いや」
「解りました。それでは後程お茶をお持ち致します」
自室まで鞄を運んでくれた女の子は、僕に慇懃な態度で一礼すると、台所へと去って行く。
「……五時に飯、風呂、七時に就寝とかあり得ないだろ。今は平成だっつ〜の」
自室に入って鞄を机に投げ出し、制服から普段着――袴に着替えた僕は、公言した通り、鞄から勉強道具一式を取り出して、宿題と予習を始める。
五分も経過しないうちに、
「……あと四年か」
宿題の問いに行き詰まり、ふと、別の懊悩が思考に現れる。
思考するのは先ほどの女の子――卯月のことだ。
「このままで本当に良いのか」
僕は四年後に結婚が決まっている。相手は六歳年下の子だ。その子が十六歳を迎えたその日に入籍する、らしい。
そこに僕の意思はなく、相手の意思もない。つまりは、政略結婚てやつだ。
「……このご時世であり得ないだろ」
相手は卯月で、相手方の両親は地元の名士。
こちらの両親は地元に有数の檀家を持つ神社の主。
なんでも相手方の名士(夫)が、二年後の議員選に立候補するとかで、莫大な票が欲しいらしいのだ。
そこで莫大な票の管理に融通、いや、地元の有権者に顔が利く僕の両親に白羽の矢が立ち、相手方は業者との癒着話を持ちかけて来た。
数年前に発生した台風被害での仏閣修復費用に困っていた両親は、これ幸いにと癒着に耳を傾けた結果――相手方の名士娘との婚約話が勃発。
それが四年前――僕が中学二年生(14歳)で、卯月が小学二年生(8歳)の時のこと。
両親の正気を疑ったけど、国の助成金も当てにならない屋根瓦の修復費用に頭を悩ませていた状態を知っていた僕は、その婚約話に対してなにも言えず、唯々諾々と頷くことしかできず、今に至る。
現在その婚約者たる卯月は、通い妻よろしく、放課後から就寝間近まで、我が家で家事労働に勤しんでいる。
懊悩してもし足りない思考の中、「入ります」と可愛らしい声音が僕の鼓膜へ届いた。卯月だ。
「どうぞ」と嘆息する僕。
「溜め息、ですか。火山様、なにか悩み事でも?」
部屋の入り口に座り、襖をスライドさせて、一度立ち、入室してからまた座り、襖を閉める卯月。
手には茶器を乗せた漆塗りの丸いお盆がある。
「そう見える?」
小顔に憂いを張り付けた卯月がコクりと頷く。
「最近お疲れ気味のようですが、なにか不安でも?」
小学生に心配されてしまった、と僕は内心で呟き、渡された湯飲みに口をつける。
「特に悩み事や不安はないよ。そうだな……最近あったことを強いてあげるなら、友人に彼女ができて自慢されたくらい、かな? ほら前にうちへ来た修平って覚えてる?」
「修平様ですか?」
「背が高くて肉付きの薄いやつ。一言で言うと……細い木みたいな」
「あ〜、あのひょろっとしたゲーム好きな方ですね」
「そうそう。そのひょろっとしたやつにさ、歳上の彼女ができたんだってさ。羨ましいなって、あ、いやなんでもない」
歳上好きな僕の失言だった。
みるみるうちに卯月の綺麗な小顔が、悄気かえる。
「すみません。父が強引に婚姻話を進めてしまって……」
「本当にそうだな。でもさ。おじさんが議員に当選したら離婚すれば済む話だから、卯月は気にするな。卯月が悪い訳ではないんだし」
「……そうですね。卯月と火山様は、ただの、ただの、契約書を交わした間柄ですものね」
「そうそう。だから、卯月も僕に構わず彼氏の一人でも作れば……卯月?」
いつの間にか、卯月が眉を顰めて、悲しげに僕を見つめていた。
「……火山様は卯月のことが、お嫌いですか?」
ひっく、ひっく、と卯月がしゃくりあげ始めた。
「嫌いもなにも、僕と卯月はそう言う関係じゃ……な、泣いてるのか?」
「卯月は、卯月は、火山様をお慕い申しております」
僕は小学生に真摯な瞳で見上げられる。
「……いや、それはおじさんに言わされてるセリフだろ? 泣き真似なんかして、そのセリフを言わなくても――」
僕に嫌われないように、結婚を円滑にする為に、卯月はおじさんから「僕を好きだと言え」と言わされていたはずだ。僕はそれを風の噂で耳にして「おじさん、必死だなぁ」と苦笑した覚えがある。
しかし、今の卯月の態度は、どうもそう思えない。
「……もしかして、泣き真似じゃないのか?」
「卯月は、卯月は……」
卯月は「し、失礼、しまし、た」としゃくりあげながらこの部屋を立ち去っていった。
「あ……」
マジかよ。
僕はガリガリと頭を掻く。
親同士が結んだ政略結婚は、子供の想いを無視したものだ。
僕はそう思っていた。
けれど、卯月がそう思っていなかったら?
僕はその可能性を一切考慮していなかった。
「もしかして、卯月は本当に僕のことが好きなのか?」
耳にタコができるくらい、それこそ修平が遊びに来ていた時にも「お慕い申しております」を口走っていた気がする。
「勝手に結婚させられる卯月が可哀想だからって、僕は卯月の為に離婚しようと思ってたんだけど……」
僕はことあるごとに、卯月に対して離婚、離婚と言い過ぎていたのかも知れない。
それが耐えきれなくて、先ほどは泣いて僕の前から立ち去ってしまったのかも知れない。
「……兎に角、謝りに行くか」
と、思って歩み出したが、しかし、すぐに僕は立ち止まった。
「謝るって、なにについてだ?」
卯月の為に離婚しようとする僕の行為は間違っていないと思う。
その副産物として泣かせてしまったことを謝るのか?
それを謝ることも、なにか違う気がする。
「……こんな時は、相談だな」
自分のキャパシティーを越えた内容だ。誰かに相談なり愚痴なりを聞いて貰おう。
携帯電話を取り出して、修平にコールする。
二秒ほどで『なんだよ?』と当人が出た。
僕は「ちょっと聞いてほしいことがある」と前置きして、卯月との結婚話を語った。
『なんだノロケかよ』
「違う。愚痴だ。最良の選択を取ろうとしている僕を卯月が理解しないから、愚痴らせて貰っただけだ」
『へ〜愚痴ねえ。物は言いようだな』
「ムカつく返しだな」
『だってそうだろ? お前は言い訳ばかりだし』
「言い訳?」
『卯月ちゃんの為に離婚する、言ってるけどさ。卯月ちゃんからの意見は聞いたことがあるのか?』
「いや、ないけど、普通は強制的な結婚て嫌じゃないか?」
『普通は嫌だな。だけどさ、卯月ちゃんが最初からお前のことを好きだったらどうなんだよ?』
それは、今、考えたくなかった。
それに卯月の「好き」はおじさんからの「好き」だと思っていたし……。
『もしそうだったら、離婚はお前の独り善がりだろ。それとな、お前はどうなんだよ?』
「僕?」
『お前の気持ちだよ。卯月ちゃんに対するお前の気持ち』
盲点だった。
『そろそろ自分を誤魔化すのはやめて、自分に素直になっても良いんじゃねえの?』
「卯月は小学生で、僕は高校生だ。誤魔化すとか自分に素直になれとか言われてもな」
『それだ』
「どれだよ」
『お前の言い訳』
「……年齢差は充分言い訳になるだろ。六歳差だぞ」
『じゃあ、年齢差なしで卯月ちゃんのことを考えてみろ。カッコつけて歩み寄らないままで居ると、バカを見るのは自分なんだぞ』
卯月との年齢差を度外視して歩み寄る、か。
『修平くん、年齢差ってなんのこと?』
修平の電話口にお姉さん然とした声音が聞こえてきた。
『う、うわっ!? 睦月さんやめてくれ!! 包丁は人を刺す道具じゃ――』
通話が切れた。
修平は焦っていたが、最後の包丁はなんのネタだ?
そんなことよりも、
「僕自身の卯月に対する気持ち……。それに年齢差を度外視して歩み寄れ、か」
修平に言われたことを反芻して口内で転がしてみる。
「僕は、卯月のことが……」
「卯月のことが、なんでしょうか?」
「いや、好きなのかなって……ってうわっ!?」
目の前に卯月が居た。
「今、なんと仰られたのですか?」
居ずまいを正して僕を見上げている卯月。瞳は真っ赤で、もしかしたら、泣きはらしていたのかも知れないと思うと、胸が痛んだ。
「……いつからここへ?」
戸惑う僕。
「帰宅の挨拶の為に、今しがた戻ってまいりました。先ほどは取り乱してしまい、すみません」
説明を終えた卯月が問い直す。
「それで、今、なんと仰られたのですか?」
なんと答えたものやら、と最適な案を思考する。
しかし、卯月は僕に思考する暇を与えない。
「卯月の聞き間違いでなければ、火山様は卯月のことが好きと……」
はぐらかしてもすぐに露呈するだろうし、聞かれていたなら仕方ない。
頬を掻き「正直に言うけど」と僕は心を晒け出す。
「今はさ、まだ、妹に対する感覚なんだ。僕の卯月に対するこのちゅきって感情は」
ぐあ、噛んだ。
「ちゅき――ですか?」
「『好き』って言いたかっただけで……突っ込まないでくれ」
ありのままの思いを言葉に変えて、僕は伝えた。
それを受けた卯月は、真面目な、けれど少し悲しげな表情で「そう……ですか」と頷いた。
ともすれば、卯月は今にも泣き出しそうで、僕は「泣かないで」と言う思いを込めてその小さな頬を撫でる。
「けどさ、すぐに、妹なんて言ってられなくなるかも知れない」
言って恥ずかしくなった僕は、卯月の顔が直視できなくなり、顔を逸らして頬を掻いた。
「すみません。火山様の仰られた意味が、要領を得ません」
困惑気味に、そして、申し訳なさそうに告げた卯月は、頬を撫でる僕の手を、その小さな両手で包み込んできた。
涙目で瞳をうるうるさせる卯月。
ここは恥ずかしがってる場合じゃない、と僕は自分に言い聞かせる。羞恥を押し殺して、卯月に伝える。
「今でも可愛いくて魅力的な卯月が、成長して大人っぽくなったらさ、僕が妹扱いできなくなるって言ってるの」
言い終わるや、卯月の表情がパッと明るくなった。
「つ、つまり、卯月が歳を重ねれば、火山様をめろめろにできる訳ですね?」
「めろめろ……あ、まあ、うん」
微妙に同意しかねる。
捲し立てる卯月さん。
「つまり、火山様は卯月のことが、現時点でも好みと言うことでしょうか?」
問われた僕は「う〜ん」と唸る。
卯月の話だと、まるで僕が卯月にゾッコンラブだと聞こえる。
それはまだ認めたくない、と幼稚なプライドが稼働した。
だから、ちょっと意地悪してみる。
「……現時点では微妙かな。卯月、おっぱいちっちゃそうだし」
卯月は紬の胸元に両手を押し当てて、涙目になった。
「お、おっぱ、おっぱいが大きくないと、火山様の妻は務まらないと言うことですか?」
「揉めるくらゴホン。うん、おっぱいは大きくないとね」
卯月が貧乳を押さえたまま唇を噛む。
僕は意地悪を続けてみる。
「あと料理が上手くないとダメだな」
卯月は話題の変更に食いついた。
「お料理は目下修行中です。あと半年も経てば、きっと、『かれーらいす』めを攻略致してご覧にいれましょう」
卯月はカタカナと英語に弱い。
「小学生でも無難に作れるカレーを攻略して、どれくらいになる?」
卯月は言い難そうに「……半年です」と零す。
「そうか。卯月はやればできる子だから、大丈夫だな」
「……今、卯月は馬鹿にされましたか?」
卯月のやわらかな頬を撫で撫でする。
「卯月はやればできる子だ」
「馬鹿にされてます?」
「超馬鹿にしてるよ?」
途端に卯月が怒った。
「も、もぉ、火山様なんて知りません」
プンスカした卯月は、「もう帰ります。失礼しました」と正座の体勢で一礼したあと、さっさと立ち上がり、襖を開けて出て行こうとする。
怒らせる気はなかったんだけどな。ただ好きな子にちょっとした悪戯をやりたかっただけで。
あ、もう一つ悪戯を思い付いた。
今にも僕の部屋を出ていきそうな小さな婚約者に対して、「卯月」と声をかける。
卯月はこちらを振り返らずに、「……はい」と返答するだけ。
腰を下ろしていた椅子から立ち上がった僕は、足音を殺してそろりそろりと卯月に近づき、
「卯月」
二度の声かけに振り向いた卯月と、
「なんでしょ――」
唇を重ねた。
驚きのあまり目を見開いて固まる卯月。
五秒くらい重ねていた唇を離し、僕は言う。
「また明日」
表情を真っ赤にさせた卯月は、こくこくと頷いて、
「は、はひ。ま、また明日でございます」
僕の部屋から飛び出して行った。
悪戯成功なり。
鼻唄混じりに勉強机へ戻り、定位置の椅子へ腰を下ろした。
「火山様」
不意に呼ばれて振り向く。
「ん?」
僕の背後――零距離に、部屋から飛び出したはずの、卯月が居た。
「好きです」
可愛らしい声音とともに、唇に暖かな温もりが広がってゆく。
ちょっと下唇を吸われる。
嘘っ!? 吸われてるっ!?
ちゅって音と共に卯月の唇が離れていき、二人の唇の間に、銀の橋が架かる。
「今度こそ、また明日です」
はにかむ卯月。
婚約者が可愛すぎて、帰宅させたくないと思ってしまった僕は、
「か、火山様?」
羞恥に赤くなる卯月を抱き寄せて、
「ここに住め」
事実上のプロポーズをしてしまった。
卯月の答えは――
次の日から、住み込みを開始した卯月さんは、なにかにつけて積極的にハグやキスをねだるようになるが、現時点の僕には、知るよしもないお話。